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19-2 文化交流会1日目~太陽君~ (中編)

お読みいただきありがとうございます(*'▽')

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2580)


「う~ん、そろそろかな? うっふふ」


 のんびりと休憩気分な三日月。そして、待つこと五分。


「うっはぁ~今日もやられた」


「ウキャーッ」「ウーキャキャッ」

「「つっかまらず~に! ツッカマエタ~♪」」


 してやったりのにやにや顔で、太陽の両肩に乗る可愛い双子メルルとティル。


「あぁ~つかまっちゃったのネ」


(いつもの和やかな風景ですねぇ)


 三日月は仲良し三人の、このやり取りがとても好きだ。


「まぁ~なんだな。いつもの追いかけっこが、良いウォーミングアップになったよなッ!」


 ニカッと白い歯を見せて、なぜか満足げに話す太陽。何事も良い方に考えられる素晴らしい性格だ。メルルとティルを持ち上げてさらに二人を喜ばせていた。


 魔法よりも身体(からだ)の能力を使った格闘・武術が得意な太陽。その力は同級生の中でも一位、二位を争う程の強いパワーの持ち主である。


 その太陽が様々な大会の中で、選んだ競技は――。


「こ、ここに参加するの?!」


 競技受付会場に着くと、三日月の心は驚きとワクワク感でいっぱいになった。


「おぅ~よ! やっぱ俺と言えばパワーだろ?」


「「「ほぇ~……」」」


 その気合十分な太陽の言葉に「すごいねぇ~」と三日月、メルルとティルの三人は、同じトーンの声で答えていた。


 身体(からだ)の能力を使った格闘・武術の大会。それは一体どのような競技なのか?


 魔法科の先生が三、四人がかりで作る魔力たっぷりの壁。それをどれだけアタック(攻撃)できるか? というものだった。結果次第で、成績に繋がる得点がもらえるのだから、それは皆必死で魔法(へき)に戦いを挑む。


 この大会はいわば、技術を測る大会でもあるのだ。


(文化交流会とは言っても、目的はあくまでも技術向上なのです!)


「よっしゃー、登録してきたぞ!」


「「「おぉぉー!!!」」」


――パチパチパチ~♪


「なんで拍手じゃい!」


 まだ登録しただけだぞと三人の応援を、案外嬉しそうな表情で太陽は受け取る。


「たいよぉん!」「ふぁいと~♪」


「うわぁ……人がすごいよぉ。それに」


 三日月は参加者を見渡し驚きクラクラしてしまう。当たり前だが体力に自信のありそうな大きい体格の者ばかりが並んでいる。その応援であろうたくさん観客(生徒)もざわざわと多く集まり、人の多い場所が苦手な三日月にとって、この状況は正直目眩(めまい)がしていた。


(これ私だったら、緊張で倒れてしまいそうだよ)


 そんな事を考えていると、キレのあるアナウンスの声が聞こえてきた。


「次、イレクトルム=太陽、準備!」


「「「いってらっしゃ~い」」」


「おぅ! 行ってくる」


 やってやるぜ! とガッツポーズで大会(戦い)へ向かう太陽に、がんばってねぇ~と手を振る三人。


 他の参加者の名前も次々と呼ばれていき、緊張感が更に増していく。技術測定担当の先生がアナウンスするその声は、いつも以上に厳しく耳に響き聞こえていた。


――そうだ、私たちが向かう未来(さき)は厳しい世界なんだ。


 授業もだが、これは遊びではない。いついかなる時も、実戦を想定しての攻撃が求められる。特に私たち一般クラスの生徒は皆、この学園に入れたからにはと各々努力を惜しまず、意識を高く持ち日々頑張っている。


「あぁ~たいよん!」「うぉ~たいにぃ♪」


「えっ? 太陽君ここから見えるの?」


 メルルとティルの声に、少し背伸びをしてのぞき込む三日月。


(わぁー始まる、こっちまでドキドキするよ)


 太陽は人一倍……いや、人より何倍もの努力家だ。それはクラスメイト全員が認める周知の事実。どんなに厳しい状況でも、ただの一度も辛い表情を見せたことがない。能力も大事だが、精神力・忍耐力をどれだけ強く鍛えられているか? それもこの学園では重要なのだ。


 そして太陽には、十分すぎるくらいその力が備わっている。もっと言うと、太陽は人よりその能力が飛び抜けて高いのだった。



(いつもは、お調子者だけれど)


――本当はすごく真面目で、心から尊敬できる人。



『制限時間三分、攻撃は最高魔法レベル以外であれば、他属性自由。剣術の使用も許可、アタックは三回までとする』


 参加者へ、注意事項のアナウンスが流れた。


 観客の前には安全の為【守りの魔法線】が引かれた(通常この魔法線から内側には入れない)。


 アナウンス後、魔力たっぷりの壁の作成に魔法科の先生が三人がかりで準備に取り掛かかる。


「頑張って~、太陽君!」


 開始時間が近付くにつれ、三日月の応援する気持ちは強くなり、両手をぎゅっと握りしめる。そして無意識に大きな声で、太陽の名を呼び応援していた。


 パシュッーーー……!! 



(((うおおぉぉぉ!!!!!)))



 参加者一人一人の前に、高さ十メートルはあろうかという【魔法壁】が現れた。そして歓声が起こり観客が盛り上がり始めるのと同時に、開始アナウンスの声が会場に響き渡った。


『始めーっ!』


 皆、様々な目的や目標。それぞれの理由があり、此処ルナガディア王国随一の魔法科があるスカイスクールへ学びに来ている。


 攻撃を始めた生徒たちは本気の姿勢、真剣そのものだ。しかしどんなに頑張り努力をしていたとしても戦うとなれば関係ない。


「過程よりも結果」という、ルナガディア王国の方針は変わらないのである。


――実力が全ての、世界だから。


(現実はそう甘くはない……厳しいなぁ)


 応援しつつも、ふとそんな世界のことなど考えていた三日月は、何だか急に胸がきゅうーっと締め付けられるような、心が痛いような感覚に襲われた。


「どうして……かな?」


――この世界には努力よりも、結果。比較され続ける現実があって。


 この地に生まれ、そういう考えの中で生きてきた。それは理解している仕方のないことなのだと三日月は言い聞かせながら、その矛盾した心は反発していた。


「いつかこの世界が……」


(階級とか、順位とか、ない世界があってもいいのに)


「――……なぁ」


 ふと、三日月は思ってしまう。その考えは良くないことと頭では分かっていても。結果しか見ないことへの痛みに耐えられず、心の中で考えてしまった。


――だからといって、私が変えられるわけじゃないのに。



(((きゃあーーーがんばってぇ~!!)))



――ビクッ。

「ふ、あっ?! こんな時に何考えているんだろ、私!」


 観客の大きな声援で、三日月は我に返った。



 残り時間が迫っていた。観客の応援する声はますます熱狂し、参加者の攻撃も最高潮に達する。



 長く、短い。


――運命の三分間が、もうすぐ終わろうとしていた。


次話! 『太陽君、頑張ったねぇ』の巻。


またぜひ、見て下さいませ~(*´▽`*)

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