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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

チートコードはFFFF:FFFF~自分の全ステータスが未来永劫1で固定される代償に仲間1人の全ステータスを約42億倍にできるバッファー俺を勇者パーティから追放しようとした賢者、どう考えても愚者では?~

作者: 神通力

「エフィと言いましたか。あなたのような弱者は勇者ロゼの仲間に相応しくありません。即刻、荷物をまとめてこのパーティから出ていきなさい」


「出ていくのはお前じゃボケエ!」


目の前で、俺に追放を宣告する美少女賢者の体が、女勇者のドロップキックを食らって宙を舞う。そのまま10mぐらい吹っ飛んでいって、何度かバウンドした後に地面を転がる女賢者の頭上に浮かびあがる黒色の文字。いわゆるダメージ表記という奴だ。


HP810に対し、食らったダメージは555。うむ、初期技『ドロップキック』でこのダメージとはさすがは世界を救うべく女神に選ばれた勇者ロゼといったところか。


「いきなり何をするのですかロゼ勇者様!」


「それはこっちの台詞だよ!何いきなりエフィを追い出そうなんて言い出してるの!?この状況だと間違いなく出ていくのは君の方なんですけど!?」


「何を仰るのですか勇者様!この賢者ペニー、お姉様ゲフンゲフン勇者様のためを思って役立たずを追い出そうとしただけですのに!」


役立たず。確かにそう言われてもしょうがないぐらい俺のステータスは貧弱だ。


HPもMPも上限値が999なこの世界で、俺のHPはまさかの1。上限値が1である。表記するならHP1/1、MP1/1という状態だ。攻撃力も守備力も精神力も素早さも運も全部1。ステータスの値を上昇させる各種ドーピングを試しに食べさせてもらったことがあるのだが、何を食べても『〇〇が0上がった』と表示されるだけで、効果は一切なかった。


それなのにレベルは77。レベルが1だからこのゴミステなのはしょうがなくて、レベルが上がればきっと、という希望は、レベルが30を超えた辺りで捨てるはめになった。レベル1の頃からちっとも変わらないステータス。


おまけに、誰もが生まれた時から1つだけ持っている『ユニーク技』を除いて技も魔法もレベルアップでは何ひとつ覚えず、戦闘ではいつも他の仲間に守ってもらわなければ速攻で死んでしまう貧弱さ。レベル上限である99になればきっと...という一縷の希望も、半ばヤケクソな現実逃避にしかならないような圧倒的貧弱さ。


それなのに装備だけはやたら豪華で、戦闘中真っ先に行動できるようになる『正義の剣』、敵から受ける物理ダメージを0にする『正義の盾』、敵から受ける魔法ダメージを0にする『正義の鎧』、敵から受ける状態異常を全て無効化する『正義の兜』、死んでしまった時に1戦闘中1回だけ生き返ることができる『正義の指輪』を独占しているのだから、そりゃ顰蹙も買うだろう。


本来ならば勇者が装備していて然るべきはずの超強力な伝説の装備を、職業『勇者の幼馴染み』だからという理由で特別に装備できる俺に対し、肝心の勇者様の装備はまあ酷い。


攻撃力が低すぎる代わりに1回の通常攻撃で4回ダメージが与えられる『乱れ小刀』、素早さが3倍になる代わりに防御力は皆無に等しい『疾風の髪飾り』、混乱・魅了・石化といった厄介な状態異常を防いでくれるが防げない状態異常もある『精霊のドレス』。以上、これだけ。装飾品と盾は装備すらしていないとんだ舐めプ装備に思えるようなこの状況。


傍目には完全に俺の方が役立たずのゴク潰しだ。幼馴染みという立場を利用して勇者に寄生する寄生虫野郎にしか見えないのも当然だろう。女賢者でなくとも誰だってきっとそうするに違いない。


