第6話 続・危険な買物へ行こう
「これどう?」
前回に続き姉弟でデパートに来ている。デパートというよりショッピングモールだが。
「いいんじゃん」
「こっちとどっちがいいと思う?」
「好きにしなよ」
「つれないなぁ」
姉がピンクと赤の服を手にふくれている。
姉の買物に付き合わされた弟はやはり荷物持ちなのであった。前回のこともありテンションも少し低め。面白味も低めだ。
「面白味はなくていいから!!」
ツッコミ入れる元気があるなら姉にちゃんと付き合ってやれよ弟。
「だったら天の声が付き合えよ!!」
天の声はナレーションなので荷物は持てないのである。
「ああ言えばこう言う…。その口閉じられないのか!?」
ナレーションが一切なくなっていいのならば。
「…それは困る」
分かればよし。
「なんで高飛車!?」
この物語りは私の手にかかっていると言っても過言ではない。
「そうですか…」
「よし!これに決めた!」
「まだ買うの!?」
買物は姉のストレス解消法だから。
「ストレスなんて無縁そうな姉貴の!?」
「やだなぁ、しゅーちゃん。会社に行ってればストレスも溜まるよ」
むしろ上司すら影で操っていそうだが。
「操るのか!?」
「操らないって」
笑顔で否定されると本気か嘘かわからないんですがお姉様。
「それは天の声に同意」
「どういう意味よ」
「気にするな姉貴」
会話を一旦中断して姉が服を買ってきた。
二人が歩いていると姉がまた店の前で止まった。しかしそこは女物の店ではない。
「どうした姉貴。ここは男物だ。実は姉貴じゃなくて兄貴だったってオチはいらないからな」
…ちっ…。
「何舌打ちしてんだよ!!やろうとしてたのか!?やめてくれよ!!」
先にバレたネタは使いません。
「…本当に使おうとしてたのか!?姉貴も黙ってないでなんか言えよ!!」
「え〜。別に私が着るのに見てたわけじゃなくて、しゅーちゃんに似合いそうだなぁと思って」
姉が珍しいこと言ってる!?たまに見せる優しさはいいが、弟の趣味ではないから。
「なんで俺の趣味を知ってんだ!!…何も言わなくていい。どうせナレーションだからとか返すんだろ」
分かってるじゃないか。
「お前の考えてることはお見通しだ!!」
「でもしゅーちゃん、たまにはこういう服もいいんじゃない?似合うって」
「いいよ。イメチェンしてどうするんだ」
「髪だって今日みたいに立てた方が似合うのにー。絶対モテるのにー」
「人が悩んでることにつっこむな」
「だったらこれ買おうよ!!」
弟は姉に無理矢理店に入らされ、姉が強制的にその服を買わせたのだった。結論、姉はどこまでも我が道を行く人である。
ここは食料品売り場。今日の夕飯のために弟が姉を連れてやってきた。
弟は魚とにらめっこしている。
「サンマにするかサバにするか…」
完全に主夫にしか見えない。もしくは家政婦。
「家政婦言うな天の声」
「ねぇ、これ!!これ!!」
無邪気な姉が何か指差している指差す先は…。
「カツオの目玉!?」
「しゅーちゃん!!これで新しい料理にチャレンジ!!」
「なんでこれ!?」
「魚の目玉にはコラーゲンがたっぷりなのよ!!DHCも入ってるよ!!」
どうして化粧品会社が入ってるんだ!!
「それを言うならDHA!!」
「大して変わらないじゃん。コラーゲンだよ!!コラーゲン!!」
姉のコラーゲンコールによって弟は渋々魚の目玉をかごに入れた。さて、どういう料理に変身するのだろうか。
弟は散々悩んでサンマをかごに入れると会計を済ませ、二人は家に帰った。
夕食。
姉がウキウキしながら食卓を見る。白米、サンマの塩焼き、大根とニンジンの和え物、キュウリの漬物、豆腐の味噌汁。これは弟のメニュー。姉の方には焼いた魚の目玉がサンマの皿に乗せてある。
「これは…何!?」
「目玉だよ。姉貴リクエストの目玉」
「なんで私の方にだけ…」
「俺いらないから」
でも焼いただけですか弟くん。
「その通り。そうだ姉貴、自分で買えって言ったんだから責任持って全部食べろよ」
弟が笑った。姉が涙ぐみながらも果敢に挑戦していた。
実はこの話、一番黒いのは弟なのではないだろうか…。
二回に渡ってお送りしたこの買物、やっと終わりましたね。
ちなみに裏タイトルは「弟の逆襲」です。いつも犠牲になってるので。