120 ラフィールの気持ち
お読みいただきありがとうございます(*´▽`*)
♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪
(Wordcount2400)
「それが……」
優しく甘い声。
その部屋中を包み込むような絶対的安心感のある美声で話し始めたのは、ロイズである。
「え?」
「二人が二人である存在を認め願う。それが月さんの答え、でしょうか?」
メルルとティルが生きていく、今後の人生を決める決断を三日月に問う。するとその質問に迷いなく満面の笑みで返事をする彼女の声もまた、白く澄んだこの会議室を光で包むかのような煌めく光の粒を降らせ、美しく響く。
「はい、大切な二人……メルルとティルは今までも、そしてこれからも! 私の想いは変わりません!!」
――そう、一人になる必要なんて、ないッ!!
「良かったです」
「はい。え? んと、えっと?」
一体なぜ? 良かった、なのかと不思議に首を傾げる三日月。
ロイズはその決意に満ち溢れた三日月の強い言葉に安堵すると気持ちを抑えきれず、喜びが表情に表れていたのである。
少しだけ下を向きフッと笑う。
そして改めて三日月の方を向き一言呟くとにっこり、笑顔で話し始めた。
「さて、ラフィールが戻ってきたようです。先にお茶の準備を」
「え? ラフィー……ル先生……?」
(どこでしょう? まだお姿が私には見えな――)
「お待たせいたしましたぁ~うふ」
「うっっわぁぁぁあ!!」
突然! 視界に入ってきた真っ白な羽。それに驚いた三日月は椅子から落ち、これまたビックリ仰天、見事な尻餅をついてしまった。
(なんでぇ~?! もぉ、これって少し前にも同じようなことがぁ)
「はぅー、痛たぁ~い」
「あらあら! 大丈夫ですかぁ、月さ~ん?」
ほんの数十分前に「お茶の準備を」と言って羽を広げ部屋から消えていったラフィール。そして姿を消した先程同様に、一瞬で三日月の前へ戻ってきていたのである。
「もぉー先生! こないだと言い、今回もッ! びっくりさせ過ぎです!!」
三日月がぷくーっと頬を膨らましていると「ごめんなさぁ~い♪ うっふふ~」といつものように手を自分の頬に当て可愛く謝っていた。
「うーうぅぅぅ……くぅ、うはぁっ」
(に、憎めない~ッ。やはり恐るべし! ラフィールせんせぇー!!)
ぷっくりほっぺはシュ~っとぺったん。いつの間にか許してしまう。ラフィールと三日月にとってこのやり取りは、お決まりなのであった。
「お二人とも、仲がよろしいのは良いことですが。そろそろ」
ハッとする二人。三日月は慌てて立ち上がりラフィールも足を揃えて立つと、並んで謝罪の言葉を発した。
「「申し訳ありません……」」
「いえいえ、怒ってはいませんよ~大丈夫です」
二人の誠意に笑顔で応えるロイズが向けたその表情は落ち着き柔らかく、まるで子供を見守るような視線であった。
ふと耳元で囁く声。
「三日月様、ありがとうございます」
「ふぇっ? ラフィール先生?? な……」
意味も分からずその言葉に目をまん丸くする三日月。
(聞き違いかな? たまに先生は私のことを……)
その驚くような三日月の顔をのぞき込み「うふふふ~♪」と微笑するラフィールは心の中で静かに、感謝の意を呟いた。
(やはり三日月様はどうあっても、お変わりない。メルルとティルのことを二人として認め、守って下さって……本当にありがとうございます)
――どうかいつまでも。その優しさと無邪気さを、忘れないで。
それから両手を広げたラフィールは突然、深いお辞儀と挨拶を始めた。
「皆様、大変お待たせいたしました。これよりラフィール特製♪ とても美味しい楽しい! ティータイムの始まり始まりですよぉ~」
今だけは時間は関係なくとても素敵な『ティータイム』をという、ラフィール。
「お、お茶の準備! 先生、私もお手伝いします」
「あらあら、そうですかぁ? ではでは月さん、お願いします」
「ハイッ!」
三日月はラフィールの押してきたマホガニーワゴンに駆け寄った。そこに準備されたティーセットを一瞬で見分け、テキパキとセッティング。
「おぉ~! やはり見事ですねぇ。月さんはほぉ~んといつも綺麗な手さばきで……何でも出来るお利口さん♪」
「んにゃうっ!!」
(また、お恥ずかしいことばかり言う~)
ラフィールの褒め言葉に戸惑い答える三日月は、お顔は真っ赤になっている。
「そりゃあな! あったり前さ、俺の娘だからなぁ~はっはっは!」
これに一番大きく反応したのは三日月の父、雷伊都であった。
「お父様まで……」
「まぁ! ライトさんたら、これでは子離れできませんわねぇ」
(お母様まで! そして皆、クスクス笑っているよぉ)
恥ずかしすぎると言いながらも仕事はテキパキ、てきぱき。
「ほぉ~ん、みかじゅっきぃ~カワイイデスなぁん♡」
ツンツン、ツンツ~ン! 三日月、ランスに軽くつつかれ可愛がられる。
「月さんが入れて下さるお茶でしたら、とても美味しいでしょうねぇ」
ニコニコ、にっこ~り。 三日月、ロイズにキラキラ笑顔を向けられる。
「は、はぅぅぅ」
――――クスクス、クスッ!
お茶の準備を頑張る三日月の姿、ラフィールとの掛け合いにプラス両親まで加わり皆の心は一気に、和んでいった。どんなに人並みならぬ力(魔力・能力)を持つ者であるとはいえ、まだまだ十六歳の女の子。周りの大人たちから見れば可愛い子供なのである。
――しかしそんな中、つまらなそうな顔をする人物が一人。
「んっ? どうしました、セルク。何か……物言いたげですが」
含み笑いでセルクの顔を横目で見ながら、聞いたロイズ。気を抜いていた自分の表情を見られ多少の焦りを感じつつも冷静沈着を装いセルクは、答える。
「いえ、何も」
その顔を見るとまた含み笑ったロイズは三日月を囲む皆の様子に、その金色の瞳を移した。そしてあることを心に決める。
「星守空、良いかな?」
その言葉にセルクの表情は曇り、強張る。しかし今、彼も決意していた。
「えぇ、構いません。お願いいたします」
会議室に響く、明るい声。ひとときの安らぎを皆が楽しむ姿を――大切な三日月が頬を赤らめ笑う姿を。セルクは自分の心に焼き付けるように切ない心情で、見つめていた。
お読みくださりありがとぉございます♪
『 関連のあるお話 』o(*・ロ・*)o
~☆今回はこちら☾~
↓ ↓
第32部分【25 文化交流会2日目~優しさ~】
関連というか『ビックリ尻餅ついちゃった』
のお話があった回です(笑)
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しばらくお休みして、色々と悩みましたが
これまで通り、ゆっくりと
更新していけたらなぁと、思います(´▽`)
これまで書いたお話は只今、加筆修正中ですが
物語の内容は変えずに修正中です。
もし読み返した際に、読みずらい箇所がありましたら
申し訳ありません。
それでは(/ω\)
どうか、今後ともよろしくお願いいたします。
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