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148 変化を感じて

お読みいただきありがとうございます( *´艸`)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2280)


「はぁ、そうなのですねぇ」


 心身の疲労感はメルルとティルのスキスキ戯れタイムで発せられた癒やし魔法(キラキラ)のおかげ(?)か、回復の兆しが見えていた。しかしそれとは別の理由で落ち込み項垂(うなだ)れる三日月。その顔をゆっくりと覗き込むセルクの声は心配そうに、というよりもむしろクスクスと、微笑。


「月、ふふっ。大丈夫かな?」

「星様……『大丈夫?』と言いながら、お顔が笑ってますよぉ」


 三日月の拗ねるような反応にまたクスクスと笑うセルクを見て「もぉ~!」と言いながらぷくっと膨らませた彼女の頬は、桃色に染まる。そのいつもと変わらない三日月の姿を見ているだけでセルクは無意識に愛おしいと、感じていた。


(ありがとう、月。記憶が戻ったというのに君は、変わらないでいてくれる)

 目を細め微笑んでいたセルクはそう感じた後にふと、表情が暗く陰る。


「星様、どうしたのですか?」

(周りの空気が、何だか変わった気がするよ?)


 ぷんぷんとしていた彼女はそのちょっとした変化にもすぐ、気付いた。そしてニッコリと笑いながら今度は三日月の方が、セルクの顔を覗き込む。


「いや、何でもないよ」

(やはり、感度が上がったようだ)


 三日月は今回、母である望月の魔法【(key)】を解き力を戻すのではなく、記憶を戻すことを優先した。そのため自身の中に眠る本当の力(魔力・能力)については、今まで通りである。

 記憶については想起魔法が成功し失っていた記憶の全ては元の場所(三日月の記憶)へと、戻っていた。その影響なのか? 三日月の反応の速さで彼女の『感じ取る力』が今まで以上に上がったのだなと、セルクは確信したのである。


(これからのルナガディア王国も、そして皆も。どう動いていくのだろうか)

――月、僕は君の持つその笑顔を、守りたいだけだった。


 セルクは三日月が記憶を取り戻してから無事に目を覚ましたことや変わらず元気に今まで通りの彼女でいてくれることへの嬉しさと、喜びで安堵していた。

 しかしあの頃の“力”、幼かった頃の人並みならぬ能力・魔力までもが彼女の心身へ戻った瞬間。三日月がどうなっていくのかを懸念する気持ちに駆られその相反する感情に心の奥で、葛藤していた。


「えっと、星様が元気であれば……良いのですが」

「あぁ、ありがとう。心配ないよ」


 泣きそうな顔に見えるのは三日月の瞳にはまだ涙が残り、潤んでいるからだろう。その“色を持たない”澄んだ瞳にじーっと見つめられ珍しく吸い込まれるように、目を離すことが出来なくなったセルクは「まるで心を読まれているようだな」と、そんな気持ちになる。

 セルクは「本当に大丈夫だよ」と笑いながらやっとの思いで目を逸らした。


 その時!!


 ヒュー! ヒュオー、ぶわぁーッ!!


「ふぅわああ! 風がつょ……んキャッ」


 強めに吹いた風。

 純白のカーテンが大きく揺れふんわりと広がり、それは三日月を包み込み悪戯に彼女の姿を、隠す。


「月……」

(なんと、綺麗なのだろうか)


 涼しい風にさらりとなびく美しいホワイトブロンドの長い髪にセルクは、思わず息をのみ見惚れてしまう。それは太陽の光を浴びキラキラと光沢を持つ、生糸のようである。

 部屋中を包み込むような柔らかな雰囲気にセルクは癒されその、目の前で煌めく三日月の全てがあまりにも神秘的に感じ、言葉を失っていた。


(僕はなぜ、こんな宿命を背負い、生まれてきたのだろう)


「君とこうして、ずっと一緒にいたいと……」

――切に、願ってしまうんだ。


 ポツリと呟いた声。それはセルクの中に溢れてくる、本当の心。


(しかし、それは許されないことと。僕は知っているから)


 そう気持ちを抑えるセルクの心はギュッと、苦しくなる。それは経験したことのない胸の痛みと息が出来なくなるほどの強い、想いであった。


「カーテンふわふわだけどぉー! んしょぉ~……ふぅ。えへへ♪」


 純白のレースに吹いた風との間をすり抜け現れた三日月は顔を(ほころ)ばせ楽しそうにセルクへ、微笑みかける。それに笑顔で答えるセルクであったが、しかし今は。


 嬉しいはずの幸せそうな三日月の顔がセルクの心をさらに、悩ませていた。


 キラッ――。


「――!?」

「え……星様?」


 一瞬、(まばゆ)い光を感じたセルクはその方向へ、目を向ける。

 揺れ動くカーテンの合間、そこから見え隠れする細くて白い三日月の綺麗な手首に輝いた、蒼い石。


(そうか、月の力と同調して、石の光が強くなっている)

――ずっと、身に付けてくれているんだね。


「ありがとう、月」


 三日月の誕生日プレゼントにセルク自身が様々な魔法を施した、蒼い石のブレスレット。そのシンプルな装飾は彼女の細い手首にぴったりであった。


「どう……したのですか?」


「……」

 黙ったまま眉を下げ物悲し気、しかし優しくいつものように微笑むセルクの表情に三日月は少しだけ、胸騒ぎを感じ始める。


「……」

(星様はいつも一人で、その辛い思いを抱えているみたいで)


 あの時はただ『護るために』と思いを込めた、セルクの特別なブレスレット。それは彼の予想よりも大きく三日月の心身と同調し、力を発揮した。そしてこれからもずっとセルクの代わりとなり彼女の事を、守り続ける。


(そう。僕は、あの時)

――それ以上望んでいなかった。


 静まり返る部屋にそよぐ風の音がくすぐったく耳に触れる中、絹のように美しいホワイトブロンドの髪がなびくのを抑えた、三日月の手に見える光。


「ずっと。蒼い石は必ず、君の【力】となってくれる」


「チカラ?」


 その言葉の意味を考える三日月はブレスレットを見つめた後に首を傾げセルクの深海の蒼い瞳を、見つめる。何か言いたげな彼の表情は屋上扉前で初めて出逢った日と同じ、そして――不思議な感覚であった。


いつもお読み下さりありがとぉございます♪

『 関連のあるお話 』


~☆今回はこちら☾~

 ↓ ↓

第101部分


【89 「思い」と「想い」】

悩みましたがやはり、ココの部分!!

月ちゃんにとって【蒼い石】のお話は

必須なのでしゅお~(*´Д`)あぅ


☆----------☾----------☆----------☾


また読み読み来てくださいにゃあ(*´▽`*)

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