必話01 消したい記憶 (夢)
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――これは私が見る、夢の話。
うっすらと残る、辛い記憶の話である。
◆
(ダイジョウブ。マモルカラ)
えっ、だれ?
(ナニガアッテモ)
知ってる声? でも、思い出せない。
(…………テネ)
あっ! 待って……行かないで!!
(……)
「――行かないでっ!!」
ばさっ!
ここで、いつも飛び起きるの。
「また、まただ……いつも」
――頭が……痛い。鈍く、痛む。
心臓は、ドクドクと音を立て、胸はきゅーっと締め付けられるように苦しくなる。
最近、よく見るようになった夢。
正しくは、また見るようになった夢、かな。
怖くて、淋しくて、暗闇の中で怯えていると、温かい光と共に聞こえてくる【声】。
「あの声は……」
――誰なのだろう?
でもそれ以上、分からない。
夢の内容は忘れてしまうから。
「まるで、どこか遠くへ飛んで行ってしまったかのように」
この夢を見たその朝は、涙が止まらなくなるくらい悲しい気持ちになる。
「まだお外、薄暗いなぁ」
重たい心を持ち上げるように私はベッドから立ち上がり、窓へと向かう。
カーテンをゆっくり開けると、外は雨が降っていた。
強く降る雨粒が、ガラスをバタバタと叩く。
――気持ちが落ち込んでくる、今日の雨音。
「六月かぁ」
(私、このままでいいのかな)
そう呟き、溜息をつく。
立てかけている姿見鏡でふと、自分の顔を映す。
瞳にはまだ、うっすらと涙が浮かんでいた。
――私の瞳は、色がないみたい。
「何かとても、大切なことを忘れているような気がする」
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