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第48話 運命の判断基準は自分

「つ、塚田?」

「………」

「おーい」

「………」

 珍しく弟から塚田にからんでいる。が、このとおり塚田は無反応で、眼はあさっての方を向いている。

 ためしに軽く小突いてみたが、塚田はぼーっとしていてこちらを見ない。いい音がする程度まで強く叩いてみた。

「塚田ー」

「………」

「七三眼鏡」

「………」

「…姉貴が手料理食べ」

「マジで!?」

 弟が最後まで言い終わる前に塚田は答えた。さきほどとは違い、目を輝かせている。

 途端に弟は視線を逸らした。あの手料理を食べたがるやつの気が知れないと、態度で言っている。

「で、そんなにぼーっとしてなんかあったのか?また英語がピンチとか」

「英語ピンチなのはいつもだからたいしたことじゃないだろ」

 たいしたことだろう、それは。

「じゃあどうしたんだよ。そんなにぼーっとして」

「運命かも…」

「は?」

「この出会いは運命に違いない!!」

 そう言って塚田が弟の両手を掴んだ。弟が可能なかぎり離れていく。

「信じろ、斎藤!!」

「その前にお前は周りの状況をよく見ろ!」

 弟に促されて塚田が周りを見回す。

 さきほどまでは普通に談笑していた周りの人々は、二人から離れてコソコソと何か言い合っている。簡単に言えば二人の関係について。

 ようやく事態に気がついて手を放した。その瞬間に弟は椅子一個分離れる。

「…斎藤、そんなに離れなくても」

「不可抗力だ。で、何が運命だって?」

「そうそう!あれは俺が大嫌いな英語の授業に向かう途中のことだった…」



 心底嫌そうな顔をしながら塚田は教室へと向かう。サボりたいが、サボると確実に単位を落とすので嫌々行かざるをえないのだ。

 ふらふら、ふらふら、ただ足を動かしてる。

 教室どこだっけ…?

 あまりにもぼーっとしすぎていたために教室を通り過ぎてしまったようだ。

 あーあ…。まあまだ時間あるし…。

「貴方なにしてるの!?」

「へ?」

 鋭い叱責の声が背中越しに聞こえた。声の高さや口調から女だとは思ったが、振り返るとそこには塚田好みの美人が立っていた。

 うわぁ何これ運命の出会い!?神様ありがとう!!

「貴方ここで何してるの!?」

 塚田が答えないから焦れたのか、美人さんがもう一度言った。

「何って何も…」

「ここから先は研究室よ。部外者は立ち去りなさい!」

「え!?す、すみません」

 それにしても随分上から目線だ。

 そう思っていると、美人さんは塚田などまるでいなかったかのようにすたすたと研究室へと消えて行った。

 研究室に入っていったということは研究室の関係者だろう。院生かとも思ったが、それにしても上から目線すぎる。30歳前後に見えたが、あれでも教授なのかもしれない。そういえばネームタグを首から提げていた気もする。助手という線も捨てきれないが。

 それにしても美人だなぁ。

 塚田はしばらくその場で呆けていた。もちろんそれも何気なく時計に目をやるまでだ。



「という運命の出会いがあったんだよ!!まさかこの学校に俺の好みにピッタリ当て嵌まる人がいたとは!!」

「あー、そう。でも塚田の言う運命の出会いの後に、姉貴の飯に釣られるって随分気が多くないか、築地くん」

「築地って、もう原形留めてねぇよ…。まあ、お前のお姉さんは別格だから。分類が違うわけよ、俺の恋愛中枢の」

「それを気が多いって言うんじゃないのか…?で、その教授らしき人どんな人?」

「おっ!気になってるな!!」

 塚田がニヤニヤとした笑いを隠そうともせずに弟の方に乗り出す。

 弟は自然に一歩ひいた。

「塚田が今度はどんな一癖ある人物に惚れたのか、がな」

「そんなに癖ある人に惚れてる気はないけど…。そうだな…すらっと背が高くてモデル体型。うなじのところで長い髪を一つにまとめて、歩くと同時に左右に揺れるわけよ。唇の左下にほくろがあったな…」

「あー…それピシッとベージュ系のパンツスーツ着てた…?」

 塚田が目をまるくして、頭が痛そうに額を押さえている弟を見る。

「よくわかったな。もしかして知ってんの!?」

「知ってるっていうかその人の授業取ってる…」

「何お前!抜け駆け!?教えろよ、親友だろ!!」

「親友じゃねぇし、抜け駆けでもねぇし。世界情勢の先生だよ。お前取る気ゼロだっただろ。とりあえず言っとくよ。あの人はやめておけ」

 珍しい弟の忠告。いつもなら塚田のことなどほって置くだろうに、どういう風の吹きまわしなのか。

「とばっちりがきそうな予感がするんだ」

「とばっちりの予感で友達の恋心を踏み潰さないでー」

「むしろもうちょっと見る目を持て。性格キツイの好きも大概にしろ」

「えー。………性格キツイのか?」

 弟が欧米人のように肩をすくめてみせた。

「遅刻したら教室に入れないのは当たり前。レポートも出来が悪いと書き直し。しかも毎時間レポート一枚が課題。すぐ怒るしめちゃめちゃうるさい」

「厳しいと性格キツイは違うんじゃねぇの?」

「紙一重だろ。あ、それとあの人たしか准教授だから」

 塚田は目を閉じた。腕まで組んで何やら考え込んでいる。

 弟はやけに真剣に教科書をめくっている。そういえばもうすぐ試験があったはずだ。

「…………准教授…いいかも…」

 塚田の口からのぼせ上がったセリフが出ても弟は集中していて聞いていなかった。

 お久しぶりすぎてすいません。久しぶりな上にいつもより長いです。塚田にそんな字数を割く気はなかったんですけど、なんか弟が余計なことばっかり喋ったのでこの状態に…。おかげで天の声のセリフが…。てかむしろあとがきが長いですねすいません。

 ちょっと私が書くスピードが時間の流れに追いつけないので小説内は時間をずらしました。現在7月下旬です。次回あたりから夏休み突入します。実際はもう秋ですけどね。真冬に夏休み書いてても許してください。

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