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ローゼリアン城の夜

第三章


「ぼ、僕がこの城の召し使い……?」


「そうですわ、あなたには明日から召し使いとして働いてもらいますのよ。……あぁ、あなたのお兄様にはお許しをもらっておりますわ、何か問題があって?」


い、いえ……


「僕はてっきり何かの儀式の生け贄にされたりするのかと思っていました………………。」


言うことと思っていることが逆!


「…………クスクス、わたくしはそんなつまらないことしませんわよ?どうするのです?ここで死ぬまでわたくしのために働くか、お兄様のところへ自力で帰るかですわね~フフフッ」


アカバネは楽しそうに選択肢を述べる


「…………」


「ですが、コリン様……この城の周りの森には人間では太刀打ちできないような凶悪な魔物達が沢山いるのです。自力で帰るのはコリン様にはとても危険すぎます……」


ルルは心配そうに言う。


「ルルの言うとおりです、コリン様が帰る選択はあまりにも危険、ここで働くのがよい判断だと…………」

骸骨頭も同意見のようだ。


「コリン君、ここはとぉーーっても良いところだよ!もし外に出たらコリン君すぐ死んじゃう……!そんなの絶対にやだよぉ……!」


レベッカはコリンの上着の裾を強く掴んで一生懸命引き留めようとする。


「それに、あなたはお兄様に人質として渡されたのです。コリン、あなたにはもう帰る場所はきっとありませんわよ…………?」


帰れないのは百パーセント確定したようだ。こうなれば覚悟を決める。


「………よ…よろしくお願いします……」

ペコリとお辞儀をするとふわりと明るい茶髪が弾む。


「はい、よろしくお願いします。コリン様」

ルルがにこりと微笑み和風メイド服のスカートの裾をつまむ。

「わーーーーーい!!コリン君!よろしくね!」

レベッカはピョコピョコと嬉しそうにジャンプする。

「よろしくお願いします。コリン様」

骸骨頭は手を胸にあててお辞儀する。


こうして見習い魔導師のコリンは見習い召し使いコリンになった。


「……そういえばコリン・フェリアス、あなた夕食お食べになりましたか?」


「あっ、そういえば……まだ食べていません。」


大きく「ぐううっ」とお腹がなってしまった。恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまった……。


「コリン様、支度は出来ております。ひとまず食堂へ参りましょう。」


大広間から出て食堂へ向かう。先が見えないほどの長い廊下を歩く。


「コリン君!心配しなくてダイジョーブ!!この城のご飯はほっぺたが落ちちゃうくらいにおいし~いから!このレベッカのお墨付きだよ!」


レベッカは目をキラッキラとさせこの城のご飯の素晴らしさを語る。コリンは相づちをうちながら歩く。

やっと食堂の大きな扉の前に着いた、扉を開くとそこには、長いテーブルに置かれた豪華な料理がずらり。


「……わ…………」

驚きで言葉を失ってしまった。


「コリン様のお口に合うように手配しておきました。さあどうぞお好きなだけお食べになられてください。」


ちなみにコリンの好物はミートスパゲッティである。もちろんテーブルにはこんもりとミートスパゲッティが盛られてある。……な、何故僕の好物が……?


