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第39話 お姉様の優雅な一日

 目覚まし時計のけたたましい音で姉こと斎藤紗弥加が目覚めた。アラームを消してからゆっくりと目線を動かし、カレンダーを確認して…。

「…すー……」

 寝た。

 念のため主張しておくが、今は朝である。朝4時とかではなく、普通に7時。そして姉はだいたいいつもこのぐらいの時間には起きている。寝坊は弟の専売特許だ。

 そんな寝坊なんてそうそうしない姉が二度寝したのにはわけがある。しばらく前に休日出勤があったので振替で休暇を取るように上司に言われていたのだが、この姉真面目なのか休暇を取るのすら面倒だったのか、まったく休暇の届けを出さなかったため、痺れを切らした上司に勝手に休暇にされたのである。そのため今日は家で一人のんびりすることになった。弟は大学の講義が一日中あるので夕飯の時間まで帰ってこない。

「すー……」

 なので姉は深い眠りの中から戻ってこないのである。しかし、いい加減ナレーションだけで物語りを進行するのも大変なので起きてほしい。

「……すー」

 姉は完全に夢の世界に旅立っている。これではどうしようもない。今さっき出て行った弟がせっかく姉のリクエストにそって作ったイングリッシュブレックファーストが冷めてしまうが、本人が起きないのではそれも仕方がないことだ。

「………」

 おもむろに起き上がった。鼻を動かして、香ばしいパンの匂いを嗅ぐとテキパキと部屋を出る。

 さすがだ。



 お姉様は優雅にクロワッサンを口に運んだ。左手には紅茶、もちろんティーバック。皿には食べかけのスクランブルエッグ、ハム、レタスなどなど。インスタントの紅茶以外姉は用意していない。弟は完全に尽くすタイプである。尽くさせられているとも言う。

「何?いいじゃない。美味しいご飯が作れれば苦労しないよ?」

 姉は作らないだろうに。

 それはさておき、今日の姉は本当に優雅だった。朝、テレビを見ながら弟の用意した朝食。食器はシンクに運ぶだけで洗わない。食器を割られるから弟が止めた。その後はずっとテレビ。

 昼食は弟が作った親子丼が冷蔵庫に入れてある。親子丼と言ってもご飯とはばらばらの半生の状態で加熱を止め、ラップの上に温める時間まで書いてある一品だ。それをレンジで温めたご飯にのせるとまるで姉が作ったかのような錯覚に陥るらしい。

「さすが私。温め具合が絶妙で美味」

 何度でも言うが、作ったのは弟。しかも温める時間まで弟が指定している。

 食後は朝食の時と同じように食器をシンクに運ぶだけ。またごろごろとするのかと思ったら、洗濯物を取り込みだした。ばさばさ、ばさばさ。とりあえず洗濯ばさみから外せばいいやという感じすら姉から感じる。

 そして床に洗濯物の山を作ってリビングに戻る。洗濯物にはノータッチ。なぜなら畳もうとしてもぐちゃぐちゃになるだけなので弟が怒るから。

「美味しいわー」

 何してるのかと思ったら、冷蔵庫を漁っていた。食べてばかりなように思うのは私だけだろうか。

「食べてるところ以外ほとんど描写しないじゃない」

 食べる以外していないからである。

 ちなみに姉が食べているのはアイス。冷凍庫にちょっと高級なアイスが入っていたのだ。いつ買ったのか…。

「アイスは買ってないから知らなーい。私買うならバニラじゃなくてストロベリーとか買うもん」

 それ食べていいのだろうか…。

「ただい…」

 弟が帰ってきた。そして止まった。床の洗濯物を見てため息をつく。

「何もこんなところに置かなくても…」

 そして姉に視線を移す。

「……姉貴、それ…」

「冷凍庫に入ってた」

 アイスを食べながら姉が答える。

「……それ、俺の…」

「そうだったの?ごめんごめん。いつか買ってくるよ、いつか」

「………」

 姉がアイスを買ってこないことを見越して弟は肩を落とした。

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