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143 星たちの力(光の魔法)

お読みいただきありがとうございます(´▽`*)

♪こちらのお話は、読了時間:約4分です♪


(Wordcount2000)


 セルクは目を瞑りゆっくりと静かな声色で右手を真っ直ぐ伸ばし、部屋からは見えない天空へ向けて、魔法展開を始めた。すると穏やかだった空気は一変し、冷たい風が吹く。


「す、すごい強い風! それに……」

(これは星様の手から?! 周りが真っ暗に覆われていく!)


 セルクの魔法を初めて目の当たりにした三日月はその瞳が惣闇(つつやみ)色の景色に変わっていくことに、気付く。


 それは、何も見えない真っ暗な――真の“闇色”。


 しかし三日月にはその真っ暗闇の中で見えるはずのないものが、視えてくる。それは辛く苦しい記憶の残像とあの時に経験した恐怖の感情がだんだんと、思い出されていた。


(エッ、何? あれは……小さい頃の私? 暗いのは嫌、そんなの怖いよ!!)


 声に出せない言葉にならない恐怖心を抑えながらも耐える三日月は、セルクから目を離さぬようにと必死で、顔を上げたままでいた。その彼もまた辛く苦しそうな表情で懸命に、完璧な魔法を開くため力の限りを尽くす。


星座(星たちの繋がり)――“星の女神(アステリア)”の導きによって……闇黒(あんこく)に深く染まりし我が手にその輝く力を与え、夜闇を打ち消す光となれ!!」


――(僕の声を、願いを。どうか聴いて……)


 ヒュゥゥ~……ビュゥウウウー!!


 強く吹き荒れるセルクの闇の力は周りを固めるロイズたち五人の創る星の魔法陣の中をグルグルと暴れ回るかのようにぶつかり、最後に天空へと上ってゆく。



『皆さん! これからです。何とか頼みます!!』


 三日月とセルクの周りを護るロイズたちは伝心能力テレパシーのようなもので、会話をしていた。


『大丈夫ですわ、ロイズ様。セルク君、とてもご立派になられて』

 力を送りながらも微笑む望月はまだ、余裕の表情である。


『うにゃっふ~! 心配ないない。しかしなぁ、セリィも成長したのぉん』

 もちろんランスも。これぐらいの闇魔法に惑わされる相手ではなかった。


『案ずるな、ロイズ。我が娘は必ず、乗り越えるさ!』


 ライトは愛娘を信じ、そして戦友(友人)でもあるロイズの息子セルクの力への信頼も、厚かった。


『そうですね、ライト様の言う通り。月さんは御心も強くなりましたから』


 一番セルクを信じ、そして本当の理解者でもあるラフィール。

 心の中ではあの時、一緒にいた自分の判断に責任を感じている反面、セルクの闇黒(ダーク)魔法【忘却】で三日月の記憶をパンドラの箱(セルクの力)へしまい込んだのは必要だったと、自信を持っていた。



「にゃっふー!」「にゃふふー!」

「「とーばーさーれるるる~!!」」


 メルルとティルもさすがに驚く! が、しかし。すぐに三日月を両側から抱きしめ、押さえる。


――まるでこれから三日月の身に何が起こるのか? 予知するかのように。


「メル……ティ、ル……―――――うぅ」


(泣いてしまう程に辛く怖い夢は。消したいと思った記憶、失くした記憶も)



 キラッ――――……。


「開かれしパンドラは煌めく月光の元、本来あるべき場所へ」


(なんて強い……風!? 星様の魔力に、溶けそう!!)


「ううぅぅ……ッ!!」


 人並みならぬ力【魔力・能力】を持つ、奇跡の子。

 月の加護を受け、救世主と言われた彼女は――その自分が思う心とは裏腹に頭の中で冷静に感情なく、動いていく。


 三日月の長けた能力は順調に記憶のピースを、セルクの開いたパンドラの箱((きおくの在処))から拾い上げ、はめられていく。



 そして――。


 魔法展開も最終段階へ入る。

 ロイズたち五人の強力な護りの中、全身全霊をかけて向き合うセルク。


 闇の魔法しか使えなかった自身の力を努力で変化(へんげ)させ、光の魔法を使うために見つけた、唯一の方法。


(星の繋がり、その輝きをどうか僕に、力を!)


「星の輝きに願う! 光魔法――【想起(アナムネーシス)】!!」



「いた……うあぁ……うぅ」

(頭が……痛い。辛くて、苦し。でもっ!)


――みんな私のために頑張ってくれてる。そう、絶対!


「乗り越えるんだ!!」


 三日月は記憶の戻っていく自分の身体を強く抱きしめるように腕を巻くと膝を床につき、震える。


 しかし、あの日と同じ。どんなに辛くとも涙を流すことなく、耐えていた。



 セルクは閉じていた目を開くとそんな三日月の姿を見つめ、最後の魔法を発した。その瞳からはなぜかぽろぽろと、涙が溢れる。


 それはセルク自身も自分の心情が分からず、理解不能であった。






――『月のために……奏でるよ』


 ねぇ、星様?

 とても素敵だった、あの夜。

 もらったことのない、見たことのない贈り物(プレゼント)


 私の心はとても満たされ、幸せが溢れていたの。


 そして綺麗な、屋上の海。

 水面(みなも)に降り注ぐ、光の粒。


「それは、まるで」


 夜空から見守ってくれている、キラキラ星。


――『((( ぽちゃん )))』


 星様の海に映る、星屑(ほしくず)

 奏でられたのは、美しい水の音楽で。


「ねぇ、星様?」


 あなたの“魔法”はこんなにも。


「温かいんだよ?」


――あの時、願った『【流星(ミーティア)】』は。


「光の魔法だったね」


 そう、私はこの想いを心の中で……呟いたの。




 

――“星の女神(アステリア)”の光。


 その集められた輝く星たち=星座の力を、願いを。

 星守空(セルク)は三日月の記憶に、捧げたのだった。


いつもお読みくださり

ありがとぉございます♪


『 関連のあるお話 』(/ω\)

~☆今回はこちら☾~


 ↓ ↓

第75部分【65 文化交流会2日目~夜空~】


こちらのお話ではセルク三日月ちゃんに

見せた「屋上の海」が描かれています♡

とても素敵な時間を二人は過ごしたのでしゅ。

(∀`*ゞ)テヘッ

☆----------☾----------☆----------☾


ではでは~次話もお楽しみにぃ☆彡


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