「おいおい、何揉めてんだ?」


「ほっときなさいよ、どうせいつものアレでしょ」


「ああ、いつものアレか。それならしょうがないな」


女勇者ロゼの仲間である可憐な女剣士ニーナ。彼女は剣の一振りで、巨大なドラゴンの首を斬り落とすほどの実力を持つ凄腕だ。八本の首を持つドラゴンの八つの首を一太刀で八本全部斬り落とした時は拍手喝采だった。唯一の弱点は方向音痴と忘れん坊と大雑把な性格ぐらいだろう。性格は頼れる姉御肌で、気風もいい。


美しい女盗賊ミリア。その斥候能力と鍵開け、暗殺技術は他の追随を許さず、これまで数多の鍵開け技術を駆使してお使いイベントを無視して大幅なショートカットに貢献してくれた勇者の名声の立役者でもある。病気の子供を治すために必要な薬草を採取しに行くのではなく、不当に買い占めていた貴族の屋敷から余裕で盗んできた時は痺れたね。


そして美少女揃いのパーティの中にひとりだけあきらかに浮いてる、山男めいた熊さん的風貌をしたいかついおっさん武闘家のフォリオ。世界最強の武闘家でありながら、己よりも強い敵を探し求め旅を続ける彼は、聖なる覇気を纏った拳で幽霊とも殴り合えるという聖職者めいた側面も併せ持つ戦うヒーラーさんだ。


すごい、実力はさておき絵面だけ見ると、同人誌だったら絶対フォリオが俺から四人の美少女パーティを奪い取る展開が繰り広げられること間違いなしの濃い面子である。男女別に別れて宿の部屋に泊まったり旅の途中で水浴びをしたり温泉に入った時に確認した彼はあっち?そっち?こっち?の方も世界一と言えそうな猛者だったことを追記しておく。


「皆さんはおかしいとは思いませんの!?どうしてこんなお荷物を背負いながらここまで来たのです!どう考えても彼を解雇して、もっと強い冒険者を仲間に加えるのが正解でしょう!!」


「あー、まあ、普通はそう思うよな」


「うちらもそうだったしねえ」


「最初は誰もが通る道だよな。しょうがない、しょうがない」


「一体何なんですの!?」


三人揃ってうんうん頷いている仲間たちに、魔王の手から逃れるために千年前に女神の手によって辛くもクリスタルの中に封印され、千年間魔王の手にかかることなく女神の神殿の奥で眠り続けていた、この世界に存在する全ての魔法を自在に使いこなし、女神によく似た風貌を持つ女勇者ロゼに一目惚れしてしまったという女賢者ペニーが憤る。


そりゃ、彼女は自分が間違ったことはしていないのにいきなり愛する女勇者様にドロップキックをかまされ、ある意味お姉様に蹴って頂くことはご褒美だけれどそれはそれとして何故??みたいに憤慨している彼女はまだ知らないのだからしょうがないのだろう。


「あのね、エフィは役立たずなんかじゃないよ」


「それは雑用や勇者様の魔王軍との戦いで荒んだ心を癒やすためのセラピーないしはカウンセリング道具として使えるという意味ですか?」


「ううん、違うの。エフィ、見せてあげて」


「わかったよロゼ。女神の加護よ、勇者ロゼに力を与えたまえ」


俺はユニーク技『チートバフ』を使った。ロゼの攻撃力がFFFF:FFFF倍になった。防御力がFFFFF:FFFF倍になった。ついでに精神力と素早さと運もFFFF:FFFF倍になった。具体的に言うと4,294,967,295倍だ。わかりやすく直すと42億9496万7295倍である。


「は?」


「どう?エフィは役立たずなんかじゃないでしょ?」


女勇者ロゼがデコピンをするジェスチャーをすると、超高速で超圧縮された超濃度の空気の弾が女賢者ペニーの心臓に直撃し、即死する。


頭上に表示される黒字のダメージ表記は数値がバグっており正しく可視化はできないが、技『気弾』のダメージが通常80前後であることを考えると、勇者特有の高いステータスを考慮してもおおよそ280前後。それに42億をかけて1兆1760億ぐらいだろう。つい先日倒した四天王の三人目のHPが4700だったことを考えると、どれだけ壊れたバフなのかがよくわかる。


