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波乱の教室と思わぬ再開

 体育館、怒り狂う群衆から命辛々逃げ出した俺は今、担任の先生と共に教室の前まで来ていた。


「転校早々人気ものだな」


 俺をからかうようにニヤリと笑い、そんな事を言う先生に思わず肩を竦める。


「こんな形での人気者なんて誰も求めてませんよ」


「それはそうかもな」


 先生は「かっかっか」と快活そうに声を上げ笑う。しかし、新生活をぐちゃぐちゃにされた俺としては、怜の告白はたまったものではなかった。


「ま、それはそれとして、これから頑張れよ。うちのクラスの奴らは中々刺激的な奴らが多いからな」


 これからの学校生活を想い、憂い顔をしていた俺に、先生は薄くなった頭を撫でながら言う。刺激的とは? その言葉に首を傾げる俺を横目で見て、先生は薄笑いを浮かべ同時に教室のドアを引いた。

 

「「「おう!歓迎するぜ!バカ野郎!」」」


 先生の後についていくようにして教室に入った俺を待っていたのは、腹に響く野太い声と坊主頭の男たち。彼等はなぜか肩にバットを担ぎ、一様に顎を突き出している。


「ちょっと今日は早退します」


 反射的に先生にそう告げ、その場を後にしようとする俺。しかし、それを担任は許してくれない。


「まあまあ。今はこんなんだけど話してみれば意外と悪い奴らじゃないからさ」


「どこが悪い奴らじゃないんですか? ほぼ筋の者ですよね、あれ」


「いーや。あれは野球部だ。そして、全員がそうな訳じゃない。よく見てみろよ。呆れて苦笑いしてる奴とか、興味なさげに本読んでる奴とかもいるだろ?」


 彼の言葉通り、確かに全員が全員坊主頭で、バットを担いでいる訳ではなかった。しかし、それとこれとは別問題だ。


「俺、上手くやっていけるとは思えないんですが」


「ま、やってみてダメだったら俺を頼れ。放課後のお茶くらいには付き合ってやるさ」


 不安気にそう呟いた俺の背を勢いよく叩きながら、無責任にも担任はそう言い放った。楽観的過ぎる彼に思わずため息を吐く。


「さ、ルーキーの登場だ。挨拶しろよ」


 半ば引きずるようにして、俺を教卓に立たせた先生はそう言いながら、俺にチョークを握らせる。それを使って俺は黒板に大きく『中村智己』と書いた。


「先ほど集会でご紹介いただいた通り、僕の名前は中村智己と言います。先に行っておくと、怜とは中学時代付き合っていました。けれど、もう別れてます。それだけは忘れないでください。あと、何でもいいのでどんどん話しかけてくれると嬉しいです。これからよろしくお願いします」


 そう言って頭を下げた俺に、まばらな拍手が送られる。それは主に女性陣のもので、未だに坊主頭の連中は鋭い視線を向けてきていた。


「ま、時間ないし、聞きたい事あったら各々で聞いてくれ。あ、席は鷹山の隣で」


 ひらっと手を振り、いい加減な事を言って教室を出て行った担任をジト目で睨みながら、俺は指定された席へ向かう。突き刺さる視線が痛い。完全に教室内の異物と化した俺は、居心地の悪さを覚えながらなんとか自分の席にたどり着き、椅子に座った。

 ひとまず衆目の監視から逃れ、ほっと一息をつく俺。

 しかし、運命は非情だ。怜というあまりにも重すぎる元カノとの再会イベントを終えた俺に、更なる試練を課すのだから。


「ども、おひさ~」


  その声に俺は思わず体を強張らせる。


「隣の席の鷹山南だよ。これからもよろしくね」


 そう言って10年来の幼馴染は、ふふっと悪戯っぽく笑った。


毎日投稿を目標に頑張って行きます。

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