92 友情
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文化交流会終了後の七月八日と九日は、二日間の催しなどの片付けや大会の結果を考慮しての調整をするという名目で、授業はない。
しかし実際には、八日は休日。
その理由は、交流会で大会へ出場した生徒も多くいるため、魔力や体力の回復を十分にできるように、と学園側が考えての事。
そして本日九日は、予定通り交流会の片付けが行われる日、というわけである。
「おはよう!」
「あら~、おはようございます」
「ねぇねぇ、昨日は何してたよ?」
「えーそうなの?」
「今日は交流会の片付けでしたかしら?」
(((ざわざわ)))。
学生寮を出ると、登校する生徒たちの列が見えてきた。その集団からは、いつもより楽しそうな話し声、未だ文化交流会が続いているかのような、浮かれた内容が聞こえてくる。そして、一般生徒の校舎へ着く頃には、興奮冷めやらぬ生徒の姿で溢れていた。一部では大きな身振り手振りで大はしゃぎ、まるで当日と変わらないくらいに沸き立っている。
それもそのはず。今年は例年以上の大会出場者数に加え、来場者数(お客様)を記録した大成功の二日間。そのあまりの盛り上がりに、学園関係者は目を見張る程に、驚いたという。
「す、すごい……皆さん、浮かれてる」
元々、人の多い場所や、ざわざわと騒ぐ声が苦手な三日月。しかし、今回の文化交流会で、少しだけその意識を克服できたように思えていた。
特に耳だが、大きな声や音が聞こえてきても、月は前程の苦痛を感じなくなっていたからだ。
一番の人だかりを通り抜け、やっと校舎の入り口まで辿り着く。無事に月を送り届けた星が、小さな声で話した。
「では、僕はこれで」
「あ、はい! ありがとうございました」
月がお辞儀をしながらお礼を言うと、星はにっこりと笑い「どういたしまして」と、返事をする。ゆらゆらと手を振りながら、今日の片付けで参加する予定の場所へと向かって、星は歩き出そうとした、その時。
その足を止める、聞き覚えのある陽気な声が聞こえてきた。
「よぉ~! おはようさん。今日も仲良くおそろいで~やなっ!」
「あっ、太陽君! おはよう」
「うっにゃーん♪」「おっはにゅーん!」」
「明日な~とか言いながら、昨日は休みだったな! はっはっは」
いつもと変わらない様子で大笑いをする太陽。ふと、奥に目をやると、星がいるのに気付く。すると太陽の顔は、みるみる喜びの表情で嬉しさが溢れ始めた。
「おぉぉ、セルクじゃねぇか!! お前、心配してたんだぞ」
ガシッ!!!
「う、グフッ……あ、あぁすまない……しかし、ち、ちょっと」
高揚する太陽からの、突然の熱い抱擁に苦しそうに答える星。そして今、校舎の入り口付近には、月たちの他にもたくさんの生徒が集まっていた、この時間、その光景を見てしまった者たちからの、冷ややか~な視線に気付いた太陽は、慌てて星から離れ、恥ずかしそうにまた大笑いをした。
(さぁ♪ 太陽くんの“いつもの癖”が出ますよ)。
首の後ろに手を置き『まいったなぁ』の姿勢。
月はそれを見て、やっぱり! 「ふふっ」と笑いを懸命に堪えている。
「いーやいやいや!! 皆そんな目で見るなや! こいつが心配かけるから、無事に会えて嬉しくなってな? ついついなぁ~♪ だから違うぞ! そういう趣味、俺にはないぞ!!」
そうやって、わいわい懸命に言い訳のように話す太陽の姿を見ていて、だんだん可笑しく(可愛く?)思えてきた月は、声を出して笑い始めた。
「うっふふふふふ、慌てすぎだよー太陽君!」
「おーい、月ちゃん。随分笑ってんな? お礼に後で、お仕置きじゃあ!!」
「「「キャー―――♪」」」
