96 繋がり
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しばらくの間、太陽とタイトの明るい声が、広く美しい玄関ホールに響き渡っていた。まるで兄弟のようにリズムよく話しながら、コミュニケーションをとっている。響く声を聞いて「なんだなんだ?」と集まってきた他の者も含め、その場で見ている皆。
二人は、今や注目の的だった。
ほんの三分前。太陽に呼ばれ、玄関ホールへタイトが現れると分かって張り詰めた緊張感が漂った、あの瞬間。此処で深々とお辞儀をしていたメイドやボーイたちは、先程とは打って変わって微笑ましいと言わんばかりの表情になる。そして皆、口々に「いつもの事です」と、幸せそうにニコニコと二人の様子を見ている。
さらに三分後。一頻り言い合って気が済んだのか? 太陽が珍しく、少し拗ねた様子を見せながら、最後に口を開いた。
「んじゃあ、タイトにぃ……じゃない“タイト”。三日月たちの案内を頼んます」
「はい、承知致しました。はぁ、やっと仰いましたね、太陽様」
本当に手のかかるお人だと、タイトは胸のあたりで腕を組み目を瞑る。そして、少し溜息交じりにそう言うのだった。
「はは、すまん。ほんと敵わねぇな~」
太陽は両腕を上げ、ばつが悪そうに月の顔を見ると、恥ずかしさを誤魔化すように舌をペロッと出して笑う。タイトに見られないよう顔を隠すその姿に、可笑しくなり、つられて月もクスッと笑ってしまう。
(なんだか今日の太陽君、可愛く見えちゃう)。
――『私は、太陽様が世に生を受けた瞬間より仕える者』
「あ……」
この時ふと、タイトが言っていた言葉を月は思い出した。そして、見た目からは想像がつかないが、タイトの年齢を考える。今の太陽が遠慮する事も無く、可愛く見える程に気を許す相手。
(生まれた時から仕えるかぁ……きっと、心は家族なんだろうなぁ)。
――“私とメル・ティル”と、おんなじ感じなのかな?
血の繋がりはなくとも、心は通じ合っているのだという事。太陽とタイトを見ていて、メルルとティルの大切さに、月は改めて気付かされたのだった。
「さーて、三日月。俺はちょいと荷物を置いてくるから、先行っててくれんか」
「アッ、うん? 分かった、いってらっしゃい」
太陽はそう月に告げ、颯爽と歩き出す。そして階段に一歩、足を置いたところで、後ろから可愛く甘えた声が聞こえてきた。「えっ?」と太陽は、不思議そうに声のする方へ目を向けると、瞳をウルウルさせ、ピンク色のほっぺたをぷぅーっと膨らませた、プンプン双子ちゃんの姿があった。
「メルルはぁ?」「ティルにはぁ~?」
どうやら二人は、月にだけ行き先を伝えた事に、ヤキモチを焼いたらしいのだ。
「おぉーっと! これはこれは、可愛いお姫様方!! あっはは」
「「ぷぅーーーー!!」」
ごめんごめんと言いながら、太陽は二人を思いっきり抱え上げた。
「ほいっ! お詫びだ」
「「きゃっはー♡♡」」
(あぁあ~……ホント可愛がり方が半端ないー!!)
月は、いつもの仲良しな三人の姿を見て、とても平和でのんびりとした時間に、ホッと癒されていた。
そして、太陽はというと。目隠しをされたり、頭をグシャグシャにされたりと、メル・ティルのやりたい放題なプチ攻撃にも全く動じる事なく、楽しそうに一緒に騒いでいる。しかし、いくら小さいとはいえ、両手のふさがった状態で、バタバタと暴れる二人を抱えたまま相手をするのは、大変だ。しかし、余裕でそれをこなす太陽は、やはり身体能力が高いのだという事が見て取れる。
すると急に、太陽が口を開き、月に話しかけてきた。
「よぉ、月。メル・ティルはこのまま連れてく事にした。ちょうど見せたいものがあったしな! タイトと先に行っててくれるか?」
「う、あーエッ?!」
――タイト様と? 緊張が。
(星様が憧れる程の、すごい人だって知ってるからぁ! なおの事、二人きりってのは……ひ、ひ、人見知りがぁぁ!!)
「じゃあ、頼む」
「御意」
月がそんな事を考えて、いつものようにうーんうーんと悩んでいると、一筋の光を感じるような、熱い糸のようなものが目の前を通ったような気がした。
――“太陽と汰維十”。
二人の間に“王子と仕える者”と、あるべき姿の空気が漂う。
(どうしたのかな? なんだかまた緊張感が増したような……)。
少しだけ、落ち着き深みのある声で、太陽は命じていた。それを受けタイトは、右手を胸に当て少し頭を下げると、自分の仕える主君へ返事をしたのだった。
「よし! んじゃそろそろ。また後で、だな」
一瞬でいつもの太陽に戻ると、月の動揺した気持ちを知ってか知らずか? 何も知らぬような涼しい顔で、月に言った。それからメイドとボーイに声をかけると、一人ずつ連れながら、先程タイトが現れた階段を上がっていく。もちろんメルルとティルも一緒で、肩車をするように太陽は自分の両肩に軽々と乗せて奥の扉へと姿を消していった。
「えぇ、ちょ、ちょっとぉ……」
(うーぅぅぅ)。
「では、三日月様」
月は一人、取り残された事に寂しさと心細さを覚えていると、透き通るような声が耳に触れた。その澄んだ声には、一点の曇りもなく抑揚や歪みもない。ただただ月の心に心地良く響いた、透明の声。
(綺麗な声。でも、さっき太陽君と言い合っていた時のお声とは、大違いだぁ)。
「本日の客間へ、ご案内致します」
「は、はい~」
タイトの言葉に導かれるがまま、月は玄関ホールを後にした。
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