俺は彼女を受け入れない
「智己さん! ずっとあなたの事が好きでした!」
勢いよくそう叫び、体育館にて居並ぶモブたちに混じった天野怜は、頬を赤く染めそう言った。
ざわめく体育館。戸惑う教師陣。その只中にいた俺は壇上で一人肩を落とし、ため息を吐いた。なぜ自分の転校初日にこんな面倒な思いをしなければならないのかと。
少し潤んだヘーゼルの瞳。白皙の頬に色づくピンク。小刻みに震えた手。小動物らしい愛らしさとは裏腹に、煌めく腰まで伸びた純黒の髪。触れがたい怜悧な美貌と親しみやすい可愛らしさを同居させた彼女は、10人いれば12人は振り返る美少女であった。
しかし、
「俺は怜の想いに応えるつもりはない!」
俺ははっきりとそう答える。それと同時に、そのやりとりを聞いていた怜の親衛隊たちからヤジが飛んだ。
「なんで付き合わねぇんだ!」
「怜ちゃんがかわいそうだろ!」
「このリア充が! 爆発しろ」
そして、彼等の代表者である怜も声を上げた。
「どうしてですか!!」
その双眸は先ほどに増して潤み、今にも泣きだしそうだ。
しかし、彼女に向かって俺は無情にも真実を告げる。
「怜は重いんだよ」
まるで糸が切れた操り人形のようにその場で崩れ落ちる怜。
友人らしき少女は慌てて、彼女の体を抱き留める。その頬には一筋の涙が流れていた。
それを群衆が目にした瞬間、先ほどまでのヤジが怒号となって俺を襲う。
中には今にも殴りかかろうとするものさえいた。
あまりの迫力、熱量に俺の足が思わず竦む。「今すぐにここから逃げ出せ」と本能が警鐘を鳴らしていた。
しかし、それでも俺は彼女の告白は受けない。