103 グリーンティ
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客間に入ってからというもの、微妙な雰囲気が漂う。太陽とタイトのピリピリとした会話を横で聞きながら、月は少し焦っていた。
(どうしよう、何か言わなきゃ!)
ヨシッと、意を決して二人に声をかけようとした、その時! 部屋の扉を小さくノックする音が聞こえた。
コンコン、コンコン。
「失礼致します、お茶をお持ちしました」
扉の向こうから聞こえてきた声に、タイトが一言。入室許可の返事をする。
「お入りなさい」
ガチャ~……。
客間の扉がゆっくりと開き、そこには見覚えのあるメイドの姿。先程、客間の用意が出来た事を廊下にいるタイトへ、伝えに来ていたメイドである。可愛い馬車型のマホガニーワゴンにティーセットを乗せ、静かに運び入ってきた。
「失礼致します」
「此処へ」
「承知致しました」
タイトは相変わらず、言葉少なに答え、それにお辞儀と丁寧な口調で返事をするメイド。月は、その距離感に何だか違和感を覚えつつも、さっきまでの微妙な雰囲気が去った事に、心から安堵の表情を浮かべていた。
(ふぅ~! どうしようかと思ったよぉ)。
喧嘩をしているというわけではなかったが、太陽とタイト。二人の何とも言えないピリついた雰囲気に、内心ヒヤヒヤとしていた三日月。そこに、明るいメイドの声が入ったおかげで、氷のように冷たくなってきていた部屋の空気は、一瞬で元に戻った。
「失礼致します、本日はグリーンティをご用意しました」
――グリーンティ?
「ありがとうございます」
(初めてかも……濃い、深い緑色が、なんだかすごくキレイ)。
「いえ、恐れ入ります」
メイドは、明るい声と素敵な笑顔で答えてくれた。
月は、どんな味がするのだろうと、期待の眼差しでグラスを見つめる。そして、カラン♪ と音を立てた氷を眺めながら、ワクワクして微笑んでいると、さっきまでの表情から一変、いつもの調子に戻った太陽が、声をかけてきた。
「ん? 月、グリーンティを飲んだ事は?」
「あ……実は、うーん。たぶん飲んだ事ないと思うの」
自分の記憶の中では、飲んだ覚えはないが自信もない。それで月は少し、曖昧な答えになってしまう。
「ははっ、そっか! いや、月の好きな珈琲や紅茶の方が良かったんだろうがな。今日はせっかくだ、イレクトルム王国産の茶葉で作ったグリーンティを、ぜひとも月に飲んでもらいたいと思ってな!」
甘いの好きだろ? と、太陽はニカっ! いつもの白い歯を見せて笑った。
「そうだったの? って、ウッフフ……太陽君、すっごい笑顔だね。イレクトルムの特別なお茶♪ とてもありがたいし、嬉しいよ!」
「そ、そうか……おぉぅ」
月は太陽のニカっ! と笑顔に、満面の笑みで喜びを伝えた。そのキラキラとした表情に、一瞬ドキッとした太陽。心の内を悟られぬよう、小声でぼそっと話し、平静を装っていた。が、しかし動揺のあまり、一つ隠せなかった事がある。困った時や恥ずかしい時に出てしまう太陽の癖、首の後ろに手を置く姿勢。
(太陽君……??)
月はその癖に気付き、どうしたのだろう? と、少し首をかしげながら考えていると、明るいメイドの声がふわっと聞こえてきた。
「それでは、私はこれで失礼致します」
「あぁ、ご苦労」
ギィ~……ガチャン。
月のテーブルには、美味しそうなグリーンティ。
可愛い双子ちゃんにはお決まり。メルルはオレンジジュース、ティルはアップルジュース。
それからメルルとティルは、太陽に勧められ「わぁ~い♪」と、飲み始めた。
「三日月様も、どうぞお召し上がり下さい」
月も、タイトに勧められ人生初? の飲み物。グリーンティを一口。
「ふわぁ~甘くて美味しい! はぁぅ♡ 幸せだぁ……」
初めての出会い。想像した味と違い、苦みが少なく、香り高い。優しいほんのりとした甘さの飲み物。
(これってお茶なのかな? ちょっぴり大人の味♪)
「味は俺に合わせてるからなぁ~。月、甘さが足りんなら純糖あるぞ」
「いえいえ! とぉーっても美味しいです!」
あまりに上品な味の飲み物に、月の話し方は敬語になってしまう。すると、太陽は笑いながら答えた。
「そうかそうか! 月ちゃんは素直で良い子だ、はっはっは」
「にゃッ!! えっへへ~お恥ずかしい」
思わず、美味しいものを食べた時に言ってしまう、いつもの口癖が出てしまった月。少し頬を赤らめながらもう一口グリーンティを飲んだ。
「な~に、恥ずかしくないない! これミルクで作るともっと上手いんだぜ~」
「えぇ~そうなんだぁ♪ いいなぁ」
「はははっ! また来ればいいさ……うん、だな」
急に太陽の声が低さを増す。その表情はあの時より、もっと。神妙な面持ちに変化していた。そして、タイトの方へ視線を向ける。
「タイト、すまん」
「はい、いかがなさいましたか?」
「やはりこのまま、この良き雰囲気のまま。俺から先に話をさせてくれないか?」
太陽の瞳は、透き通るようだった。その真剣な眼差しには、一点の曇りもなく、ただただ強さと決意がひしひしと伝わってきた。
「承知致しました、仰せのままに」
タイトは深々と頭を下げ、敬意を表す姿勢で太陽の言葉に応えた。
「すまん、感謝する」
月は、何が始まるのだろう? と、とても不思議そうに二人のやり取りを眺めていた。それから太陽が、テーブル越し正面に座る、メルルとティル、そして三日月の方へ向き直り、見つめた。
「えーっと?」
「「たいよぉ~どしたぁん?」」
三人は、周りの空気が一変した事に気付き、質問する。
「あぁ。今日呼び立てて、時間を取らせてすまんかったな。しかし、どうしても、聞いてもらわねばならぬ話があったんだ。本当はセルクにも、と思っていたんだが。あいつには改めて、また今度話すがな」
――何だろう?
「うにゅ?」「うみゅ?」
「……は、はい。お話、お願いします」
太陽は、五秒ほど目を瞑り覚悟を決めた顔になる。そして、重い口を開き、話は始まった。
「俺は遠回しに、とかは嫌いだからな。単刀直入に言う」
月たちは、黙って頷き聞いている。
「こないだの交流会の日、年齢を聞いてくれただろ? あの時に言いかけた事だ。言った通り二十二歳。嘘じゃないぜ? んで、十一月にまた一つ歳を取るんだが。その“二十三歳”になると同時に、俺はイレクトルム王国を継がねばならんのだ」
――あ……まさか?
「たいよんにゃーさん?」「にゃんにゃんおわり?」
「太陽君。そ、それって……」
「あぁ。イレクトルム王国に――もうすぐ帰る」
あまりにも突然の話。月は動揺する気持ちを隠せなかった。
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~☆今回はこちら☾~
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第23部分
【19-1 文化交流会1日目~太陽君~ (前編)】
月が太陽に年齢を聞いた時のお話でございまする(*´▽`*)
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