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103 グリーンティ

お読みいただきありがとうございます(◍•ᴗ•◍)

♪こちらのお話は、読了時間:約6分です♪


(Wordcount2600)


 客間に入ってからというもの、微妙な雰囲気が漂う。太陽とタイトのピリピリとした会話を横で聞きながら、月は少し焦っていた。


(どうしよう、何か言わなきゃ!)


 ヨシッと、意を決して二人に声をかけようとした、その時! 部屋の扉を小さくノックする音が聞こえた。


 コンコン、コンコン。

「失礼致します、お茶をお持ちしました」


 扉の向こうから聞こえてきた声に、タイトが一言。入室許可の返事をする。

「お入りなさい」


 ガチャ~……。

 客間の扉がゆっくりと開き、そこには見覚えのあるメイドの姿。先程、客間の用意が出来た事を廊下にいるタイトへ、伝えに来ていたメイドである。可愛い馬車型のマホガニーワゴンにティーセットを乗せ、静かに運び入ってきた。


「失礼致します」


「此処へ」


「承知致しました」


 タイトは相変わらず、言葉少なに答え、それにお辞儀と丁寧な口調で返事をするメイド。月は、その距離感に何だか違和感を覚えつつも、さっきまでの微妙な雰囲気が去った事に、心から安堵の表情を浮かべていた。


(ふぅ~! どうしようかと思ったよぉ)。


 喧嘩をしているというわけではなかったが、太陽とタイト。二人の何とも言えないピリついた雰囲気に、内心ヒヤヒヤとしていた三日月。そこに、明るいメイドの声が入ったおかげで、氷のように冷たくなってきていた部屋の空気は、一瞬で元に戻った。


「失礼致します、本日はグリーンティをご用意しました」


――グリーンティ?

「ありがとうございます」


(初めてかも……濃い、深い緑色が、なんだかすごくキレイ)。


「いえ、恐れ入ります」

 メイドは、明るい声と素敵な笑顔で答えてくれた。


 月は、どんな味がするのだろうと、期待の眼差しでグラスを見つめる。そして、カラン♪ と音を立てた氷を眺めながら、ワクワクして微笑んでいると、さっきまでの表情から一変、いつもの調子に戻った太陽が、声をかけてきた。


「ん? 月、グリーンティを飲んだ事は?」


「あ……実は、うーん。たぶん飲んだ事ないと思うの」


 自分の記憶の中では、飲んだ覚えはないが自信もない。それで月は少し、曖昧な答えになってしまう。


「ははっ、そっか! いや、月の好きな珈琲や紅茶の方が良かったんだろうがな。今日はせっかくだ、イレクトルム王国産の茶葉で作ったグリーンティを、ぜひとも月に飲んでもらいたいと思ってな!」


 甘いの好きだろ? と、太陽はニカっ! いつもの白い歯を見せて笑った。


「そうだったの? って、ウッフフ……太陽君、すっごい笑顔だね。イレクトルムの特別なお茶♪ とてもありがたいし、嬉しいよ!」


「そ、そうか……おぉぅ」


 月は太陽のニカっ! と笑顔に、満面の笑みで喜びを伝えた。そのキラキラとした表情に、一瞬ドキッとした太陽。心の内を悟られぬよう、小声でぼそっと話し、平静を装っていた。が、しかし動揺のあまり、一つ隠せなかった事がある。困った時や恥ずかしい時に出てしまう太陽の癖、首の後ろに手を置く姿勢。


(太陽君……??)


