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異空間王子と妖精少女は王子様のスパイ  作者: 幻想桃瑠
◆◆◆――第一章 姉の部屋から異世界へ半トリップせよ!――◆◆◆
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第三話 偽王子君は良い人

 姉の日記のページをめくって行く。電化製品の取扱説明書を見るように、大まかにしか確認していないが、大きな文庫本ほどある日記の全ページに、姉の文字が誇らしげに威張っているのが印象的だった。


「なになに……?」


【この日記は、いずれ私の異世界を譲ろうと思っている蜜柑に捧げようと思う】


 『私の異世界』の下にぐりぐりと筆圧強く赤線が引かれてある。

 私の異世界……。姉は魔王なのか。

 いや、姉の傍若無人ぶりは魔王でなくてもそれと同じようなものだ。

 そこはかとなく嫌な予感がするが、次のページを捲った。


【まずは、余弦国の余弦城だ】


 聞いたことのない名前だ。


「余弦国の余弦城……。本当に異世界なのか……」


 次の瞬間、パッと異空間の映像が違う場所に切り替わった。ギョッとしたが、それ以上何も起きないので、私は姉の日記に目を落とした。


「なになに……?」


【私のその時の気持ちは、『蜜柑にしか見えないインク』で『壁』に書いておいた】


 私にしか見えないインクか。

 どうやら、異世界とは魔法のような不思議なことができる世界らしい。


 私は、日記を床に置いて、異空間の映像を見つめた。

 そこは、王宮か、宮殿か、はたまたお城なのか。

 異空間の中には、瀟洒な洋風の内装が映っていた。

 シャンデリアが強い光できらめいている。


「わぁ……! これが夢にまで見たお城なのか……!」


 私は、異空間に顔を近づけた。


『蜜柑ちゃん?』


 突然、異空間から声が聞こえた。映像はお城の内部が映っているが。


「あれ? 私の名前を知っているってことは、もしかして、偽王子……君?」

『はいはい? なにかな?』

「お姉ちゃんって、近々異世界で結婚するそうだけど、その相手って偽王子……君なの?」

『いや……実はフラれてしまって……』

「偽王子君ってもしかして異空間だからフラれたの?」

『あ……ははは……はは…………』


 急に、詐欺師かもしれないのに、偽王子君に親近感が湧いてきた。何故だろう。ずっと前から友達だったようなこの感覚は。

 

「ご、ゴメン……! 傷口を広げてしまったよね……!? もっとこう、聞き方が……」

『だいじょうぶだよ。蜜柑ちゃんらしくていいんじゃないかな?』


 もしかすると、偽王子君は滅茶苦茶良い人なのか……?

 異空間ではあるけど……。


『なんていうか、檸檬さんは美人で変わった人でしたけど』


 た、確かに。姉は美人だ。

 かなり変わった人であるから、残念系の美人なのだが。


『蜜柑ちゃんは飾らないし素直で良い子なのが魅力だね……!』

「えっ……!」


 いきなり私の存在を偽王子君が認めてくれたので、私は何も答えられなかった。

 もしかしたら、もしかしたら――。

 偽王子君は、ある意味私の事を受け入れてくれる貴重な存在なのか……!?


『じゃあ、次に俺の異空間の事を説明してあげるね?』

「う、うん!」



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