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17 お嬢様

お読みいただきありがとうございます(*´▽`*)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2460)


 七月に入り、文化交流会の準備は急ピッチに進む。


「お手伝い~♪ お手伝い~♪」


 今回、交流会の係には任命されなかった三日月も、出来る事はします! と、懸命に準備を頑張っていた。


 大会への出場をする気はゼロ。しかし楽しみにしているのは、まるでお祭りのように賑わう出店である。


 話によると、今年は例年以上の盛り上がりが期待されており、美味しい食べ物屋さんや素敵なお菓子屋さんが、たくさん並ぶという。


「それを糧に、私は頑張っているのです!」


 そして今は、文化担当のクラスメイトに頼まれた道具を、メイン会場になる中央広場へと運んでいるところだ。


「んしょ~ッ! とりあえずここまで……」


――ハッ!

 三日月はふと、誰かが近付いてくる気配を察した。


(誰か来る……後ろ?)


――コツ、コツ、コツ……。

「ねぇ、そこのあなた。少しお時間いただいてもよろしくて?」


 すると思った通り。誰かが後ろから近付いてきていた。聞いた事のない、とても可愛らしい声だった。


 三日月は、ドキドキしながらゆっくりと振り返ると、他の生徒が着ている制服とは違う、綺麗な普段着ドレスを身にまとった気品溢れる姿。長い髪をくるくるに巻いて、まるでお人形のような可愛らしいお嬢様が立っていた。


(誰だろう?)


 お嬢様の周りには取り巻き? が二人。こちらを睨みつけるように見ている。目が合ったお嬢様も、見かけとは違いなんだか少し怖い。


(うーん、何だか良くない雰囲気です)

 

「え、えっと。私でしょうか?」


 恐る恐る、返事をしてみる。


 あれ? よくよく見ると、どこかで見たことがあるような、ないような……誰だったかなぁ? そんなことを考えながら愛想笑いを浮かべていると、取り巻きの一人が、急に怒り始めた。


「ちょっとあなた【唯莉愛(ユイリア)様】にきちんとご挨拶なさいよ!」


「ふ、ふぇ?」


(えぇー! 急に話しかけてきてそんな言い方ってある?!)


「いいのよ、芽衣里(メイリ)


 そうおっしゃるお嬢様のお顔は、全然「良い」という表情をされていない。


 何とも腑に落ちない気持ちのまま。しかし、相手は上流階級のご令嬢。もうこれ以上、面倒なことに巻き込まれるのは懲り懲りなので、丁寧にお辞儀をしてご挨拶をした。


「は、初めまして。えーと、何か私にご用でしょうか?」

「あら、そんなにかしこまらなくても良くってよ」


(そ、ソウデスか……)


「ちょっとあなたに、伺いたい事がありますの。よろしいかしら?」


「は、ハイ」


「あなた……」


(うーコワイ、何だろう?!)


 知らない方との会話。その強く、キツイ視線に圧倒され、三日月は恐怖で完全に委縮してしまっていた。


「ラウルド様とはどういうご関係なんですの?」


「…………」


――エッ???


 拍子抜けするとは、こういう事をいうのだろうか? と声にもならず、ただただ呆気に取られていた。すると先程怒ってきた取り巻きの一人であるメイリが、また怒り始める。


「ちょっと、あなた! ユイリア様に失礼でしょ?! 黙っていないで、何とか言ったらどうなのッ?」


(いやいや、だって。驚きの質問に力が抜けたのですよ)


 三日月の頭の中はクエスチョンマーク? でいっぱい。何を言っているのだ~と思いながらも、やっと答えた。


「あ~、あの。何と言ったら良いか……その、ラウルド様? の、お名前すら。私は先日、知ったばかりなのですが」


 本当に、本当のことだ。三日月は()()()()言葉を発した。すると、思った通り以上の反応が返ってきた。


「はっ? ではなぜ? お知り合いでもないあなたが――しかも一般クラス……ラ、ラウルド様に、どうして舞踏会へ誘われたりするのですか!」


 まるで、自分が悪い事をしたのかしら? という錯覚にまで陥りそうな程の勢いで、責められる。今度はもう一人のお付きの方が攻撃してきた。


「あ~いえ、で、ですから……」


 そう私が言いかけたところで、ユイリアお嬢様の、可愛いのに恐い、という変わった怒鳴り声が響き渡った。


紗琉(シャル)! いいから感情的にならないでちょうだい!」


 周りも引くほどの強烈な圧に「も、申し訳ありません」と、シャルはユイリアに謝っている。


(私はもう。お嬢様が、本当にちょっと怖いです)


「失礼。では、改めてお聞きするわ。ラウルド様とは、お知り合いではない……と、あなたはおっしゃるのかしら?」


「そ、そうです。ハイ……」


(すごい迷惑は、かけられましたけど)


「そうですの。いいわ、ではもう一つよろしいかしら?」


(何だろう? このまるで尋問されてるみたいな感覚)


 さすがに嫌な気分になってきてしまう。そろそろお断りして帰ろうか……と、三日月は考え始めていた。

 そんな事を思いながらまた黙っていると、返事も待たず、次の質問をお嬢様はし始める。


「廊下での騒動の日、なぜ一般クラスのあなたがあの場所にいたのです? それから、どうして? ()()最高責任者であるロイズ先生様に、魔法で護られていたのか? 良かったら教えていただけますこと?」


「…………」


「なぜ、黙っていらっしゃるの?」


(これに答える必要はないのでは?)


 うん、ないない。このまま笑顔で立ち去ろう! そう三日月は思い、一歩下がろうとしたその時。


「黙秘しまーす!」


(ふぇ……? 誰?)


「な、何なの? あなた達」


 三日月は後ろを見てびっくり!

「太陽君、メルルにティルも」


「お~ぅ、助けに来たぞ~」

 なんという、グッドタイミング!!


「いやぁ~たとえお嬢様方も、一人いじめるってぇの、卑怯やないですかー?」


「「うちの子いじめないで! プンプン!!」」


 メルルとティルに“うちの子”とか言われると可笑しくて、吹き出してしまった。


「あっはは! みんなありがと。帰ろうか!」


「そんなことはしていないですわ」

「ちょ、ちょっと! まだ話は終わってないわよ!」




 この不公平な状況に、さすがの三日月もちょっぴりご機嫌斜めになり、そしてつい口調が強くなった。


「一方的なご質問でしたし、目的もよく解りませんので。申し訳ありませんが、私はここで失礼致します」


「はぁ~? なにをおっしゃっているの」


 お嬢様方は、少し怒った感じでこちらを見ていたが、三日月は気にしていないふりをして、その場を後にした。


お読みいただきありがとうございます。

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