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15 名前

お読みいただきありがとうございます( *´艸`)

♪こちらのお話は、読了時間:約4分です♪


(Wordcount1900)


 こんなに焦ってパニックになった朝は、初めてかもしれない。


「メルルとティルったら、もぉ!」と、思いながらも。


 この機会を作ってくれた二人には、ちょっぴり感謝している自分がいた。


(今さら聞けないよぉって、きっかけが欲しかったのは事実なのです)


 三日月は、自分からも名乗らず、こんなに大切なことにも一ヵ月以上も気付かず過ごしていた……今思えば、彼にとても失礼な事をしていたな、と猛省中だった。


(そして今! メル・ティルがチャンスを作ってくれたから)


 そう、頭では解っている。なのにあと一歩が、なかなか次の言葉が見つからず、踏み出せずにいた。結局、クヨクヨ考えて「言えない、聞けない!」と、いつまでも悩んでいる状況。本当にダメだなぁ、と思うばかり。


(この状況で……どう言葉を切り出せばいいの?!)


 しばらくの間、彼と三日月はまるで時間(とき)が止まったかのように、向き合い立っていた。


 しかしその沈黙を破ってくれたのは、やっぱり彼の方だった。


「では、改めて」


 いつもと変わらない綺麗な黒髪に、海のように深い蒼色の瞳。しかし、いつもと違う表情と振る舞いで、彼はゆっくりと、優しい声で話し始める。


(わたし)の名は【アスカリエス=星守空(セルク)】です」


 それを受けた三日月は、慌てて丁寧なご挨拶の姿勢を取り、答えた。


「も、申し遅れました。(わたくし)は【セレネフォス=三日月(みかづき)】でございます。“つき”とお呼びください。あの、あと、えーと。ずっと自分の名前をお伝えせずにいた事、お許しください」


 挨拶を終え、最後に「大変失礼致しました」と頭を下げた。


 一般の民間人とはいえ、王国との関わりのある厳しい両親の元で育った三日月は、一応ひと通りのマナーは指導をされている。しかしながら慣れない状況の緊張には勝てず、少しぎこちない感じでの挨拶だった。


「そんな事はない。どうか気にしなくていい、僕の方こそ申し訳なかった。しかし、そうか……(きみ)が。三日月――(キミ)にとても似合う、素敵な名だ」


 ふわっといつもの優しく柔らかな表情に戻った彼に、ホッと安堵する。


「セルク様。ありがとうございます」


「“ほし”でいい」


「あっ、はい! えっとぉ……(ほし)様?」


 すると吹き出すように、ふふっとセルクが笑った。それを見た三日月は、少し困った顔をしていると、いつものように優しく話してくれる。


「礼儀や形式的なのはもちろん大事だけど、僕はいつも通りが良いよ、(つき)


 その言葉を聞いて、やっと緊張が取れ、肩の力が抜けてしまった。そして私も、声を出して笑ってしまった。


「えっへへ……はい! そうですね、これからもよろしくお願い致します」


 ちょっと深めのお辞儀をして、彼の優しさに心から感謝した。


「いや、こちらこそよろしく」


 そして、やっと。穏やかな空気が流れる。


 すると、可愛い声と可愛いお顔が二つ。ぴょこん! 私たちの間に現れた。


「「ねぇーねぇー」」


 終わったー? と、言わんばかりのメルルとティル。待ちくたびれちゃうよぉ~という表情で、星様と私をキョロキョロと、交互に見ている。


「あぁ、ありがとうメルティ。君たちのおかげだ。無事に終わったよ」


「そうにゃ?!」「わぁ~い!!」

 彼にお礼を言われて、とても喜ぶ二人。


 きっと私一人だったら、ずっと聞けないままでいたかもしれない。この問題を、こんなに早く解決するなんて、自分では絶対に無理だった事だろう。仮に、名前を聞けていたとしても、こんなに良い雰囲気ではなかったと思う。


「ホント、ありがとうメルル、ティル……」



(んっ……そういえば?)


 そうだ、そういえば何故?

 どうしてメルルとティルが、彼と()()()だったのか?


 この学園で知り合ったのかな? でも“メルティ”という愛称で、とても親しそうに呼ぶ人には、今までで初めてだった。


 私は、二人とは生まれた時からずっと一緒にいて、森では“メル・ティル”と呼ばれていた。なのでその呼び名は、一度も聞いた事がない。


 私の悪い癖だろう。考え始めると、うーん、うーんと悩み、全ての動きが止まってしまう。それに気付いたメル・ティルは、私の脇腹をつんつんしてきた。


「ふんにゃッ!! くすぐった……」


「「つっきぃー遅刻するにょ~??」」


 はっ! と、我に返った。


「ご、ごめーん! もう出来るよ、出来るから~」


 大変だーと、いつも以上に急いでパタパタしていると、星様の声がスーッと耳に入ってきた。


「月、そんなに急がなくても、まだ大丈夫だよ」


 問題ないよと、ニコッ。彼のその優しい笑顔は、私を落ち着かせてくれた。


「お待たせ、準備出来たよぉ! さぁ、行こっか~」


「「みんなで仲良くいっくのらーんランラン♪」」


 私の人生で、恐らく一番? 焦ったであろう慌ただしい朝が、何とか無事に過ぎようとしていた。


いつもお読みいただきありがとうございます。


今後も展開ユックリめーですが、またぜひ!

読みに来てくださいまし~(*- -)(*_ _)ペコ

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