必話06 暗黙の掟
いつも『星と月の願いごと』を
お読みくださる読者様へ。
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いつもご愛読いただきありがとうございます。
おかげさまで「第120部分」まで続けて
これました。心より感謝なのなのです!
色々と悩んできましたが、ここでお知らせ
しておきたいことがあります。
近く、タイトルの変更を考えております。
もし変更を決意した際には、また今回の
ようにお知らせしたいと思っております。
(急には変えませんのでぇ~)
何卒、よろしくお願い致します。
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お読みいただきありがとうございます(*uωu*)
♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪
(Wordcount2970)
――月たちを送り届け、太陽の御屋敷に帰り着いたタイト。
「只今、戻りました」
「おっ、タイト兄!! お帰り~」
太陽は兄のように慕うタイトには砕けた感じで話をする。
「ふぅ……また太陽様は」
タイトは相変わらず自分の事を“兄”と呼ぶ太陽に少し、呆れ顔をしながらも生まれた時から一緒に過ごし、お世話をしてきた大切な王子から慕われ呼ばれる事が本音では、嬉しいのであった。
「まぁまぁ! そう堅い事言わんでも」
「はぁ~、まぁ縦や……」
まぁいいでしょう、と諦め口調なタイトの言葉を、聞いた太陽は、子供のように無邪気にへへへっと笑い「やたっ!」と、小さくガッツポーズをした。
タイトが席に座ると、部屋にいたメイドがお茶をいれてくれる。
「あぁ、ありがとう。もう下がって良いぞ。いつも遅くまで面倒をすまぬな」
そのタイトからの労う言葉と、一瞬ニコッと笑った初めて見る顔に、驚きの表情を見せたメイドは、頬をりんごのように真っ赤に染めて、恥ずかしそうにしながら深くお辞儀をした。
「はっ、あ、ありがとうございます!! その……私などには身に余るお言葉で、あの恐縮でございます」
顔を隠しお辞儀したままでお礼を言ったメイドは、後ずさりするように入り口の扉へ向かい、部屋を後にした。
――パタンッ。
「ヒヤッ! め……珍しい、タイト兄が他人を労わるなんてなっ。雪が降る?! いや、雹が降るんじゃないのかぁぁ!!」
メイドと同じ反応で、驚き戸惑いを見せる太陽。当のタイトは一口お茶を飲んだ後に、いつものように落ち着いた声で答えた。
「えぇ。今、私も自分で驚いております」
「うえっ、そうなんか!」
それを聞いた太陽は「どういうこっちゃ」と言い、なぜか安心の表情で、ははっと大きく口を開けて笑った。
「――コホンッ」
その笑いに、一瞬ピクリと眉を動かしたタイトが咳ばらいをする。
「へへっ、悪い悪い~……いや、でも。ククッ、不思議な事もあるもんだなッ」
お腹を抱え笑うのを我慢しながら、タイトの顔を見る。
「太陽様……」
「いや! わかった、悪かった」
そう言うと、ひとつ大きな深呼吸。そして、改めて話を切り出した。
「さて、タイト兄~ありがとな。月たちの事、送ってくれて」
「いえ、皆様の安全を最優先に考えての事にございます」
「うん? ん?」
どういう事だと首をかしげる太陽に、タイトはいつもと変わらぬ冷静な顔と声で淡々と説明をする。
「先程、陽向様の話をされた頃から、太陽様はショック状態となっておられましたので。そのまま魔法扉など開こうものなら、どこへ飛ばされた事か分かりませぬ。ゆえに私が」
「いやいや! だぁ~いじょうぶだって」
そう言いながら、白い歯を見せニカっと笑うと「ほれほれ♪」と腕を見せ、元気ポーズでアピールをする。
「いえ、元々魔力の弱い太陽様であれば、少し集中力を欠くだけで、あり得ない話ではないと推測いたします」
「おーぅ、ひでぇな~」
まぁ、弱いのはごもっとも、と恥ずかしそうにする。
「あ、そうそう。なぁ、タイト兄――」
「はい、いかがなさいましたか?」
「あれは?」
「……あれ、とは?」
「んー、いやその。あれだよ、あれ」
「……太陽様、あれでは理解致しかねますが」
「あぁー、もぉ! だーかーらっ! 月に贈ったという、あの薔薇の事だよ」
「なるほど」
それだけ言うと、タイトはまた一口お茶を飲む。
「いや、え-っと。タイト兄?」
話す気がねぇな~と、太陽は改めてタイトに目を合わせた。すると、涼しい顔で答えてくる。
