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90 本当の心

お読みいただきありがとうございます( ꈍᴗꈍ)

♪こちらのお話は、読了時間:約5分です♪


(Wordcount2140)


 今日はとても、穏やかな朝だった。


 目覚まし時計の音が鳴り響くよりも、ずっと早い時間に目が覚めた。私はいつものように寝室のカーテンと窓を開けると、太陽の上がった明るい空を見上げた。


 雲ひとつない青空――とても鮮やかで眩しい。


 起きたばかりで(せば)まっている私の視界は、キラキラと綺麗な朝陽を浴びながら、だんだんと見える世界に広がっていく。ボーッとしていた私の意識へ『起きて!』と、陽の光が呼びかけてくるようだった。


 その光と一緒に、窓から入ってきた優しい風に、いつもの仲良し精霊さんたちが乗って来る。そして、私の周りをふわっと楽しそうに舞う。


「うふふ、おはよう♪ 今日の風、気持ちいいネ」


 とても穏やかな時間と空気に、自然と笑顔になる。それから両腕を大きく広げて伸びをした私はまるで、力をもらうかのように、陽光を身体全体で受けとめた。


 そしてふと、良い事を思い立つ。

「そうだ! 今日のお弁当は――」


 着替えなど、朝の支度をある程度終わらせると、メルルとティルの待つ居間へと、ウキウキした気分で向かった。



 月は、清々しい気分で居間に着くと、ドアの外からでも聞こえるくらいの賑やかな声に気付く。可愛い双子ちゃんは、本日も朝から元気いっぱいのようだ。


 ガチャッ……――。


「にゃにゃッ!!」「みゃみゃッ!!」


「おはよう~メルル、ティル」


「にゃっほ~い♪」「おっはにゅーん♪」

「「つっきぃーちゅきぃ~♡」」


 キャッキャッと、朝からパワー全開で月へ抱き着くメル・ティル。


「スゴ……げん、き、だねッ! うっわぁ~!!」


 ばったーーんッ!


「ごめ~ん、つっきぃ」「ダイジョウブ? つきつきぃ」

 メル・ティルの二人は、珍しく心配そうな顔で月の顔をのぞき込んでいる。


 それもそのはず。

 月は、後ろに倒される形で、勢いよく、豪快に尻餅をついてしまったのだ。


「イテテ~、あはは~。二人とも心配ないよぉ……だ、ダイジョブ大丈夫♪」

(飛びついてくれるのは嬉しいのだけれどぉ! ち、力が、強い強い!)


 そんな愛情たっぷり? メルルとティルの挨拶がひと通り終わると、立ち直りの早い双子ちゃんは「ごはん♪ ゴッハーン!」と、嬉しそうに声を弾ませながら、テーブルについた。


――今日から二人は、しばらく此処にいてくれるのだろうか?


 月は無意識に、そんな事を思った。が、しかしすぐに、ハッ! とする。

(いけない! 私ったら、何を考えているのだろう)。


「そんな訳にはいかないんだよ」と、月は自分の心に言い聞かせた。


 今までずっと周りの人たちに支えてもらって、その優しさに甘えてばかりいた。

(もっと、ちゃんと。一人前になれる様に、しっかりしないと!)


 でも――。


 その心の支えが全てなくなってしまったら? きっと辛くて、淋しくて、悲しいだろうなぁと……月は今日、初めて思ったのだった。


 その気持ちが生まれた理由のひとつ。昨夜からメル・ティルが一緒にいてくれたおかげなんじゃないか? と感じ、それは久しぶりに、“あの夢”を見る事もなく、ゆっくり、ぐっすり眠れたという事実があったからだった。


(本当は私、何かに怯えているのかな?)


――本当は?

“ひとり”が……不安なのかもしれない。


 そんな事を重く考えていると、天使のようにふわふわ~とした可愛いらしい声が聴こえてきた。そう、その可愛い双子ちゃんの声は、どこかへ飛んで行ってしまいそうだった月の意識を、現実へ引き戻してくれた。


「「つっきぃ~♪♪」」


(あっ、本当、何やってるのだろう? 私……)。


「ごはんなにぃ?」「なになにぃ??」


(しっかり、しっかりしないと!)


「うふふ、何にしようか? すぐに準備しますから、少々お待ちくださいませ~」

 二人とも相変わらず元気ねぇと、月は手際よく食事の準備に取り掛かる。


 色々と考えながらも、テキパキと朝食を作っていく。程なくして、食事の準備が出来た。月は、メル・ティルの待つテーブルへお皿を運びながら、メニューの説明をする。


「今日はメル・ティルの大好きな、手作り苺ジャムをのせたトーストと、お野菜とソーセージを盛りつけた、目玉焼きセットにしました!」


「「はぁう~♡ やったぁー」」


(お二人さん……今日も素晴らしくハモってますね)。


 そして、飲み物はもちろんお決まりのジュース。

「は~い、メルルは『オレンジ』、ティルは『アップル』ねぇ」


 こんなに賑やかな朝食も久しぶりだなぁと、わくわくして嬉しかった。

 メルルとティルがお迎えに来る時間は毎日きっかり決まっている。なので、月の部屋で一緒に食事をとった事は、なかったのだ。


(こうして“家族”と食卓を囲むのは、一年ちょっとぶり)。


「お客様~、どうですかぁ? お味は」


「「うまうまぁ~!!」」


 二人の笑顔が、とても幸せに感じて、嬉しかった月。


 いつもの朝食よりも、たくさん作って、美味しくなるようにって頑張って、彩りや盛り付けにも力が入っていた。そして今、目の前で喜んで食べてくれている。


(ずっと一緒に成長してきた。私にとって、メルルとティルは家族同然だから)。


 こんな風に、何でもない日常が、

 こんなにも、大切な事なんだなって。


 今更、気付いた。

 これが、本当の意味での。


「幸せ、なのかな?」と、小さな声で呟く。


――私は。


『ひとりが好き』、だったんじゃなくて、

『ひとりも好き』、だったのかもしれない。


いつもお読み頂き、ありがとうございます(*´▽`*)


ゆっくりまったり進んでおります~♪

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