……まあ、それは置いといて席につく。


「ほ、ホントに食べていいんですか?……」


「はい!明日は忙しくなりますのでたっぷりと食べてくださいね!」


「ゴクリ……い、いただきます!」


たっぷりと盛り付けられたミートスパゲッティを口に運ぶ。程よい温かさでミートソースの甘みが口の中にふわりと広がった。


「お、おいしい……!」


「私達は人間の料理を作ったことがあまりなかったのですが……お口にあって良かったです。」


ルルは安堵の表情を浮かべほっとしている。コリンは予想以上に空腹だったらしく料理をお腹いっぱいに食べた。

思うと今までこんなにおいしい料理をたくさん食べたことはなかった。しかし、コリンは何か違和感を感じた。コリン以外は食事をしていないのだ。

「あの、皆さんは食べないのですか?」


「私達はもう頂きましたのでご心配なく。」

骸骨頭が答える。


「あぁー、そうですか…………。」


「……質問よろしいかしら?」


優雅に紅茶を飲んでいたアカバネがふいにコリンに話しかけた。


「ぴゃっ!?あ……ど、どうぞ。」


「……あなたとあなたのお兄様は……見たところ本当の兄弟では無いですわよね」


「…………はい、その通りです。僕は兄のお父様に拾われた捨て子でした……。何故僕を拾ったのか理由は分からないのですが………………。」


「…………そう……。」


アカバネは軽く相づちをうつ。


「アカバネ様、僕からも質問していいですか?」


「いいですわよ…」


「アカバネ様は何故僕を人質として選んだのですか?」


「…………知りたいの?」


「……はい……。」


「…クス…いずれ分かるときが来るわ……。その時を待ちなさい。」


「………………?」

コリンはアカバネが言うことの意味を考える。その時が来たら話してくれるということだろう。


「ご馳走さまでした!」


食べ終わったあとはお風呂に入ることになった。


案の定、豪華な広い大浴場に着いた。床が全て大理石で出来ているらしい。入っているのはコリン一人のはずなのだが、他の何かの気配がしてい

た………………。たまに風を切るような音が聞こえてくる……。


「だ、誰かいるんですか…………?」


返事はないし姿も見えない……。怖いのですぐに逃げるように浴場から出た。と、そこには……


「わふっ!?ル、ルルさん!?どうしてここに?」

「コリン様のお着替えをお持ちしました。…………どうされました?お風呂に入っていたのに顔が真っ青ですよ?」

どうやらルルは何も知らないようだ…………。


「い、いえ……大丈夫です。」


「そうですか…………何かあったらすぐにお申し付けて下さいね。」

ルルは心配そうに言う。


その前にコリンは今素っ裸で立っているのだが……。ルルは全く気にしていないようだ。


「は、はい!大丈夫です!大丈夫ですから!」


ルルをぐいぐいと押してなんとか更衣室から追い出すことに成功した。

コリンは用意された洋服に着替えた、少しサイズが大きめであったが気にしない。


浴場をあとにしてコリンは大広間に集まった。


「これは毎日欠かさず行っている夜の会です。」

ルルが小声で説明する。


「では、本日の振り返りを…………わたくしは人間の断罪特殊部隊の総司令官にお会いしましたわ。わたくしは七つの大罪人を排除することに協力することにいたしました。」


「……では、わたくしはもう寝ますわ。久しぶりに外に出て疲れてしまいましたわ………ふあぁ…。」


「お疲れさまでした~アカバネ様!では、寝室に行きましょぉーー!皆様!おやすみなさーーい!!」


アカバネはレベッカとともに大きな階段を登っていった。


その後、

「ではコリン様、お部屋の準備は整っておりますので今日はお休みになってください。お部屋にご案内します。」


「あ、ありがとうございます。ルルさん」


ルルについていくと人気のない長い廊下に差し掛かった、薄暗くて気味が悪い。右から3番目の扉の前で立ち止まった。


「コリン様、ここがあなたのお部屋です。お好きに使って下さい。」


ガチャリとかなり年期のはいった音が響き扉が開いた、中にはベットやクローゼットなどの家具がランプの暖色に照され寂しく置かれていた。


一人でここに住んでいられるか不安でならない……。


「トイレはこの部屋から左にまっすぐにいけば見つかります。詳細は明日説明いたします。集合時間は午前9時です。」


「は、はい!分かりました!ありがとうございます。」


「あぁ、それと夜に出歩く際は十分に気を付けてくださいね。」


「…………?それはどういう……」


「いえ、ご心配なさらず……では、おやすみなさいコリン様。」


「お……おやすみなさい。」


コツコツと靴音が去っていく。コリンは一人でこの薄気味悪い部屋に残されてしまった。現在午前12時、起床は9時。さっさとパジャマに着替えて寝てしまおう…………。


少し大きめのパジャマを身に付けたコリンは

綺麗に整頓されたベットにぽすんとダイブする。しばし目を閉じてみるが全く眠れそうにない。それはそうだ、今日はいろんな事がありすぎてまだこの状況を信じられない…………………………。


少し振り返ってみよう…………

断罪特殊部隊の総司令官のカルロスは悪魔と契約した大罪人達の手先と思われる集団を殲滅するために集団のアジトに駆けつけたのだ、しかしそこにいたのは、千切れた肉と大量の血液、それが散らばるなかで優雅に舞う紅の魔女アカバネ・ローゼリアンだけだった。

兄カルロスはアカバネ・ローゼリアンを大罪人の殲滅の協力料としてたまたまついてきていたはずの僕が人質となってしまったのだ。


そして今はこの城の召し使い………………。

どうにもよく分からない展開になっている…………………………。


「トイレ…………行きたい」


本当はあんな薄気味悪い廊下を一人で歩くなんて考えられない。そして先程のルルの言葉を考えると…………。しかし初日からオネショなんてしてしまったら…………。


コリンはのほっぺをぱちんっと張って自分を勇気づけた。ガチャリと扉が開く音が暗闇にこだまする。トイレは左にまっすぐに歩くだけ、……よし、行ける!!


消灯した廊下はほぼほぼ暗闇に包まれている、壁づたいに歩みをすすめる。

「つ、着いた!!」

早く済ませて帰ろうと思ったとき、浴場のときと同じ風を切る音が聞こえてきた。

「…………この音………また……………」

耳をすますが何も聞こえてこない、気のせいだったらしい。


用を済ませ足早に部屋へ帰る途中、何か大きな気配に囲まれた。恐怖で足がすくむ。


「……………………!?」


暗闇に見えたのは赤く輝く四つの目だった…………。



















読んでくださりありがとうございました。まだまだ続きます。

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