17 お嬢様
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七月に入り、文化交流会の準備は急ピッチに進む。
「お手伝い~♪ お手伝い~♪」
今回、交流会の係には任命されなかった三日月も、出来る事はします! と、懸命に準備を頑張っていた。
大会への出場をする気はゼロ。しかし楽しみにしているのは、まるでお祭りのように賑わう出店である。
話によると、今年は例年以上の盛り上がりが期待されており、美味しい食べ物屋さんや素敵なお菓子屋さんが、たくさん並ぶという。
「それを糧に、私は頑張っているのです!」
そして今は、文化担当のクラスメイトに頼まれた道具を、メイン会場になる中央広場へと運んでいるところだ。
「んしょ~ッ! とりあえずここまで……」
――ハッ!
三日月はふと、誰かが近付いてくる気配を察した。
(誰か来る……後ろ?)
――コツ、コツ、コツ……。
「ねぇ、そこのあなた。少しお時間いただいてもよろしくて?」
すると思った通り。誰かが後ろから近付いてきていた。聞いた事のない、とても可愛らしい声だった。
三日月は、ドキドキしながらゆっくりと振り返ると、他の生徒が着ている制服とは違う、綺麗な普段着ドレスを身にまとった気品溢れる姿。長い髪をくるくるに巻いて、まるでお人形のような可愛らしいお嬢様が立っていた。
(誰だろう?)
お嬢様の周りには取り巻き? が二人。こちらを睨みつけるように見ている。目が合ったお嬢様も、見かけとは違いなんだか少し怖い。
(うーん、何だか良くない雰囲気です)
「え、えっと。私でしょうか?」
恐る恐る、返事をしてみる。
あれ? よくよく見ると、どこかで見たことがあるような、ないような……誰だったかなぁ? そんなことを考えながら愛想笑いを浮かべていると、取り巻きの一人が、急に怒り始めた。
「ちょっとあなた【唯莉愛様】にきちんとご挨拶なさいよ!」
「ふ、ふぇ?」
(えぇー! 急に話しかけてきてそんな言い方ってある?!)
「いいのよ、芽衣里」
そうおっしゃるお嬢様のお顔は、全然「良い」という表情をされていない。
何とも腑に落ちない気持ちのまま。しかし、相手は上流階級のご令嬢。もうこれ以上、面倒なことに巻き込まれるのは懲り懲りなので、丁寧にお辞儀をしてご挨拶をした。
「は、初めまして。えーと、何か私にご用でしょうか?」
「あら、そんなにかしこまらなくても良くってよ」
(そ、ソウデスか……)
「ちょっとあなたに、伺いたい事がありますの。よろしいかしら?」
「は、ハイ」
「あなた……」
(うーコワイ、何だろう?!)
知らない方との会話。その強く、キツイ視線に圧倒され、三日月は恐怖で完全に委縮してしまっていた。
「ラウルド様とはどういうご関係なんですの?」
「…………」
――エッ???
拍子抜けするとは、こういう事をいうのだろうか? と声にもならず、ただただ呆気に取られていた。すると先程怒ってきた取り巻きの一人であるメイリが、また怒り始める。
「ちょっと、あなた! ユイリア様に失礼でしょ?! 黙っていないで、何とか言ったらどうなのッ?」
(いやいや、だって。驚きの質問に力が抜けたのですよ)
三日月の頭の中はクエスチョンマーク? でいっぱい。何を言っているのだ~と思いながらも、やっと答えた。
「あ~、あの。何と言ったら良いか……その、ラウルド様? の、お名前すら。私は先日、知ったばかりなのですが」
本当に、本当のことだ。三日月は恐る恐る言葉を発した。すると、思った通り以上の反応が返ってきた。
「はっ? ではなぜ? お知り合いでもないあなたが――しかも一般クラス……ラ、ラウルド様に、どうして舞踏会へ誘われたりするのですか!」
まるで、自分が悪い事をしたのかしら? という錯覚にまで陥りそうな程の勢いで、責められる。今度はもう一人のお付きの方が攻撃してきた。
「あ~いえ、で、ですから……」
そう私が言いかけたところで、ユイリアお嬢様の、可愛いのに恐い、という変わった怒鳴り声が響き渡った。
「紗琉! いいから感情的にならないでちょうだい!」
周りも引くほどの強烈な圧に「も、申し訳ありません」と、シャルはユイリアに謝っている。
(私はもう。お嬢様が、本当にちょっと怖いです)
「失礼。では、改めてお聞きするわ。ラウルド様とは、お知り合いではない……と、あなたはおっしゃるのかしら?」
「そ、そうです。ハイ……」
(すごい迷惑は、かけられましたけど)
「そうですの。いいわ、ではもう一つよろしいかしら?」
(何だろう? このまるで尋問されてるみたいな感覚)
さすがに嫌な気分になってきてしまう。そろそろお断りして帰ろうか……と、三日月は考え始めていた。
そんな事を思いながらまた黙っていると、返事も待たず、次の質問をお嬢様はし始める。
「廊下での騒動の日、なぜ一般クラスのあなたがあの場所にいたのです? それから、どうして? あの最高責任者であるロイズ先生様に、魔法で護られていたのか? 良かったら教えていただけますこと?」
「…………」
「なぜ、黙っていらっしゃるの?」
(これに答える必要はないのでは?)
うん、ないない。このまま笑顔で立ち去ろう! そう三日月は思い、一歩下がろうとしたその時。
「黙秘しまーす!」
(ふぇ……? 誰?)
「な、何なの? あなた達」
三日月は後ろを見てびっくり!
「太陽君、メルルにティルも」
「お~ぅ、助けに来たぞ~」
なんという、グッドタイミング!!
「いやぁ~たとえお嬢様方も、一人いじめるってぇの、卑怯やないですかー?」
「「うちの子いじめないで! プンプン!!」」
メルルとティルに“うちの子”とか言われると可笑しくて、吹き出してしまった。
「あっはは! みんなありがと。帰ろうか!」
「そんなことはしていないですわ」
「ちょ、ちょっと! まだ話は終わってないわよ!」
この不公平な状況に、さすがの三日月もちょっぴりご機嫌斜めになり、そしてつい口調が強くなった。
「一方的なご質問でしたし、目的もよく解りませんので。申し訳ありませんが、私はここで失礼致します」
「はぁ~? なにをおっしゃっているの」
お嬢様方は、少し怒った感じでこちらを見ていたが、三日月は気にしていないふりをして、その場を後にした。
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