シーン6
シーン6 混沌について
ベルークにある冒険者の店 2階
審査の前夜(シーン6)
冒険者の店の2階。
ロゼは夜の本番に向けて薬の数、剣の切れ味回復など準備していた。
夜が深くなり、そろそろかと思い始めたとき、カリンが入ってきた。
カリン:「ねぇ、なんで、小悪魔アボロスを殺そうとしたの?」
ロゼ:「ふむ。知らないのか。そうだな、混沌といっても、様々な「形」が存在するしな」
カリン:「混沌?」
ロゼ:「ああ。小悪魔アボロスがここに現す理由の1つだ。混沌は、その場の自然律(物理法則)を歪める存在だからな」
ロゼ:「例えるとーーー投げた石が天へ飛んで行ったり、絵が突然動き始めたりとしても人々は驚かない」
カリン:「・・・・頭に花が咲いているから?」
ロゼ:「咲いてない」
カリン:「ならどうして?」
ロゼ:「ふむ・・・・物が混沌によって人に変わったり、1階に有る椅子が踊りだして、「ヒャッハーーーー!」と叫んだり、そこら辺の猫が突然美人お姉さんに変わったりとしても、人々はまたか、と頭を抱える。何故なら、「混沌のせいだ」と説明できるからだ」
カリン:「・・・・・・・何それ?」
ロゼ:「支離滅裂としか言いようのないこの現象こそ、混沌の本質だ」
カリン:「へ・・・・へぇ・・・」
ロゼ:「そして、その混沌が何らかの原因によって収束すると、”混沌核”が出来、投影体という存在ができる。これは「他の世界」の影が、混沌に通して現したものだ」
カリン:「他の世界?」
ロゼ:「ここで家を思い浮かべてほしい。君はその家の外に居る。家に光を当てるとどうなる?」
カリン:「影ができるけど・・・・」
ロゼ:「そう。この影が混沌を通して映しされるーーーそれを投影というーーー家のそっくりなものが他の世界に写される。それらが生き物だった場合、投影体という総称になる」
カリン:「コピー・・・?」
ロゼ:「近いな。で、そのコピーが消えたとしても、元の家ーーー光を当てられたものは影響が無い。これは、君が家の影を踏んだり、蹴ったりとしても何も変わらないのと同じだ」
カリン:「・・・・えーと、小悪魔アボロスもコピーされてこっちに来た?」
ロゼ:「理論上はな。その投影体はもしかしたら暴れたり、この世界を破壊しようとしたりする。だから、俺は小悪魔アボロスが危険だと思ったんだ」
カリン:「なるほど・・・・。あ。明日の審査も?」
ロゼ:「敵は投影体らしいな。簡単な戦闘だが、どんな奴が出て来るのやら・・・・」
カリン:「ふうん。じゃあ、頑張ってね! そしたら、その金で一緒に食べようよ」
ロゼ:「なかなか難しい注文だな。ま、努力だけはするさ」
なお、カリンの用件は店主の謝罪(金は成り行きでロゼが払うことになった。審査とやらが終わった後で)をした事だった。