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転校初日、はじめての友人(まともではない)

 怜とは違うクラスという事もあり、その後は淡々と授業が進んで行った。この学校は初日から通常授業のため、夏休み明けには辛い。


「は~。やっと昼休みだぁ」


 思わず声を上げ、背伸びをした俺を後ろの席に座っている男子が笑う。


「随分とお疲れのようだな転校生」


 振り向くとそこには右頬を上げて笑うイケメンがいた。

 シュッとした輪郭にワックスで整えられた髪、細い眉が凛々しさを強調する彼に、男といえど思わず怯む。


「昔っから親父臭いんだよね、智己は」


「どうやら知り合いらしいな」


「そ。小さい頃からの幼馴染なんだ」


「なるほど」


 俺が怯んでいる間に、南と彼はそんな事を話していた。自分そっちのけで盛り上がり始めた二人に少しむっとして、


「転校生じゃなくて、俺には中村智己というしっかりとした名前があるんだが」


 そう唇を尖らせると、イケメンはきょとんと眼を丸くしてその後「ごめんごめん」と片手を縦にして、申し訳なさそうな顔をした。


「俺の名前は飛鳥颯。よろしくな智己」


 ニカッとスポーツマンのような清々しい笑みを浮かべる颯。彼は挨拶と同時に、俺に向かって片手を差し伸べてくる。


「よろしく」


 俺はその手を軽く握った。すると、颯が突然握る力を強くしてくる。


「いってぇ!」


 あまりの力強さに手を離そうとするも、彼は全く放そうとしない。それどころか笑いながら、更にギアを上げていく。


「ギブ! ギブ!」


 ほぼ悲鳴のような声を上げて、身を捩らせる俺。それを笑いながら見る颯。


「ちょっと。そろそろ止めてあげなよ」


 顔を真っ赤に叫ぶ俺を見かねた南が、眉を顰めながら仲裁に入る。


「すまんすまん」


 そして、やっとの事で手を放した颯はちっとも悪気のなさそうな顔をして笑っていた。


「すまんじゃねーだろ」


 真っ赤になった手に息を吹きかけながら俺は、颯を睨みつける。しかし、彼を庇ったのは驚いた事に南だった。


「しょうがないよ。この脳筋は力比べすれば相手の人間性が分かるとか言い張る馬鹿だから」


 彼女は呆れたように颯を見つめ、「で、どうだった?」と尋ねる。すると、彼は渋面を浮かべた。


「全く力が感じ取れなかった。智己は筋力が足りないな。家で遊ぶのもいいが、外に出て運動するのも楽しいぞ。今度、俺の両親が経営しているジムで一汗流さないか?」


「余計なお世話だ!」


 最初の『爽やかなイケメン』というイメージとはかけ離れた脳筋っぷりに、俺は思わず肩を竦める。しかし、颯はそんな事全く気にしていないようで、


「でも、智己はいい奴だ! 普通初対面でこんな事やられたら二度と口を利こうとは思わない。なのに、君はこうやって話してくれる。これからよろしくな、智己!」


 そんな事をのたまった。


「嫌われるって分かってるのになんでやるんだよ」


 ため息を吐く俺。その横でなぜか南は、


「でしょでしょ? やっぱ智己は優しいよね。颯ったら見る目ある~」


 と何故か得意気に胸を張っていた。


毎日投稿を目標に頑張っていきます。

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