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鋼と奇跡のロストレリクス  作者: 小蒲まゆ
3/9

002.0夜明-2

『そんなにヌルヌルになって......エリンちゃんとナニしてたの......?』


「違う!誤解だ!というか俺が被害者だ!」


 両手を全力で振って否定するものだから、周囲に粘液が飛び散る。


「なんてね。冗談に決まってるでしょ」


「......ったく...。お前の冗談は冗談で済まないんだからなぁ」


 我に返ったエグサは胸を撫で下ろし一息つく

 エグサに背後から声を掛けた少女の名は長波マソラ。少しウェーブのかかったセミロングの髪を持ち、タンクトップにジーンズといったラフな服装。赤いメガネがアクセントになっている。エリンより年下だが、身長も胸もマソラのほうが上だ。

 そして彼女もまたスキル所有者である。


 [嘘を吐く]スキル 彼女の嘘に騙されない者は(たぶん)いない。


 ちょっとした冗談からとんでもない大嘘まで、どんな内容でも相手に本気にさせてしまうのだから、敵に回したら非常に厄介であろう。


「で、用は何だ?急じゃなければ俺は早く着替えたいんだが...」


「急って言えば急だよ。だって次のロストレリクスの反応があったんだから」


エグサの態度が一変する。


「なんだって!?つい昨日1つ手に入れたばかりだし、名前だってさっき決めたんだぞ!」


「あ~、名前のことは置いといて。まぁ、こういうこともあるんじゃない?やったね、仕事が増えるよ」


「相応の報酬があるとは限らないけどな...。」


 6個中3個はハズレだったし。


「まあいい、前回からのスパンがやけに短いが作戦会ぎ......」


ギュルルオオォォォォ......


 エグサの腹の虫が盛大に鳴く。 


「......昼飯と同時進行でやろうか......」


「いいんじゃないの。大体、いつもおやつ持ち込みまくって、まともにしたこと無いじゃん」


(8割くらいはエリンだけどな!)

「じゃあ飯の準備よろしくな。出来れば早めで」


「うん。待っててね~」


 マソラは彼女らしい間延びした返事をして次の仕事へと向かっていった。


 *


 船内には居住区域として、4人分の個室、食堂、いくつかの余剰部屋が存在する。無名の海賊が乗るような古くさい木造船とはほど遠い、頑丈で快適な生活空間が確保されている。エグサの個室には、整頓された机やベッド、季節ごとにしきられたクローゼット、更にはシャワー室まであり、上等な客船を思わせる。


 エグサは部屋へ戻ると、シャワーで粘液を念入りに洗い流し、寝巻きから活動着へと着替えた。

 暑いとも感じる季節になってきたが、ジャケットを羽織るスタイルは外せない。というか見てる側も暑い。


 「カッコイイ」と思ったものは何でも取り入れ、ブレることは無い。それがエグサの進む道とでも言えるようなものだ。

 その悪く言えば性癖により、脇差と回転式拳銃(リボルバー)が主装備という「海賊にほぼマッチしないし装備同士も不協和音を発してる」とのマソラからの酷評を受けたスタイルをも、全く変えようとはしていない。


 急ぎで昼食をつくってもらっているとはいえ、30分はかかるだろう。エグサは空腹を少しでも凌ぐために、昨晩寝落ちして食べていなかった夜食を探す。



「無い......」


 机に置いておいたはずのパンが無い。食べていないものが無くなる訳がないのは子供でもよく知っている。(子供のほうが敏感か)

 そしてすぐさま犯人像がエグサの脳内に思い浮かぶ。


「エリンか......」


 すぐさま走り出して、エリンに問い詰めたかった。しかし、空腹というものは残酷だ。普段より身体は軽くなっているはずなのに、足は枷をはめたように重い。そして、今エリンがいるであろうボイラー室へ行くには、ここから幾つもの階段と廊下を経なければならない。


 食べ物の恨みは重いという台詞をエリンやマソラから何度か聞いたことがあったが、エグサはあまり理解しようとしてこなかった。だが、今は痛いほどよくわかる。


 (他人が思うよりかなり)重い足取りで、エリンの作業場所であるボイラー室へ向かい出す。今朝寝過ごして朝食を食べ損ねたことを後悔しながら。 


 *


 「エリン!!」


 ボイラー室の重い扉を勢い良く開け、大声でエリンに問い詰めた。


 と、本人は思っていたが、実際はヨロヨロと扉が少しづつ開き「え...り...n...」と不気味な呻き声が流れ込んでいたのであった。


「ど、どど、どうしたの!?」


 突然の静かな来訪者に、エリンは驚くような慌てるような声をあげる。 


 彼女は先程の服装とは違い、赤いショートキャミソールにミニスカート、足下はニーハイソックスとブーツを履き、ブカブカな白衣を羽織っている。髪はツインテールにまとめ直されてた。これが普段の作業着なのだが、幼い身体に対して大胆なものだ。


 と、こんなことは今のエグサには関係ない。

 ただ、


「昨晩、俺の夜食食べたのお前だろ!」


と問うだけだ。(実際は「しゃくば......お...やしょ...たべ.........だろ」と聴こえる)


「あぁ、夜食ね。......シラナイヨ......」


 長い付き合いからの勘でエグサの言葉を理解したエリン。そして今は忙しいからと言わんばかりに、逃げるように作業に戻る。


「おま...しらな...こと...いだろ......とり...なん...せろぉ...」


 亡霊って見たことないけど居たらこんな感じなんだろうな、と思うエリンは、面倒を回避するかのように、腹ペコな亡霊に与える食料エサを探し始めた。


「はい、これ。とりあえずこれでも食べといて」


 と、ジト目でいかにも不満そうにエグサにパンを手渡す。


「あ...がと...」


 恵みのパンを一気に頬張るエグサ。それこそが昨晩失った夜食だとも気づかずに。

 気づいたとしても、この窮地から救われたことでいっぱいで、エリンを責めることなど無かっただろう。


(食べ物のちからってすごい...)


 自分で原因をつくっておいて自分で解決させたエリンは、謎の感慨にふけていた。

こんにちは、小蒲まゆ です。


 こちらは、能力バトルとコメディ色の小説となります。エロ要素はありません。


 かなり短いですが、話の関係で一旦ここで区切ります。次話は早めになりそうです。


 ずっと腹ペコでしたね、主人公


 テンプレになりますが、誤字・脱字、単語の誤用等あればご指摘ください。


では、また次回で!!

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