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ローゼリアン城の朝の会

第四章


「…………オマエ………ニンゲン……カ?」

赤い目はコリンの周りを目で追えないほど素早く回り始める。確実な死が近づいてくる。じりじりとじりじりと…………。

「ワタシ……オマエ……コロサナケレバ…………」

しかしこれでもコリンはれっきとした見習い魔導師なのだ、ここでなにも抵抗しないで殺されるなんて真っ平ごめんだ。

一か八かで……

「ふぁいあ・らいと!」

ぽうっと蝋燭の小さな炎がコリンの頭上に舞い上がる。そしてコリンは目の前にいるものの姿を見た。漆黒の巨大なクモが小さなコリンを赤い目で見下ろしている。

「ヒヨワ……ダナ…………」

炎は弱く何も焼くことはできない、使える魔法はこれだけである。つまり、もうコリンには抵抗手段が無い……。

こういう時は……!


「うああああああああぁぁーーーーーー!!!」


逃げる、それしかない‼とにかく部屋へ真っ直ぐ走るのみ、走れ、走れ、走れ、走れ、走れ!と震える自分の足に言い聞かせる。

「ムダダ…………」

クモの鋭い足が床をバキバキと破壊しながら走るコリンに迫る。

ひ弱な子供がいくら全力で走ろうと巨大なクモにとっては無駄であった、赤い目は走るコリンの目の前に再度現れる。

「サラバダ…………」


もう、駄目だ………………。


その時だった、

「どきな……!」


野太い声が響く

見えたのはふわりと広がったメイド服のスカートだった。そして巨大なクモの体が一瞬のうちに砕け散る。ギイイイィィイイィ!と鳴きクモは大量の血を流す、鋭い足もひしゃげ無惨な姿で床に崩れ、だくだくと血の円はどんどん広がってゆく。そしてあっという間にクモの赤い目は光を失った。


メイド服はこちらに勢いよく振り向く

「ちょっとあんた、こんな遅くにウロチョロしてんじゃないわヨ!ここは夜になると闇の魔獣が活動するの、あんたみたいなガキすぐにオダブツなんだからネ!」


メイド服を来ているのだが、ガタイが良すぎる体と野太い声がコリンの小さな炎に照され、怖さと迫力が増す。そしてある考えが浮かんだ


もしかしてこの人はオカマ……なのか?


コリンは張りつめた緊張の糸がプツンと切れだらりと脱力してしまう。


「え!?チョットあんた大丈夫?ネェ!」


コリンの意識が遠のいていった…………


____________________


「コリン様、朝ですよ、起きてください!コリン様?コリン様!」


窓からこぼれる朝の光の中に


「………うわっふあぁっ!?あ、ルルさん……おはようございます……。」


「コリン様、おはようございます……どうされました?うなされていたようですが……」


「あぁ、……だ、大丈夫です少し悪い夢を見ただけですから。」


「…………そうですか、何かありましたらすぐにお申し付けくださいね。ホットミルクでもお持ちしましょうか?」


「じゃあ、お願いします……。」


「承知しました、少々お待ち下さいね。」


外からチュン、チュンと鳥のささやきが聞こえてくる。気がつくとコリンはベットの上で眠っていたらしい……。昨日何があったのか記憶が曖昧なのでコリンは昨日の記憶を掘り起こしてみる……。

確か、僕は巨大なクモに追いかけられて……そしてオカマ……?の人に助けられて気を失った……はず……。


もしかして、あれはただの夢……?

ドタドタとかけてくる音が聞こえ、ドアがノックされる。


「コリン君!ホットミルク持ってきたよー!!」

レベッカの声だ、昨日の夜のことをなにか知っているかもしれない。


「あれ、ルルさんは?」


「ルル様は調理場が忙しくなっちゃったみたい。今は手が離せないって!」


「そうなんだ、あ、ありがとう……ところでレベッカさん昨日の夜、変なことが起こらなかった……?」


「変なこと?……あぁ、影グモのことね!それならデイジーさんがボッコボコにやっつけたから大丈夫だよー!それより、はい!ホットミルク」


では、やはり昨日の出来事は夢じゃなかったと言うことだ……。影グモ……?聞いたことの無い名前のクモだ。


コリンはレベッカからホットミルクを受け取りふーふーしてからコクリと一口


「……おいしい。」

ホットミルクの優しい甘さと温かさに包まれた。

ホットミルクを飲み終え、パジャマから魔導師のローブに着替える。


「じゃあレベッカは先に行くよ!すぐに大広間に来てね!」


廊下に出た後クモに遭遇した辺りを見てみたが血の跡などは見つからなかった。

眠い目をこすりながらコリンは迷いながらも大広間へ向かった。


「コリン、昨日はよく眠れたかしら……?」


大広間に到着するとアカバネは玉座のようないすにゆったりと座りあくびをしている。寝起きでまだ眠そうだ。洋服は白のワンピースで長い黒髪もツインテールではなくゆったりとした一本結びである。冷たい瞳はコリンを見下ろし微笑を含ませている。


昨日の姿と全く雰囲気が違うのでコリンは一瞬誰だか分からなかった。


「…お、おはようございます。…えっと、アカバネ様……ですか?」


「ふふ…………まぁ、分からないのも無理ないわね…………。」


「改めて自己紹介するわ、わたくしは紅の魔女アカバネ・ローゼリアン この城の主ですわ。」


「わたくしは コリン・フェリアス……今日からあなたをこの城の召し使いとして歓迎いたしますわ…………。みなさんよろしいですね?」


「異論ありません。アカバネ様の意のままに……」


ルルが代表として答える。


「では、朝の会は終わりですわ。すぐに朝食の準備を…………」


その時、大広間のドアが勢いよく開く。レベッカが満面の笑みで入ってくる。


「アカバネ様ー!準備出来ました!コリン君も食堂行こー!」


レベッカに強引に引っ張られコリンは連れていかれた。見た目は華奢なレベッカだが、コリンを軽々と持ち上げて走る。


朝食を食べ終わると部屋に戻り歯をみがいた。

コンコンと扉がノックされる。


「失礼します、早速ですがコリン様、この服に着替えてください。」


ルルが差し出したのは燕尾服だった。


「…………!」


「急いでコリン様のサイズに作り直しました、どうでしょうか?」


早速着てみるとサイズはぴったりだった。動きやすくてなんだかかっこいい。


「すごい、ぴったりだ!ありがとう、ルルさん!」


「良かった……喜んでもらえて嬉しいです。」


ルルは安堵の表情で微笑む。窓から差し込む光がルルの美しさを引き立たせる。


「でも、どうやって僕のサイズを……?」


「ふふっ、乙女の勘です!さぁ、今日は忙しくなりますよ!」


こうしてコリンの1日は始まった。


































































読んでくださりありがとうございました!見習い魔導師 兼 召し使いのコリンの物語はまだまだ続きます!

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