なおそのまま貫通し続けるとどこまででも飛んでいって凄まじい被害を撒き散らしてしまうため、命中したら消滅するようにしているお陰で周囲に被害はない。ソニックブーム?知らない子ですね。


この世界の物理演算には恐らく組み込まれていないのでしょう。


俺は死んだ女賢者に、1滴垂らすだけで死者を生き返らせることができる奇跡のアイテム(カジノでメダル5千枚で500ml入りのガラス瓶1本と交換できる)で死んだ女賢者を生き返らせた。


「い、一体何なんですのその出鱈目なユニーク技は!?」


「ほら、俺職業が『勇者の幼馴染み』だからさ。女神様がこの力で勇者様を支えなさいって俺に与えてくれた贈り物なんだよ、きっと」


「な、なるほど、そういうものなのでしょうか...?」


真実はちょっと違う。実は俺、転生者なのだ。女神様に転生特典何がいいって訊かれて、『自分で戦うのは怖いから仲間にバフかけられるような補助職がいいです!』と言ったら『オッケー任せて!いい感じに最大値設定しとくわね!』と言われてこの世界に赤ん坊として生を受けて十五年。


確かに最大値ではあるんだけどさあ。FF(255)倍でもFFFF(65535)倍でもなく、FFFF:FFFF倍って雑に最大値にも程があるでしょ。初めてチートコード使った学生がとりあえず全部最大値にしてみました~ぐらいのノリじゃん。


お陰でこの世界での俺のバフは完全にオーバーキルを通り越して、次元の壁に穴を空けて転生前の日本へ続く次元の穴が誕生してしまいそうなレベルなのだ。尤も『代わりに戦ってもらう』という性質上『俺自身にこのバフをかけることはできない』ので、ソロプレイだと完全に役立たずのクソザコなんですけどね。ギリギリ釣り合いは取れている、のかな??


正義シリーズの装備がなければ、あるいは仲間がひとりもいなければ、俺は序盤の雑魚モンスターすら満足に倒せないそこら辺の子供未満の非力でか弱い存在だからな。


いや、やっぱりおかしいよ。だからって42億倍はないでしょ42億倍は。53万とかでも十分すぎるほどオーバーキルなのに、4.2ギガだもんな。いや、そう換算すると意外に全然大したことなさそうに感じられるから不思議だ。安価な外付けハードディスクとかでも今時2テラとかザラだしな。たった4.2ギガ程度でイキってたらイキリ4.2G太郎とか呼ばれちゃいそうで怖いし。


謙虚さを忘れないよう心掛けないと。じゃないと今ここで身包み剥がされて無一文で放り出されたりしたら俺、五分も経たず魔物に襲われて死んじゃうもん。


「そんなわけで、エフィを追い出すのは絶対なし!わかった?」


「...よくわかりました。お姉様の傍に若い男がいるなんて甚だ不服ではありますが、彼の実力を認めざるを得ないでしょう」


「よかったー!わかってもらえなかったらもう一回死んでもらってここに土葬していくところだったよー!」


「なんと!?いえ、そんなバイオレンスな勇者様も素敵...!」


文字通り一度死んで身をもって体験したことが大きかったのだろう。渋々といった感じで納得してくれた女賢者ペニーは、勇者らしからぬ物騒なロゼのさらりとした外道発言にも心をときめかせているらしい。


こうして俺は、危うく勇者パーティを追放されるという事態を免れたのであった。


めでたしめでたし。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >いや、やっぱりおかしいよ。だからって42億倍はないでしょ42億倍は。53万とかでも十分すぎるほどオーバーキルなのに、42ギガだもんな。いや、そう換算すると意外に全然大したことなさそう…
[良い点] 面白かった。 [一言] これが連載版になるとかなりつまらなくなりそうだから短編でよかったと思える、かな?
[一言] つまんなとか言うやつまずどこが間違ってるのか全部書けや。
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