18 疑問
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♪こちらのお話は、読了時間:約3分です♪
(Wordcount1460)
「確かに、ねぇ」
私は、心身冷静になった今、昨日の出来事を思い出す。そして、ユイリア様から最後に質問された、あの言葉を自分なりに分析していたのだった。
言われてみれば、そうだ。
なぜ、ロイズ先生は私に護りの魔法を使ったのだろう?
周りも気付くぐらいの強めの魔法。そこまでする程の状況ではなかったのでは? そう、過剰だったといえば――。
「そうかも……」
色んな考えが頭の中をぐるぐると回り、結果、頭を抱える形になっていた。すると、その様子に気付いた星様に声を掛けられ、はっ! と、我に返った。そして、顔を上げると、優しい声のする方に視線を向けた。
「どうしたの? 何か、悩み事?」
三日ぶりにランチをご一緒した星様が、いつもの優しい落ち着いた声と、ニコニコ笑顔で聞いてきた。変わらず、安定した雰囲気に、私はホッとする以外にはなかった。
しかし、この件は相談できる事ではないのだ。自分で解決すべき問題? 私は笑顔で「何でもないですよ~」と、お答えした。
そして私は、急いで話題を変えてみる。
「そ、そういえば! お外は暑くなってきましたねぇ」
「うん、そうだね。学内は快適で良いけれど……」
七月に入って、だいぶ気温が上がってきていた。暑さに弱い私は、近いとはいえ、歩きで学園に通ってくるのは、正直ちょっぴり辛かったりする。
しかし、それさえ頑張れば! 学園内は、全ての空調設備が完璧なので、一年中過ごしやすく、とっても助かっている(快適快適♪)。
「ほ、星様はいつもさわやかですね~」
(はぅ~! 今日は、お名前言えたよぉ)
最近、やっと緊張せずに星様と話せるようになった私。「良く出来ましたぁ~お利口さん!」と、自分にシールを貼ってあげたいくらいだ。
屋上扉前。太陽の光が当たるランチの時間は、さすがに少し暑くなる。その暑さを同じように感じているはずの星様は、いつも涼し気な表情、その爽やかな笑顔で軽やかに話す。
(全く暑そうに見えないです!!)
そうかな? と言う彼から、ちょっと気になるお返事が返ってきた。
「でも……皆さんよりは。暑さ寒さに、強いのかもしれないね」
「そうなのですか?」
「あぁ、幼い頃からの訓練はとても厳しくて……ね」
「あぁ~……」
(これは、触れてはいけない事だったのでは?)
少し、ぎこちない空気が漂う。いつものカフェオレを見つめながら、今度は違う事が気になり始めた。
(あれ? そういえば……何故だろう?)
彼からは、いつも【力】いわゆる能力や魔力を、ほとんど感じないのだ。でも、あの日。廊下での騒動の時には、今までにない空気感と時間の歪みを見た気がする。
それに、あれは。
――「モノクロの景色……」
はっ! いけない。また私は、思った事をすぐに口に出して言ってしまった。自分で蒔いた種とはいえ、気まずくて顔を逸らし、目を瞑る。
そして三十秒程、無言の時間が続いた後。もう一度、彼の顔をチラッと見ると、ぱちりと目が合った。
彼は珍しく、少し困ったような顔をしながら、私にある言葉を重く告げる。
――「時が来たら話すよ……【三日月】」
その声に、言葉に。不思議な顔をした私を見つめる彼。その視線は、いつもよりも力強く感じられた。
銀の細フレーム丸眼鏡から見えるその瞳は、海のように深く。吸い込まれそうな蒼色の瞳は、いつもよりキラキラと星のように輝き、水面の様に美しく潤んでいる。
いつも、そうなのだけれど。水のように心の中に流れ込んでくる“星様”の気持ち。
今日はいつも以上に。不思議な感覚と、温かく穏やかな波に揺られ、包み込まれるような安心感に……。
何だろう? そんな、気分だった。




