13 気付いた
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♪こちらのお話は、読了時間:約3分です♪
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文化交流会準備の、打ち合わせ中プチ事件。
二人が去った後、一気に疲れた三日月は、その場で呆然と立ち尽くしていた。
(ラウルド様には、出来ればもうお会いしたくありません!)
「どうしたー? 何かあったのか?」
「「あったのかぁ~??」」
少し離れた所にいた太陽とメル・ティルが、ざわざわの中心にいる三日月を見つけ、心配して遠くから声をかけてきた。
「な、何でもない何でもなーい!」
それに大きく両手を振って答える。
(はぁ、いらない気を遣ってしまうよぉ)
どうしてこんなことになってしまったのか?
三日月はただ、静かに過ごしたいだけなのになぁと少し落ち込んでいた。そしてまた「うーん、うーん」と悩んでいると、急に周りの空気がふわっと、柔らかいものに変わったのに気付く。
――きっと、彼だ……。
「本当に。今回は何事もなくて良かったね」
予想通り、あの素敵な蒼色の瞳が、優しくこちらを見ている。
「交流会の準備、いらしてたんですか?」
なぜだろう? と思う程、近付いてくる空気ですぐに彼だと分かった。その独特の心地良い空気感は、いつも三日月の心に穏やかな風を与え、安らぎを感じさせてくれる。
「すぐ近くで、交流会の花飾り準備をしていたんだ。ちょうど高い場所に上がっていたから、そこから見えてね」
(はぁ~お花ですかぁ。良いですねぇ♪)
彼に会って、不愉快だった気分はクリアになり、そしてただ“お花”と聞いただけでも、気持ちが癒されていく。
「準備中に、わざわざここまで来ていただきありがとうございます。それにご心配といいますか、気にかけていただいて、何だか申し訳ありません」
この時、思った。カイリと彼がここで鉢合わせしなくて本当によかった、と。三日月はホッと胸を撫でおろしていた。
「気にしなくていい。僕が勝手に来ただけで、それに……」
「……えっと?」
「おーい! そろそろ戻るぞー」
「戻る戻るー♪」「おいてっちゃうぞー♪」
「あっ、は、はーい!」
「いや、気にしないで。お友達が来たから安心だよ、じゃあ気を付けて。また――」
いつものように優しく微笑み、ゆらゆらと手を振る彼は、花飾りの準備に戻っていった。
「大丈夫か? てか、あのお坊ちゃまは?」
「お坊ちゃま?」
(あぁ~そっか、今思えば彼も上流階級の人なんだね)
「おぅ? 上級クラスのバッチ付けてたからな」
「あ~うん。えっと、たまにお話しする方で。こないだちょっと、助けてもらったことがあって」
――えーと、あれ?
三日月は、今まで気にもしていなかったあることに、今更だけど気が付いた。
「そうか? じゃあ悪い人やないんやなっ。うむうむ、だったら良い良い!」
「あぁーうん! そ、そうだねぇ……あっ太陽君、心配してくれたの? いつもありがとう」
「いやぁ~なんのなんの!」
(いや、良くないでしょおー! 私、ダメダメでしょ!)
あり得ない話だが、いつも会話することが楽しすぎて、三日月は全く思いもしなかったのだった。
「どうしよう。私……」
――彼の名前を、知らないよぉーッ!
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