と、なぜか? メル・ティルまで月と一緒になって逃げる。その屈託のない笑顔と走り回る姿は、まだまだ子供だ。
「ふふ、相変わらず仲が良いね」
羨ましくなるよと、星は口角を上げニコニコとして見ていると、太陽はその星へ真面目な顔で言葉をかけた。
「んっ? なぁーにおかしな事言ってんだ? セルク。お前も一緒だろ?」
「えっ? あぁ……そうだね」
(そうだった。今まで生きてきて初めて出来た、本当の“仲間”)。
太陽はいつものように、白い歯を見せてニカッ! “グッドポーズ”をする。
そして……。
――「大切な仲間だからな」
そう言う太陽の、温かい陽射しのような優しさが、その安心感が。冷たくなっている星の心に、光を灯す。そして星は少しだけ、恥ずかしそうに笑いながらお礼を言った。
「ふふっ。ありがとう、太陽」
「おぅよ! 兄さんと呼んでいいぞっ!!」
それを聞いていた周りからは、ちらりほらりと笑い声がしてきた。その笑いは、決して揶揄うようなものではなく、幸せな気分になるような。そんな皆の、優しく穏やかな“笑い顔”だった。
「いいないいにゃ」「いいにゃいいな」
「「にぃにぃーごっこしたーい♪」」
しんみりとしていた雰囲気をひっくり返したのは、もちろんメルルとティルだ。その二人の可愛さに、穏やかな空気は明るく生き生きとした雰囲気に一変した。
「おーそうかそうか! いやぁ、モテる男はツライ! なぁ? 月ちゃんよぉ」
「う、うへ?! 私に言わないでぇ!」
あっはははは――――!!!
皆が一頻り笑った後、生徒は各々に校舎の中へ入っていく。それを見届けた後、しばらくして太陽が口を開く。
「なぁ、月。と、メルル、ティル。今日の片付け終わったら、うちに来んか?」
「「「ほえっ???」」」
太陽の急なお誘いに、キョトン顔の三人。しかし、その表情は真剣。真っ直ぐとした視線が、何か大切な事なのだと感じさせた。
「あと、セルクもだ。一緒に聞いてもらいたいんだが、どうだ?」
「すまない、太陽。今日はどうしても……」
もちろん月たちと同じように、太陽の決意のようなものを感じていた。しかし星には、どうしても行けない所要があった。断るのが、心から申し訳なく思う表情になっていく。
「おーっとと、セルク。そんなに気にすんなや! お前にはまた、日を改めて」
そん時は、よろしくだ! と、またニカっと笑い、安心感を与える。
「あぁ、すまない。頼む」
何か大切な話があるのでは? そう直感しているだけに星は気を揉んだが、次の約束を繋げられた事で、少し安堵したように答えた。
ゆっくりとしていた星はふと気が付く。時計を見るとさすがに、時間が押してきていた。ごめん、じゃあまた! と、急ぎ足で去っていった。
「引き留めちまって、悪かったな~」
太陽は、星が遅刻しないといいがな、と心配をしながら歩き出した。
「たいよ~ん」「にゃんにぃ~」
「おっ、どうした? 可愛い双子ちゃん」
歩き出してすぐに、メル・ティルに呼ばれ振り返る太陽。
その視線の先には、月とメル・ティルの三人が、顔を見合わせている。
「どうした? んっ??」
「う……ん、あのぉ~」
月たちは、星が今日は行けない、という話を聞いて、太陽に三人だけでも行って良いのか? と、確認をしたかったのだ。
「あの私たち、今日お邪魔しようかな? イイの……かな? って」
すると、太陽は満面の笑みで両手を上げる!!
「もちろんだ! ありがとよ~!!」
「う、うん??」
お話って? と、とても気になっている月の気持ちを知ってか知らずか? 太陽はとても喜びながら、ウキウキと軽快に、前へ進んで行ったのだった。
はぅ~(●´ω`●)
いつもお読みいただきありがとうございます♪
次話も太陽君が……ですネ。たぶん。うふふ……。
おたのしみにぃ(≧▽≦)