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137 記憶(トラウマ)と 記憶(キオク)の在処

お読みいただきありがとうございます(*´▽`*)

こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2700)


「月は、自分自身があの事件を覚えていないのは、ショックで忘れてしまったのだと。そう、思っているのかな?」


「え? はい、そのように聞いていたので」

(でも、改めて聞かれると。どうしてなのか、考えたことなかったなぁ)


 そう気付いた三日月は「どうして覚えていないんだろう?」と、ふと思いふけてしまう。するとポンッと大きく優しい手が三日月の頭を、撫でる。


「その話は……ずっと避けてきたからな。我々の森ではタブーだったんだ」

「お父様――」


 三日月の両親である望月やライトを含めあの日、キラリの森で起こった(あく)による事件を知る者は皆、その話題を出さぬよう心していた。


「キラリの森だけではありません。貴方を護るため、そうせざるを得なかったのです。それが一番の最善策として考えられ、必要な方法でしたから。ですので此処、月の都でも。あの事件を口にする者はいないでしょう」


「……」

(私はどうして“護られる”の?)


 ライトの言葉に続いてロイズが少しだけ、補足をする。無言のままじっと聞き入る三日月に真剣な眼差しで、話し続けた。


「信じられないことだと思うかもしれませんが、この王国にとって月さんは特別なのです。そしてルナガディア王国、国王様の指示で秘密の存在として大切に護られ――隠されてきました」


 話が進んでいくたび一体、私は? と自分が自分でなくなるみたいに、分らなくなっていく。そう感じる三日月の不安気な心情に気付いたのは――。


 ぎゅううぅぅぅ♡


「んにゃふっ?! メルル……ティル……」


「「みかじゅっきぃ~、ダイジョブだよぉ♪」」


 にこにこぉ~と笑いながらいつものように、三日月の両腕に巻きつく。

 そして「キャッキャ」と抱きしめてくるその温もり、その愛情は「誰にも負けないのらぁ!」と声が、聴こえてくるようだ。


「うふふ。メル・ティル、ありがとぉ♪」

(そうだ、変わらない。変わってはいけない心も、あるんだ)


――いつもこうして私を、二人は支えてくれる。


 そのたった数分の、安らぎ。

 三日月はメルルとティルがいるだけで楽しい気持ちになり、自分らしく戻ることができた。


 不安感で消えかけていた光を取り戻し、息を吹き返したかのようにキラキラとした力強い瞳でセルクを見つめ、お願いをする。


「星様、教えて下さい。私の記憶がどうして失われたのか。そして、どうすれば――思い出せるのかを」


 立ち直った三日月の姿に安堵するライトや望月、そしてロイズ。


 しかしこの状況を一番嬉しそうに見つめる者がいた。

 それは三日月とメルル・ティルの三人が、目覚ましい成長を遂げていく姿を一番(そば)で感じてきたであろう、人物。


「やはりあの子たちが月さんにとって“救いの天使”なのでしょうねぇ」


 三日月の力(魔力・能力)を安定させるため厳しく指導し、育ててきた。


「嬉しそうだのぉ~ん? ラフィちゃん」

「いえいえ、うっふふ。そうですか? まぁ……そうかもしれませんねぇ」


 そう、上級能力講師! ラフィールである。



 会議の部屋に広がる皆の明るく優しい波動を感じながらセルクは、想う。

(三日月、君は本当に愛されている。だから、きっと――)


