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〜12通知目・夢と通知〜


 〜12通知目〜


 真っ暗で何もない空間。その中で少し離れた場所、何か小さな淡い光が浮かんでいる。俺はその正体が気になって、恐る恐るそれに近寄っていく。

 1メートルくらいの距離まで近付いて、俺はそれが何かをようやく理解する。

 俺が事故現場で拾った小さな透き通った石、それが浮かんで光を放っていたのだった。

 俺は不思議に思いながら、少し躊躇ためらいつつもゆっくりとそれに手を伸ばす。30センチ、15センチ、10センチ、5センチ、そしてその指先が触れようとしたその瞬間。

 石はまばゆい光を放ち、俺は思わず目を閉じる。すると前と同じ声が聞こえてきた。

 「悠くん…お願い、僕を……」

 僕を…なんだ?どうすれば良いんだ?

 …ダメだ、また声がまた遠のく…


 気がつけば周りは明るい部屋。そこは幾度となく見て、見慣れすぎたベッドの上だった。また似たような夢か…

 前に見たのは授業中だった…でも今回大きく違ったのは、その夢に例の石が出てきた事だ。前回はそれを拾う前だったから、出て来なかったのか?

 そうだ、石だ。

 俺は慌てて飛び起き、机の上に置いていた石へと駆け寄って──と言ってもそれはベッドから離れているわけではないが──確認をする。石はちゃんと置いたままの場所にあり、依然としてそれは注視しないと判らないくらいの光を放っているままだった。

 「この石は、一体なんなんだ…」

 そう俺が呟くや否や、背後…ベッドの上で充電器に繋がっているスマホから新しい何かの受信を知らせる音が響く。どうせカズとかレンとかからの通知だろうと思い、少し面倒だがスマホを手に取り、画面を見る…と、

 Kアラート[その石を持ち、学校へ通ってください。]

 うげ、と一瞬声に出しそうになったがそれもすぐに引っ込んでしまった。

 なぜなら…

 「この通知、画像が付いてる…?」

 そう、いつものようにアラートのアイコンと本文に加えて画像のプレビューが通知ウィンドウの右にくっ付いていた。

 確認しても、多分大丈夫だよな…?ウィンドウが消えるまで数秒の自問自答の後、通知欄を開く。少し待ってみるも、その通知が消える様子はない。まるで添付されたその画像を俺に見てもらうまで待っているようだった。

 幸い…かは分からないが、寝起きのボンヤリした俺の頭もその通知に覚まされてハッキリと物事を考えられる状態だ。

 軽く深呼吸、思案、結論。事実この不思議な通知には俺は複数回助けられてきている。つまり現段階では十分信頼に足る。恐らく、開いても大丈夫だろう。俺はそっと通知を押す…すると画面に表示されたのは、スマホのアルバムアプリの画面だった。

 かと言って普通に開いただけではなく、なにやら先ほどの通知に付いていた画像が勝手に保存されて開かれたようだった。俺にはその画像が何なのかすぐに判った。その理由は至ってシンプルだった。

 「パズクリのガチャ画面…だよな」

 見慣れたそれだったが、よく見ると少し疑問に思う部分があった。

 「ユーザー名…俺のじゃ、ないな…」

 普通に考えれば当たり前ではあるが、そのスクリーンショットの端に映っていた名前欄の表記は普段俺が使うハンドルネームの『フォクサー』ではなく、『やたみさん』となっていた。身の回りで思い当たる中、そのプレイヤー名を使う人物はいなかったはずだ。

 「…待てよ、となると通知を送ってきているのはこの『やたみさん』って人なのか?」

 状況として、そう考えるしかなかった。この『やたみさん』というプレイヤーが俺に通知を送っている…?しかし何の為に?俺の危ない場面を助けるためだけであれば、武道場へ行く時の”遠回り”な指示も要らないはずだ。

 俺が危ない目に遭う事を予め知っていて、俺を助けているのも不可解だ。そんな”予言”みたいな話…というか、俺をこうして助けているのには『やたみさん』にも得があるんだろうが…

 そしてホーム画面ではなく、ガチャの画面であるという事。それも疑問だが…


 と色々思考を巡らせていたその時、ふと思った。この画像をトモに送ってみてはどうだろうか。

 もしかしたら、新聞部のネットワークを使えばこのユーザー名について何か分かる事があるかもしれない。

 俺はメッセージアプリを起動し、トモに宛てて文章を打ち込んだ。

 [おはよう、狐塚だ。ちょっと見て欲しい画像があってさ、今大丈夫か?]

 数秒、既読、また数秒、そして返信。

 [おはようございます、熊耳です!例の事故に関係した事ですか?もちろん構いませんよ!]

 返信、速すぎるだろ…俺は更にメッセージを打ち込む。

 [いいや、それとは多分関係ないと思うんだけどさ。友達からパズクリのスクショが送られてきたんだけど誰のか判らなくて、もしかしたら新聞部のトモだったら何か分かるんじゃないかって思ってさ。]

 少し長くなったが簡潔に、かつ細かい部分はボカして説明をしたつもりだ。新聞部の事を入れた理由は、それで向こうから自慢げに乗ってくれるかと思ったからだ。そしてまたすぐに返信が来る。

 [ボクで良ければ、全力でお手伝いしますよ!まぁ例の事故と関係している可能性も完全にゼロってわけではありませんからね!]

 思った通り、やはり話が早かった。俺はまた続ける。

 [それじゃあ、この画像だからよろしく頼むぜ。]

 俺はそう打ち込んで送信し、そのままさっきの画像もあわせて送る。ほぼ直後、今度は比較的短文で返ってくる。

 [了解です、ボクに任せといてください!]

 よし、これでオーケーだ。


 …と、その時だった。

 「兄ちゃんー!そろそろ出ないといけないんじゃないのー?」

 部屋の外からソラの声が飛んできた。やべ、めちゃくちゃ忘れてた。慌ててスマホの時刻表示に目を遣ると…

 「うっわ、もう8時前じゃん…!」

 俺は急いで着替えて、机の端に置いていたブロック状の栄養調整食品を1箱ポケットに突っ込む。

 「ごめん、俺このまま出るから!」

 部屋を出て、リビングにそう声を投げかけて俺は家を飛び出した。


 例の”石”を机の上に忘れたままで。




 〜13通知目に続く〜

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