そして私は宇宙船を下りた
そして私は宇宙船を下りた。
目の前には階段が垂れている。雲に隠れて終わりは見えない。
耳が痛い。私は相当高いところにいるらしい。
ここは何処だ?少なくとも地球ではない。だからここは何なのだ?
自問自答を繰り返す度、得体の知れない恐怖と不安が首筋をかすめる。
宇宙船の添乗員が私の手首を掴み、階段へとひっぱる。
添乗員は二人。とても背が高く、左右の目の色が違う。オッドアイってやつだろう。
私の態勢を簡潔に説明するとすれば、とても有名なあの写真のようになっている。
右手首を一人に、左手首をもう一に掴まれ、宙に浮いているのだ。
階段を自力で降りずに済んだことを、私は少し喜んでいる。
妻の不倫が発覚したとかで、私の所属するバレー部のコーチは今までに無い位キツい練習を行った。
それは昨日の事で(そもそも今が何時なのか分からないが、お腹の減り具合で)、今日は
今までに無い位キツい筋肉痛を味わう羽目になったのだ。それにしても添乗員さん、すごく
整った顔立ちをしている。黄色っぽい髪と白い肌とオッドアイが映えて、
巷で話題の白人のハーフで超イケメンな俳優に勝るとも劣らない美少年だ。
………………まて
私、ちょっとリラックスしすぎじゃないか?
何が「得体の知れない恐怖と不安が首筋をかすめる」だ?
私、復帰早すぎやしないか?
自分の妙な特性に呆然としている間に、階段から室内へと舞台は変わっていた。
椅子に座るような身振りを添乗員さんはして、私は椅子に座った。
お茶のような飲み物を渡されたので、遠慮なく頂いた。飲んだ後に、なにか盛られてないかとか、
心配をし始めた。うわっ…私の危機感、なさすぎ…?ちなみにとても美味しかった。
ここに至るまで何があったっけ。私は回想にどっぷり浸ることにした。