「うん……ありがとう、月。記憶に関する話を進めよう」

 微笑みながらそう小さな声でセルクは頷き、三日月のお願いに答えた。


「ハイ! 頑張ります」


――その言葉を始まりに、ゆっくりと。三日月の失った記憶(トラウマ)記憶(キオク)の扉は、開かれていく。



「それでは、まず。君が辛く怖い思いをした事件の記憶(トラウマ)や、起こったことの記憶(キオク)のほとんどは、僕が持つ“パンドラの箱”にしまい込んでいるんだ」


「パンドラ……ですか?」


 セルクの言う“パンドラの箱”とは、比喩的な表現である。

「忘れ去らせた辛い記憶」はセルクの心が受け入れ(パンドラの箱)代わりに持っている(覚えている)と、伝えたかったのである。


「その……星様は以前から、私の事を?」


「うーん、どうかな。知っていた……というよりも、君という人物がこの世界に存在していることを認識していた、と言った方が正しいのかもしれない」


「認識……何だか、難しいです」


「フフ、そうだね。今は気にしなくていい」


「え? うーんと、ハイ」


 理解が出来ない自分自身にちょっぴり、シュンとなる三日月。その様子にクスッと笑いながらセルクは、声をかける。


「大丈夫。今日ここにいる皆様の言葉、意見も聞きながら順を追って話していこう。そうすれば月にも、見えてくるかもしれない。そして――」


「……え?」


 その瞬間、不思議な気分になった三日月の目に映るセルクの瞳は少しだけ、悲しさを滲ませるような潤む濃蒼色に見えた。


「そう、そして【記憶の想起】……最後に決めるのは三日月――(きみ)自身だから」


 言葉と共に穏やかな風が三日月の頬を柔らかく撫で、通り過ぎる。それはまるで桜の舞っていたあの日に戻ったようだと、懐かしくも感じた。


 いつもと変わらない、平和な気分にさせるふんわりとした声と涼しい表情の、星守空(セルク)


 でも、違うのは――。


「私、自身が」

(どうしてかな? 星様の言葉なのに……不安でしょうがないの)


 いつもであれば落ち着くはずのセルクの優しい声に、今はなぜか? ドクドクとした気持ちでいっぱいになっていく。その三日月の戸惑う思いを知ってか知らずかセルクは、表情を変えることなく淡々と話す。


「では次に、僕の魔法について説明をするよ」


「魔法、ですか?」


 この時、一番最初に思い浮かんだのはたった一度、夢だったあの屋上で過ごした素敵な一時(ひととき)。そしてセルクが自分のために準備してくれたというあの言葉と、海に映る星屑のような美しすぎる彼の魔法だった。



 しかしこの後、語られた“魔法”は全く別の力を持つもの。



「月も知っての通り、僕は生まれつき光の魔法を使うことが困難だ」


「はい、お話してくださったこと……覚えています」

(とても、大事なお話。あの夜に一緒に見た景色も……忘れない)


――忘れるはずがないよ、星様との大切な時間を。


 文化交流会二日目。

 メインイベントである夜会(舞踏会)の始まりを知らせた『数千の光の花(花火)』が、舞い散る美しい夜空の中でセルクが語った過去『運命に逆らう』ことで苦しんだ、という話だ。それは三日月の心に深く刻まれた時間であった。


 セルクは「覚えていてくれてありがとう」と微笑みながら、話し続けた。


「生まれつき色のない、白黒(モノクロ)の世界に生まれた。どんなに憧れてもその輝く“光”を受け入れることすら許されなかった僕は、元々【闇の魔法】しか使うことが出来なかったんだ」


「えっ!? えっと」

(待って! 闇の魔法って……さっきロイズ先生が言っていた、あの言葉)



――『月さんの“失った記憶”は、闇の魔法によるものです』



 ハッとした三日月の心臓音は、身体中に響く――ドクンッと。


いつもお読みいただきありがとぉございます♪

『 関連のあるお話 』


~☆今回はこちら☾~

 ↓ ↓

第49部分


【40 文化交流会2日目~癒しとは~】


可愛い双子ちゃんは三日月にとって……

心がポカポカになるようなお話でしたネェ♡

あっ(/ω\) 全く修正してない部分なので

読みにくかったらすみましぇん(笑)


☆----------☾----------☆----------☾


また読み読み来てくださいにゃあ(=^・・^=)


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