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140 魔法と存在

お読みいただきありがとうございます(*'▽')

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2060)


 ロイズの心は痛い程、感じていた。

 セルクが三日月へ抱く、その想いを……。


 

――やはり、今一度。二人の真意を確認する必要があるようですね。


 そう心の中で呟いたロイズは、口を開いた。


「月さん。私から一つ、魔法についてのお話をさせて頂きたいのですが。よろしいですか?」 


「……ロイズ先生」


 包み込むような風が三日月の頬に優しく触れるようにふわりと、通り過ぎる。

(この感じ……星様と同じ。やっぱり親子って力も似るのかな?)


「お話、よろしくお願いいたします」


 お辞儀をしながらふと、心の中で思ったことは「私も、お母様と似ているのかな」という気持ちであった。


 そして改めて三日月は、気を引き締める。


 ロイズはその三日月の様子に微笑み「月さん、そんなに気負わなくても大丈夫ですよ」と言い、話し始めた。


「先程、ここにいる皆様に許可、そして承認をいただいた件。月さんには、ご協力いただきたいと申し上げた【想起】の魔法についてですが――」


「……」

 ロイズの話が始まると同時に(うつむ)き、無表情に戻るセルク。

 その周りには凍るような緊張感が、漂っていた。





〔【忘却(( 闇 ))】と【想起((  光  ))】魔法について〕


 三日月の記憶(トラウマ)(キオク)を忘れ去らせたのは間違いなく、星守空(セルク)である。


 通常、光と闇は共存することが極めて難しくルナガディア王国でもセルク以外で使える人物は、他に例を見ない。セルクは光と闇のどちらの魔法もバランスよく保ち、さらにはコントロールし自身の中での融合に成功した、稀有(けう)な存在だ。


 そして三日月の記憶を忘れさせるためにかけたのは――闇黒(ダーク)魔法【忘却】。これはセルクだからこそ使えた魔法であり逆に、それを解く魔法――つまり光の魔法【想起】が出来るのも恐らく、彼だけだという。


 この相反(あいはん)する魔法を同一人物にかけることをこれまでに、試したことはもちろんない。これで三日月の記憶がどこまで回帰するのか、全ての記憶が(よみがえ)るのかどうか? 未だ分かっていない。


 解除魔法の効果は半分かもしれない……いや、百パーセントかもしれない。

――最悪、ゼロという可能性もあるだろう。


 その意味も含めロイズから三日月への言葉は「協力をしてほしい」と、なっていたのである。





「闇である【忘却】、そして光である【想起】。どちらの魔法も使える者はこの、ルナガディア王国内でも少なく……そう、セルクの存在もまた別の意味で希少なのかもしれません」


「そう、なのですね」

(星様は、闇の魔法と光を)


「月さん。セルクは人より早い段階から厳しく訓練をさせてきたために、幼少の頃より一人、強き力を持っていました。とはいえ――」


 ロイズは一瞬、言葉に詰まった。

――我が息子セルク。出来ることであれば私が、その宿命を代わり背負いたい。


 (うつむ)いたまま動かぬ人形のように姿勢良く立ち尽くすセルクの姿に「課せられた辛い宿命」を思い、父としての感情が()ぎってしまったからだ。


「あの、先生……大丈夫ですか?」

 その微かな表情の変化にも三日月は気付き、声をかける。


「えぇ、大丈夫です。申し訳ありません」


 ピクッ――?!

(言葉に窮することなどない、父様が……?)


 滅多に見ることのない、感じることのない父の様子に下を向いていたセルクは顔を上げ、心配そうにロイズを見つめる――深海の蒼色をした、潤む美しい瞳で。


「い、いえ……」

 三日月も少し気になりつつもロイズの話に、耳を傾ける。


「あの事件は、十年以上前に起こった出来事ですが。当時のセルクはまだ闇魔法しか使えず、そして幼かった」


 闇の力による魔法を三日月にかけた、セルク。


 しかし――。


「あの日セルクが、月さんにかけた魔法。ほぼ成功と言って良いのですが……百パーセントとは言えなかったと思われます」


「……あ、あの」

(まるで現実に起こったかのような、私が見るあの“夢”は)



『ダイジョウブ。マモルカラ』


『ナニガアッテモ』



「いつも夢の中で……“声”が聞こえてきて」



――『ずっと、まもるから』



(あれは、星様だったの?)


「そう……ですか。恐らくそれがセルクの闇黒(ダーク)魔法【忘却】で消し去れなかった、記憶の一部でしょう」


 言いにくそうに答えたロイズはやはり、どこか悲し気な目をしていた。


「あ、えっと」

(何と言えばいいのだろう。あの表情、ロイズ先生も……苦しんでいるの?)


 その時やっとセルクが、重い口を開いた。

「月、聞いて。僕がパンドラの箱(セルクの心)にしまい大切にしている、君の記憶。それを【想起】――つまり元に戻す、ということだけれど」


 ドクンッ。

(怖がってちゃダメ! 受け入れる覚悟は出来ている。そうでしょ!)


 三日月の心臓は“記憶を元に”という言葉に痛く、反応する。しかし「失った記憶を取り戻したい」という思いは、変わらない。大きく深呼吸を一つすると、吸い込まれそうなセルクの瞳を見つめながら、答えを言う。


「はい。私は、記憶の欠片を……集めたいのです」


「分かった……うん、一緒に頑張ろう。僕が傍にいる、必ず成功させる、信じてほしい」


 安心感のある声と真剣な眼差しのセルクから伝えられた、言葉。



 ――これからその魔法が三日月のすべてを、物語る。


お読みくださりありがとぉございます♪

『 関連のあるお話 』☆

~☆今回はこちら☾~


 ↓ ↓

第144部分【129 ゆらゆら、美しく】


幼きセルクの、父との思い出……。

ここで明かされた親子関係!!

衝撃でした、ネ? ネッ!(・o・)

(自分で言っちゃうなのなの♪)

☆----------☾----------☆----------☾


次話もお楽しみにん(*´▽`*)


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