「何をお知りになりたいのです?」
「んん!! いやぁ~知りたいも何も。あの薔薇を渡している意味を聞きたい! 一体どういう……どういうつもりで月に渡したのか? 何を“契約”したのか」
「うむ、然るは太陽様。あなたは勘違いをなさっておられる」
「勘違い?」
どういう意味なのか? 皆目見当もつかない太陽。
それもそのはずだ。なぜならイレクトルム王国内では、婚姻を結び合う者との間でしか後に残るもの(特に身につけるもの)を贈ってはならないという、暗黙の掟があった。不文律ではあるが、イレクトルムの人間であれば皆知りうる事だった。そのため太陽は、月の誕生日プレゼントに『後に残らないもの』を考え、食べ物であるアイスクリームを贈ったのである。
花はいつかは枯れ、もちろんずっと残り続けるものではない。しかし、ここまで太陽が執拗に問いただしているのには理由があった。それは……――――。
「勘違いったってタイト兄。『薔薇』ってのも種類が問題だ! あの丸っこくて、ころんころんした感じの、あの薔薇は」
少し頬を紅潮させ、興奮気味になりながら話す太陽。やはりタイトと二人では、まるで子供のような姿を見せる。王子という立場から、幼少の頃から親には甘える事のなかった太陽にとって、タイトは家族同然。兄であり、師であり、時には親のようにも思っていた。
ありのままの言葉と感情でぶつかってくるイレクトルムの王子の様子に、タイトは目を瞑り一瞬口元に笑みを浮かべる。そして嬉しそうに「太陽王子も、良き大人になられた」と、聞こえない程の小さな声で呟いた。
そしてすぐ、質問に戻ると答え始める。
「その薔薇とは“ヘリオスロマンティカ”の事でしょうか?」
「そう、それ! あの薔薇は確か“契約”を結ぶ際に贈る花じゃないのか?!」
太陽はまたも興奮気味になると、テーブルに身を乗り出しタイトに詰め寄る。
「然様でございます。然れど太陽様、此処は、ルナガディア王国内にございます。イレクトルムの掟をお考えなさる必要はないかと」
そのタイトの落ち着いた様に圧倒されながらも、太陽は自身の意見をしっかりと伝える。
「そ、そうか?」
そんなもんか? と頭を抱え考え込む。しかし、一番聞きたい事はそこじゃないと思い出し、納得する事にした太陽。解ったと言いながら、核心を突いた。
「うん、その考えは理解した。が、しかーし! 俺はタイト兄が他人に……しかも女性に?! なんの理由もなく、花をプレゼントするとは思えんのだが」
太陽は少しご機嫌斜めな顔で腕を組み、むんっと目を瞑っていた。その頬は先程からずっと赤いままだ。
するとまたも表情一つ変えずに、タイトがさらりと答える。
「“契約”はしておりませぬ。ただ“約束”を――」
「それって、ほぼ似たようなもんだろ」
腕は組んだままボソッと呟き、片目でチラッとタイトの方を見る太陽。しかし、タイトはその熱い視線など全く気に留める事なく、話し続けている。
「三日月様との“薔薇の約束”とは、あちら次第で変化する事。もし実現となり……然れば太陽様に許可をいただかなくてはならぬ案件ゆえ、いずれ詳細は分かる事でしょう」
「うあー……くぅ~タイト兄ィよ、そういう内緒にするとこぉぉーッ! ほんっと変わんねーよなぁ」
あぁ敵わね~なぁと、太陽は溜息をつく。
はっきりとしないタイトの口ぶりに、知りたいのに知れない事へのうずうず感が抑えられない太陽は、王子らしからぬぐたっとした姿勢で、椅子に項垂れた。
「そのような事は御座無し」
――しかし、三日月様と時間を共にした事で、私の心が変化した事は確かだ。この短時間で人の内心を変えてしまうとは……なにか、広大な力をお持ちやも知れず。
そんな事を心の中で考えつつも、イレクトルム王国第一王子の、項垂れた様子を横目に、いつもの涼しい表情でまた一口、お茶を飲むタイトであった。
いつもお読みいただきありがとぉございます♪
太陽君とタイト様のお話
いかがでしたでしょうか?(*´▽`*)
楽しいといいなぁ♡
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~☆今回はこちら☾~
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第112部分【100 薔薇の証 】
タイト放つの心地良い力、空間魔法の中で、
三日月との約束がなされたお話でしゅ(/ω\)
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