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異空間王子と妖精少女は王子様のスパイ  作者: 幻想桃瑠
◆◆◆――第二章 四面楚歌の宝玉国の王子様を救出せよ!――◆◆◆
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第十一話 敵か味方か

 アレクシス王子の部屋からドアをすり抜けると、近衛兵がドアの前で寝ずの番をしていた。おかしなことに、近衛兵は彼を不審者扱いしてない。


 ロング・ギャラリーに出ると、男はランプの光を消していた。ここには照明が点いているので必要ないからだろう。十中八九、この男がランプを用意して来たのは、アレクシス王子に部屋に侵入したことを気取られないためだろう。


 私は、念じるがままに異空間を動かしながら男の後をついて行く。


「偽王子君、この人の後をつけている事はバレたりしないよね?」

『大丈夫だよ、蜜柑ちゃんが顔を出してないからバレないよ。向こうからは異空間を上手く消してあるし』

「そっか! なら、安心だね!」


 偽王子君にお墨付きをもらったので、堂々とその男の後をつけて行く。すると、前からメイドがやってきた。そして、怪しいこの男に微笑みかけた。


『ああ、パトリック様! 夜も遅いのに見回りですか? 大変ですね』

『アレクシス殿下のためなら私は何だってするさ』

『そうですね。私も同じ気持ちです……では失礼します』

『ああ』


 パトリックと呼ばれた男とメイドは、そのまま互いに違う方向に歩いて行った。


「あれ……?」


 私は、おかしなことに気づいてしまった。


 パトリックは、アレクシス王子の心配をしている……? ということは、ランプを持ってきたのは、王子様を気遣ってということなのだろうか。


「ちょっと待てよ? パトリックってどこかで聞いたような……?」

『アレクシス様が仰っていたパトリック執事の事じゃないかな』

「流石は、偽王子君だね!」


 私の脳裏にアレクシス王子の声が蘇った。


『唯一会うのは食事を持ってくる者と執事のパトリックだけだ』


「この人が王子様の執事さんなのか!」


 でも、アレクシス王子はこうも言っていた。

 最近は、執事のパトリックも信用できないと。


「これは、調べる価値があるよね、偽王子君!」

『そうだね。もし、パトリック執事が味方なら、王子様の味方が増えることになるもんね』


 そのまま異空間で、パトリック執事の部屋まで追跡した。

 王子様の部屋に比べると、飾り気のない執務室のような部屋だった。灰色一色の絨毯の上には光沢した木の机があって、部屋の隅には艶やかな木の本棚が並んである。そして、部屋の隅には温かそうな木のベッドがあった。

 パトリック執事は、ランプを机の横に置いて嘆息した。そして、ネクタイを緩めると、奥の部屋に消えた。遠くで水音がしている。どうやらシャワーを浴びに行ったようだ。


 隙を見た私は、異空間で部屋の中を物色して回った。机の上には一冊の黒い革の表装の本が置かれてある。


「よいしょ!」


 私は異空間から手を出して、それを開いた。

 開いたページには、手書きの文字が礼儀正しく並んでいた。もしかして、これは日記なのだろうか。


「どことなく達筆のような感じがする。でも、異世界語は私には分からない……。困ったぞ……?」

『「翻訳しろ」と念じると日本語に翻訳されて見えるよ。言葉は通じるようになっているんだけど、文字まではムリのようだね』

「なるほど~! ありがとう、偽王子君!」


 私は、早速「翻訳しろ」と念じてみた。

 すると、異空間に映っていた日記の異世界の文字が日本語の文章に変わる。


 なになに……?


『アレクシス殿下のご健康が優れない。明日になればご快復されるのだろうか……』


 何ページにもわたってアレクシス王子のお体を心配している記述が目についた。

 読むたびに、涙腺が緩みそうになった。


「なんだろ、この目頭が熱くなってきた……くっ!」


 その続きを長々と読んで胸がいっぱいになり、私は目頭を押えた。


 とどのつまり、パトリック執事はアレクシス王子の心からの味方だったのだ。

 ランプを持って行ったのは、王子様を起こさないようにするための配慮だったようだ。

 しつこく流し読みしたが、アレクシス王子を心配する文章が綴られてあった。

 私は日記を閉じて、異空間から手を引っ込めた。


「アレクシス様にお知らせしなきゃ! きっと大喜びするよ!」

『そうだね!』


 私は、アレクシス王子の部屋に飛ぶように念じた。するとアレクシス王子の部屋に異空間の映像が転移した。


「アレクシス様は……と?」


 天蓋付きのベッドの方に歩いて行った。けれども、私はある異変に気づいた。

 アレクシス王子はご無事だった。けれども、毒炭が忽然と消えていたのだ。私が出払っているすきを見て、犯人はしっかりと毒炭を回収したらしい。もしかしたら、パトリック執事が見回った後のスキを狙っていたのかもしれない。


「くそぅ! 犯人を突き止められなかった!」

『そう言えば、あの時のメイドはアレクシス王子の部屋の方向に歩いて行った。もしかしたら、パトリック執事と喋っていたメイドかもしれないね』

「そ、そうか。流石、偽王子君だね!」

『いや、決め付けるのは時期尚早かもしれないよ』


 だとしたら……うーん、次はどこを……。

 そうだ! 厨房だ!


「こうなったら、厨房を見張ろう。そうして、王子様の料理に毒を入れている奴を直接見極めるしかないね!」


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