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昨日の謝罪と怜の心情

翌日、俺は少し早め、7時半頃に家を出た。特に学校に用事があるという訳ではなかったが、なんとなく眠れなくて、つい早めに家を出てしまったのだ。

 8月が終わり9月になったとはいえ、まだ暑い。玄関を出た俺を夏朝の日差しが貫いてくる。それに思わず目を瞑った。


「おはよう」


「へ?」


 思わぬ声。妹のものではない。昨日散々聞いた声だ。


「どうしてこんな所にいるんだよ」


 挨拶してきたのは南だった。


「いやぁ、一緒に登校しようと思ってたんだけど何時頃出るのか聞くの忘れちゃってさ。なら、待ってれば早いかなって。家近くだしね」


「近くっても……」


 確かに俺と南の家は徒歩三分の距離にある。しかし、それだけで何時に出発するかも分からない人を待とうと考えるだろうか? 一瞬、嫌な記憶が頭をよぎる。


「そんなのいいからさ。早く行こうよ」


 けれど、その記憶は南に引かれた右手の柔らかな感触に溶けて消えて行った。



 学校に着くなり待っていたのは災厄であった。


「昨日はごめんなさい。あんな事するつもりじゃなかったの」


 俺の前で頭を下げる怜。それを南は冷ややかに見つめる。


「あんな事するつもりなかったってどういう意味かなぁ? 私たち颯がいなかったら酷い目にあってたんだけど」


「ほんとにごめんなさい。でも、私が命令した訳じゃないの。勝手にあの人たちが暴走しちゃって……」


「なに? あれは自分の意思じゃなかったって言いたいの? たとえそうだったとしても監督責任って言葉知ってる? あれは貴方のせいだよ怜さん」


「だから、こうして謝っているではないですか」


 いつも分け隔てなく優しい南が、いつになく厳しく怜を睨む。そんな彼女を怜も頭を下げながらじろりと見上げた。一触即発、犬猿の仲と呼ぶに相応しい二人の様子に、俺は慌てて割って入る。


「まぁまぁ。悪気がなかったのは分かったからさ。次から気を付けてね」


「はい、勿論です。ちゃんと言っておきますね」


 すると、彼女は顔を上げ、申し訳なさそうに眉を寄せた。

 そう、天野怜は単に愛情表現が重いだけで、性根は優しく、常識的で、少し内気な少女なのだ。


「そして、私は正攻法で智己さんを落として見せます!」


 そう、重いだけでいい子ではあるのだ。


「ははは…は…は……」


 ぐっと右手を握りしめ決意を新たにする彼女に俺は笑う事しか出来ない。


「何言ってるのこのお馬鹿さんは。貴方みたいな重い人間、普通に考えて願い下げだよ」


 バチバチと火花を散らす二人。

 彼女たちから逃げるように俺は目を逸らし、脱いだ靴を下駄箱にしまった。


毎日投稿を目標に頑張って行きます。

ブクマ&評価いただくと跳ねる生き物です。

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