154 あの日生まれた恐怖心
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◇
――時刻は、午後四時半頃。
「では、ラフィール先生! 自分はここで失礼いたします!!」
この日、偶然にも太陽が来ていた時間(午後三時)に三日月が目覚めたことで素敵なお茶会に仲良く参加した、太陽。その湧き上がる喜びを必死で抑えつつも興奮気味に会話を楽しんだ後、「本日は御馳走様でした!」と大きな声で感謝の気持ちとお礼の言葉をラフィールへ、伝える。
それは相変わらずの姿勢真っ直ぐで緊張した面持ちの、最敬礼。
「いえいえ~♪ 太陽さんのお口に合ったようで、幸いです」
ニコニコ素敵な笑顔で答えた、ラフィール。
「はっ、恐縮至極に存じます! 本日は誠に、ありがとうございました!!」
さすが、太陽である。扉が閉まるまでお辞儀の姿勢を全く崩さず――。
キィー……ガチャン。
そして静かにラフィールの部屋を、後にした。
「本当に真面目な御方ですねぇ、太陽王子様は」
「はい。確かに、そうです。太陽君って、いつもは冗談ばかり言って私たちのことを笑わせてくれますけれど、根は本当にまじ(真面目)……」
――ん~……んっ?
(あれ? 今、先生は……なんと言って?)
ラフィールの話す太陽の印象に頷いていた三日月はふと、聞き捨てならない言葉に動きが止まる。それは数秒遅れで彼女の脳内に、響いてきた。そしてゆっくりとラフィールの方を向きぽか~んと見つめると瞳をぱちくりっとさせ、黙りこくる。
「ん~あらあら? どうしましたか? 月さん」
その声でハッと我に返った三日月は、口を開く。
「ぃぇ……ぁ。あの~もしかして先生は、太陽君がイレクトルム王国の王子様だということを」
そう話す表情は固いが、しかし。
何とか笑顔を取り繕おうとする、三日月。
「ハイ♡」
相反してラフィールは満面の笑みで頬に手を添えながらウフフ〜と言いその質問に嬉しそうな顔で、答えた。
「はぅーっ!?」
(し、知っていたのですかぁぁ!!)
――驚きは、声にならず。
表情豊かにあんぐりと開いた口を慌てて両手で、隠す。驚く顔のみで表現された三日月の思いはラフィールの悪戯心に、火をつけてしまう。
「うっふふふ、もっちろぉ〜ん! 始めから存じ上げておりましたよッ。イレクトルム王国第一王子――太陽様の事でしたら、他にもぉ~」
あんなこと〜こんなこと〜♪ と、まるで歌うかのような声色とリズムで陽気に話し始めたラフィールの口調に、心を持っていかれそうになる三日月は「もぉ~いいですから!!」と、知りたいと思う自分の好奇心に抗う。
そこで聞こえてきた優しい声は、もちろん――。
「ラフィール先生、いい加減にして下さい! 月はまだ目を覚ましたばかり……心身ともに無理をさせてはいけないのですから」
そう、セルクである。
怒り気味の口調でラフィールへ、そんな揶揄うようなことを、大人気ない! と、頬を赤らめながら止めに入っていた。
「ウフフ~、ついつい……」
いつもの口癖にラフィールは、三日月へニコッ!
それからセルクの見せた一生懸命な姿にフッと嬉しそうに微笑み歩み寄ったラフィールは彼の耳元で小さく、囁く。
――『セルクお坊ちゃまがここまで、感情を表に出されるようになられて、私は心から嬉しゅうございますよ~』
ばたーんっ!!
「ほ、星様?」
「な、何を言って――!」
顔を赤くしたセルクの姿はラフィールの瞳に彼の幼少期を、映し出す。
「おーっとと! ふぅ~」
それから飛び掛かる勢いで怒るセルクをひょいっとかわしたラフィールの表情は幸せそうな、微笑。
そして心は、感じていた。
(三日月様に再び出逢われてから、本当に良き方向へ変わられましたね)
「先生! 私だけでなく、星様の事まで揶揄って」
三日月がいつものようにぷんぷん! と頬を膨らましたところでスーッと周りの空気が、変わる。
「さてさて、冗談はさておき……」
突然、話を逸らすようにフワァっと二人から距離を取ったラフィールは自分の視野に三日月とセルクが入ったことを、確認する。そして前にかざした右手のひらは一瞬、キラッと光った。
「ラフィール先生?」
三日月はその光現象に気付くと不思議そうに、声をかける。すぐ横にいるセルクは何事もなかったかのように真剣な表情に戻り微動だにせず、その光を見つめていた。
「はい、よろしいでしょう」
数秒後、そう言葉を発し微笑んだラフィール。
光の正体は三日月とセルク、この二人がいつも通りの精神状態に戻れているかどうかを診るための、情態(状態)魔法の一つであった。その結果によって三日月はこの部屋からの外出は困難だと考えていたラフィールはホッとし、安堵の表情を浮かべる。
「あのぉ、よろしいとは……?」
不安気に首を傾げる三日月へ再び優しく笑いかけたラフィールはかざしていた右手の魔力そのままで彼女の側へ、飛ぶ。
「そんなお顔を、なさらないで下さい」
「は……ふ、ぇ?」
そしてラフィールの手が三日月の耳に触れると安心する声で、告げられた。
「“三日月様”――貴女の記憶が引き起こしていたと思われる、強い音への恐怖心。耳の異常ですが」
「音……」
(どうして、ラフィール先生が痛みのことを知っているの?)
誰にも話していない自分の症状に気付いていたというラフィールの言葉に三日月は驚きの表情を、隠せない。
◆
三日月の耳に異常が起こったのは、あの日――。
上流クラス生徒の教室もある特別校舎(此処、ラフィールの部屋もそうだが)での出来事。今や皆が羨む二人――唯莉愛の婚約者である海偉里が、三日月の髪に触れようとした騒動の日だ。
あれから次第に強くなっていった刺さるような痛みと、苦しみ。それは大きな“音”やざわざわと騒ぐ場所で聞こえる“人の声”が耳に響き、強い痛みとなって襲ってくる。恐怖心にも似た感情に押しつぶされそうになる、というものであった。
◆
「しかし此度の【想起】魔法により、恐らくその痛みから解放されて……そう、貴女は乗り越えられたことでしょう」
「ほ、本当……ですか!?」
ほやぁっと笑う三日月は原因不明で、しかもいつ発症するかも分からなかった痛みから解放されると聞き安心したのか、うっすらと涙を浮かべていた。
お読みくださりありがとぉございます♪
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~☆今回はこちら☾~
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第12部分【09 光の中】
耳に電気が走るような、針が刺さるかのような。
原因不明の痛みを初めて感じた月ちゃん( ノД`)
(カイリ騒動の日ニャん!)
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次話もおたのしみにぃ~ん☆彡