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久し振りの再会と怜の恋愛

「まさか隣の席になるとは……」


 もう10年にもなる腐れ縁の南が、俺の転校先である来栖高校に通っている事は知っていた。だが、まさか転校早々隣の席になるのは予想外だ。


「へへへ。ほんとにね。私もまさか智己の隣になるとは思わなかった」


 彼女は昔と変わらない子供っぽい笑みを浮かべる。それを俺はほのぼのとしながら見ていた。南は特徴的な銀色の髪と淡い碧の瞳をしていて、まるで磨き抜かれた宝石のような眩さを放っている。

 黒髪の日本人らしい正統派美少女の怜とは正反対の、茶目っ気たっぷりの外国人風美少女な南。

 嫌な思い出がある怜とは違い、南との久々の触れ合いは、先ほどの罵声と坊主頭の男たちからの厳しい視線で冷え切った俺の心を温かく満たした。


「中二ぶりだよね」


「そうだな」


 怜と別れると同時に、南とも離れ、それ以来メールと電話のみのやりとりになっていたので、こうして顔を合わせるのは3年ぶりだ。


「ところで、さっきのやり取りは?」


 挨拶もそこそこに彼女は、興味津々といった様子でそう尋ねてくる。それは明らかに怜による全校集会での告白事件の事を指していたが、俺はとぼけたふりをした。


「さぁ、なんのことだか」


「またまたとぼけちゃって~」


 そんな俺の腹を南は肘でぐりぐりと突いた。


「元カノの怜ちゃんからのヨリを戻したいというお願いの事だよ。受けなくてよかったの?」


 ニマニマと笑いながらそんな事をのたまう彼女を、俺はジト目で見つめる。


「お前、分かってて言ってるだろ」


 涼香とは中二までずっと一緒にいたのだ。当然、怜と付き合っているときも彼女と話す機会はあった。

 つまり、鷹山南という人間は、俺が天野怜という女と別れた理由を知っているのだ。


「さてさて、なんのことやら」


 しかし、彼女はそっぽを向いて口笛を吹き始めた。担任が去り、騒がしくなっている教室に、南の「ぴゅー」という呑気な音がこだまする。


「重いからだよ」


 ため息一つ、彼女からの問いに俺は答えた。


「どんなとこが?」


 だが、南はその答えだけでは満足しない。


「毎朝家まで起こしにきたり、弁当を毎日作ってきたり、朝一にメールしてきて、夜寝る前におやすみメールを送ってきたりする所が重い」


「わーお、そこまで重かったんだ」


 彼女は唇をすぼめ、手の平を合わせて、白魚のような指先をパタパタと合わせる。怜が重いという事は知っていても、俺が彼女とどのような交際関係にあったかは知らなかったらしく、南は目を丸くする。


「そいつは中々だね。全校集会での告白といい、愛の深さが窺えるよ」


 呆れ半分、感心半分といった様子で、彼女は肩を落とした。その言葉に俺も頷く。


「ほんとに好きだって言ってくれるのは嬉しいんだがなぁ」


 怜は美人だ。成績もいいし、優しく気も利く。


 だが重い。


「あそこまで束縛されちゃあ付き合うのは無理だ」


「だよね」


 怜の熱い想いを知りながら、俺はそれに答えることが出来ない。彼女が求めるだけの物を俺は彼女に与える事が出来ない。

 

 どうにも不甲斐ない。


 行き場のない想いを胸に、俺は机に頬杖を突いた。


毎日投稿を目標に頑張っていきます。

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