127 大妖精ランス
お読みいただきありがとうございます(/・ω・)/☆
♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪
(Wordcount2100)
「皆様ご存知かと思いますが、ルナガディア王国の伝説とされている夜空を照らす月についての記述。その元となるのが〔重要文化歴史書物〕です。過去の危機的状況を回避してきた方法が記載されていることから、王国所属の研究者の方々も大変興味をお持ちのようですが――」
その言葉でラフィールは少しだけ困ったような表情になる。それまで流暢に説明していた声が急に、止まったのだ。
「……先生、どうしたのですか?」
いつも穏やかな水の流れのように、それは春の優しいそよ風のように。自然と耳に入ってくる、安心できる声。さらさらと話すラフィールが言葉に詰まっている姿を見た三日月は心配になり、思わず声をかけていた。
「いえ、三日月様――ご心配いりません」
「え、あ……は、はい」
(なんだろう、今は少しだけ)
――冷たい心情が、伝わってきて。
ぶわぁっ!!
「うっわぁー、びっくりしたぁ!!」
ついさっきまでの困り顔はどこへやら。
三日月の考え込む表情に気付いたラフィールはすぐに気持ちを切り替え、いつものように振る舞う。周りのオーラが明るい光に変化し、そして輝かしく羽ばたかせたその風を近くで受ける三日月の顔は皆の中で一番、驚いていた。
「うっふふ♪ 身の上話はここまで! さてさて皆様、次の議題へ参りましょう。あっ、そうそう。もしご質問などございましたら後日……たぶん! 承りますからねぇ」
ご期待に添えられるか自信はありませんが、と笑顔でいつも通りサラッと、話を締めるラフィール。
「「「えぇぇ~……」」」
「うっはぁ!! ラッフィちゃん、なにゃ~そりは」
ラフィールが明るく話す中セレネフォス家の三人はさすがに驚きを隠せず、呆気にとられる。その重い空気が漂う中で軽くツッコみを入れ場の空気を上げるのは、同じ妖精でもあり自身もまた隠された魔力を持つ、ランスであった。
「あのねぇ、ランス。私のことを“ラッフィくん”とか“ラッフィちゃん”とか、色々とおかしな呼び名はやめて下さいませんか?」
右手を自分のおでこに当てながら少しだけ呆れた声で話す、ラフィール。そんな二人の様子を見ていて少しだけ謎が解けた気がした三日月の心は、ほやっとする。
(同じ妖精仲間だから、気兼ねなくあの口調でって……ことなのかな?)
「ふにゃう!! ではラッフィ殿でどうかのぉん?」
「らーんーすー?」
「んなっは! さすがロイズの分身!! 恐いの一緒なのぉん」
「ちょっと、こら! ロイズ様に失礼でしょ」
ひっえぇ~こわこわぁ!! と三日月の母、望月の後ろに逃げるランスを薄い目で見ながら「ラフィで良いですので」と念をおす、ラフィール。
「もちじゅきぃ~こわぁよぉ」
「ま、まぁ! ランス様ったら」
(可愛いですわねぇ)
望月は甘えてくる仕草のランスのことを温かく包み込み、ヨシヨシ。
そう。見た目だけで言えば、可愛いのである。
「ふふふっふ~ん♪」
その美しい容姿は二十代と言っても、過言ではない。皆が一目置くほどの気高きオーラを纏い、一度言葉を発すれば周囲の者が聴き惚れる、小鳥のような美声だ。しゃべらなければ妖艶な雰囲気すら、醸し出す。
「ランス様とはいえ……ちょっと、くっつき過ぎだと思うのだが!!」
急になぜか三日月の父、ライトがやきもちを焼いている。それを見た三日月は「お父様! ちょっと恥ずかしいですから」と止めに入った。
「あっははぁ、ゴメンでのぉ~ん」
終始ふざけているように見えるランスだったがまさか、ルナガディア王国の歴史にラフィールが深く関与するとは――心底驚きそれを悟られぬようにしていた。
「あれ? ランス様も妖精……では、どちらかの人形? それとも」
ふと頭を過ぎる、三日月の疑問。
「うぉ、よく気付いた三日月ちゅき。そうそう! わたちも、一応どちらでもない存在なのだな」
「「「へぇぇ……」」」
不思議だ~と言わんばかりの、セレネフォス家。
「な、なにゃ? その反応はぁ!!」
三日月は母と目を合わせると、二人はにっこり。笑いながら望月が話し始める。
「いえいえ、その。ランス様って……その高い美声も去ることながら、今のように可愛らしい瞬間もあり、しかし立ち姿はいつだって大変お綺麗ですし」
「うんうん! それでそれで?」
あまりの誉め言葉に気を良くしたランスは顔を近づけると、きらっきらのお目めで望月を見つめた。
「う、あ……ハイ。あのぉ」
――――パチンッ!
再度美しく響き渡った、フィンガースナップの音。少しだけ口角を上げながら話し仕切り直すのはもちろん、ロイズである。
「ランス様、そろそろよろしいでしょうか? 貴方がお美しいこと、尊い大精霊様だということは皆、周知の事実ですよ。しかしまた、本日の会議内容から少々脱線してしまいそうですので」
「ふにゃふ。乱してすまぬ、ロイズ。良いぞ」
(急に真面目になったぁー!!)
この時、三日月が思ったこと。
「会議主催者がロイズ先生ってことも、あるのかもしれないけれど……」
(この中で一番強い存在は、ロイズ先生のような気がするよぉ)
――精霊から妖精へ、変化する。
その話の全てを今の三日月が理解できたのかどうか? 母、望月は少し不安の残るところであったが、ロイズの判断により会議は次の議題へと向かっていった。
お読みくださりありがとぉございます♪
『 関連のあるお話 』ヾ(≧▽≦)ノ
~☆今回はこちら☾~
↓ ↓
第129部分【116 輝く精霊】
ランスとラフィールの親し気な関係が
描かれていたお話ですにゃ(=^・・^=)
精霊から妖精へ、同じく変化した者同士。
そしてロイズの指揮能力に、注目でしゅ☆
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いつもお読み下さり感謝でしゅ♪
また、ご感想等頂けますと幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
ではでは~(*'▽')
次話もお楽しみにぃ♪