 月はその癖に気付き、どうしたのだろう? と、少し首をかしげながら考えていると、明るいメイドの声がふわっと聞こえてきた。


「それでは、(わたくし)はこれで失礼致します」


「あぁ、ご苦労」


 ギィ~……ガチャン。


 月のテーブルには、美味しそうなグリーンティ。

 可愛い双子ちゃんにはお決まり。メルルはオレンジジュース、ティルはアップルジュース。


 それからメルルとティルは、太陽に勧められ「わぁ~い♪」と、飲み始めた。


「三日月様も、どうぞお召し上がり下さい」

 月も、タイトに勧められ人生初? の飲み物。グリーンティを一口。


「ふわぁ~甘くて美味しい! はぁぅ♡ 幸せだぁ……」

 初めての出会い。想像した味と違い、苦みが少なく、香り高い。優しいほんのりとした甘さの飲み物。


(これってお茶なのかな? ちょっぴり大人の味♪)


「味は俺に合わせてるからなぁ~。月、甘さが足りんなら純糖あるぞ」


「いえいえ! とぉーっても美味しいです!」


 あまりに上品な味の飲み物に、月の話し方は敬語になってしまう。すると、太陽は笑いながら答えた。


「そうかそうか! 月ちゃんは素直で良い子だ、はっはっは」


「にゃッ!! えっへへ~お恥ずかしい」


 思わず、美味しいものを食べた時に言ってしまう、いつもの口癖が出てしまった月。少し頬を赤らめながらもう一口グリーンティを飲んだ。


「な~に、恥ずかしくないない! これミルクで作るともっと上手いんだぜ~」


「えぇ~そうなんだぁ♪ いいなぁ」


「はははっ! また来ればいいさ……うん、だな」


 急に太陽の声が低さを増す。その表情はあの時より、もっと。神妙な面持ちに変化していた。そして、タイトの方へ視線を向ける。


「タイト、すまん」


「はい、いかがなさいましたか?」


「やはりこのまま、この良き雰囲気のまま。俺から先に話をさせてくれないか?」


 太陽の瞳は、透き通るようだった。その真剣な眼差しには、一点の曇りもなく、ただただ強さと決意がひしひしと伝わってきた。


「承知致しました、仰せのままに」

 タイトは深々と頭を下げ、敬意を表す姿勢で太陽の言葉に応えた。


「すまん、感謝する」


 月は、何が始まるのだろう? と、とても不思議そうに二人のやり取りを眺めていた。それから太陽が、テーブル越し正面に座る、メルルとティル、そして三日月の方へ向き直り、見つめた。


「えーっと?」

「「たいよぉ~どしたぁん?」」


 三人は、周りの空気が一変した事に気付き、質問する。


「あぁ。今日呼び立てて、時間を取らせてすまんかったな。しかし、どうしても、聞いてもらわねばならぬ話があったんだ。本当はセルクにも、と思っていたんだが。あいつには改めて、また今度話すがな」


――何だろう?


「うにゅ?」「うみゅ?」

「……は、はい。お話、お願いします」


 太陽は、五秒ほど目を瞑り覚悟を決めた顔になる。そして、重い口を開き、話は始まった。


「俺は遠回しに、とかは嫌いだからな。単刀直入に言う」


 月たちは、黙って頷き聞いている。


「こないだの交流会の日、年齢を聞いてくれただろ? あの時に言いかけた事だ。言った通り二十二歳。嘘じゃないぜ? んで、十一月にまた一つ歳を取るんだが。その“二十三歳”になると同時に、俺はイレクトルム王国を継がねばならんのだ」


――あ……まさか?


「たいよんにゃーさん?」「にゃんにゃんおわり?」


「太陽君。そ、それって……」


「あぁ。イレクトルム王国に――もうすぐ帰る」


 あまりにも突然の話。月は動揺する気持ちを隠せなかった。


いつもお読みいただきありがとぉございます♪


『 関連のあるお話 』

~☆今回はこちら☾~

 ↓ ↓

第23部分

【19-1 文化交流会1日目~太陽君~ (前編)】

月が太陽に年齢を聞いた時のお話でございまする(*´▽`*)


※ご意見・ご感想など下さいますとありがたいデシュ!

よろしくお願いいたしまするなのなのぉ♪


ではぁ~次話もお楽しみにぃ~(/ω\)

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