最強の筋肉と純情なメンタル
「昨日はありがとな、颯」
教室に入り、少しして入ってきた颯に向かって、俺と南は頭を下げた。
「はっはっは。気にすることなし! 昨日は中々よい筋トレになった。俺の筋肉も喜び、友も助けられる。一石二鳥だな!」
爽やかに前髪を払いながら言い放つ颯。イケメンである。
「ありがと」
南もそんな彼に乾いた笑みを浮かべる。外見からはあまり筋肉がついているようには見えないが、実の所颯の腹筋はバキバキに割れている。チョコどころではなく、学校のタイル並みの割れ具合だ。
「にしても、怜さんにあれほどまで執着されるとは。一体何をやったんだ?」
「俺は別に何かした記憶はないんだけどな」
「じゃあ告白は向こうから?」
「ああ」
「なるほど。じゃあ、キスとかっていうのはしたのか?」
「まだだ。って何の話だよ。新婚さんいらっしゃいじゃないんだから、そんな事聞くなよ」
「すまんすまん。聞いたら意外と答えてくれるからついな」
ジト目で颯を見つめる。彼は変わらずに笑っていた。
「へ~。意外と進んでないんだね。最近の中学生は進んでるから、結構行くとこまで行ってるのかと思ってた」
「最近の中学生って……。南も同い年だろ?」
「ま~そうだけどさ。結構皆進んでるなぁって聞いてて思って」
「誰に聞いたんだ?」
「そりゃ友達だよ」
あっけらかんとそう答えた南。彼女が言う友達というのは恐らく女の子だろう。
「生々しいな……」
「そうだ! そういう事は言わないでくれ! 俺は純情なんだ」
「めんどくさいな」
南はため息を吐く。
徐々に時が経ち、教室に人が増えて来た。俺は大人しく席につく。ちらりと隣を見ると南がにっこりと笑っていた。
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