19-3 文化交流会1日目~太陽君~ (後編)
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予想以上の盛り上がりを見せた、今年の魔法の壁アタック大会(私が勝手にそう言っているだけですが)。
制限時間の三分が経ち、アタック終了のアナウンスが流れた。そして何事もなく安全に、無事に大会は終わった。
◇
「はぁ、もうちょっとやったな~」
「お帰り太陽君! お疲れ様でした」
頑張った太陽を、三日月とメルル・ティルの三人は、ニッコリ笑顔で迎えに行く。
「いや~ちょっと……残念だがなぁ」
「え? でもぉ、どういう事?」
大会を終えた太陽は、一位だったにも関わらず、なぜかガッカリした様子で戻ってきていた。不思議に思った三日月が、どうしたのかと聞いてみると、太陽らしい答えが返ってきたのだ。
「あの最強に強い魔法壁に、一つでも穴をあける事! それが今回の目標だったんだが……」
今回も無理だったなと言い、とても悔しがっていた。
周りの参加者と戦っているのではなく、自分自身と戦っている。そういう意識を持っている太陽は、やはり尊敬でき改めてすごい人だなと、三日月は思う。
「たーいよぉ! おかえりー♪」
「たーいよッ♪ よくやったにゅー!」
「「かぁっこいい~かったにゃあん♡」」
「おっ、そうか! お前らが褒めてくれるんやったら、まぁ~良しとするか!」
二人に抱きつかれ、慰めてもらう太陽。さっきまでの落ち込んだ顔が嘘のように、にっこりと満面の笑みになった。
太陽は、可愛い妹のようなメルルとティルの甘い優しさに、とっても弱いのである。
(はぅ~太陽君、笑顔になって本当に良かったよぉ)
「「た~いよぉ~いい子いい子~ヨシヨシ♪」」
メルルとティルの、ヨシヨシ大会が始まった。
「はいはいっ。ありがとよぉ。はははっ」
「わぁお~♡ いいなぁ、太陽君」
そして、三日月はいつものお返しと言わんばかりに、揶揄うように言った。
「こ~ら~、月ちゃんよぉ……俺を揶揄うでないぞ!」
そう言いながら笑う太陽が、メルルとティルからのヨシヨシ~♪ を受け入れていることに、ふと気付く。いつもだと恥ずかしいと言い、すぐ避けて逃げ、メルルとティルに追いかけられているのだ。
しかし今は、恥ずかしそうにしながらも、まんざらでもなさそうに見える。
(弱っている……やっぱり落ち込んでいるのかな?)
年に一度の文化交流会。この日の為に、太陽が懸命に頑張っていたのを、三日月たちは知っている。
こんな大掛かりな訓練は、通常の授業ではまず有り得ない。なので、本気で実力を試す、絶好の機会なのだ。そんな中、努力をした分だけ、目標を達成出来ないというのは、やはり誰でもショックだろう。
「よぉーし!! 次や、次~!」
「「いえーい! つぎだ~♪」」
(ホント、太陽君は強い。力もだけど、心も)
――私も頑張らないとなぁ。
いつも見ているだけの三日月。太陽を見ていると、そうやる気の出てくるような、そんな気持ちになる。
「何か参加してみようかな……」
思わず、そう呟いてしまった。
「「「 エッ?? 」」」
「えっ???」
(し、しまった! また思った事を言ってしまったぁ)
「そうかそうか! やっとやる気になったのかぁ、月ぃ~!」
「ちが……!」
太陽は、三日月の話を最後まで聞くことなく、よっしゃよっしゃと背中をバシバシする。
(違うのにぃー!)
どうして、あんなことを言ってしまったのだろう? と。そう深く……ふかぁ~く、後悔した三日月なのであった。
(あぁ、太陽君が期待の眼差しで私を見ながら、愛情たっぷりのバシバシをしてくるよぉ)
「……い、痛いです」
――いや、違う。
三日月はバシバシされていることよりも、自分の言ってしまった事が『痛い』のだった。




