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第29話 友達っていうのの枠が分からないよね

 今日も弟が夕飯を作り、弟が食器を片付けていた。姉はソファに座り、クッションを抱えてテレビを見ている。

 弟よ、かなり突然だが、質問してもいいか?

「なんだよ」

 塚田以外に友人はいないのか?

「………」

「そういえばそうよ!!友達いないの!?」

 ソファでくつろいでいた姉も会話に参加してくる。

「いるよ。健とかよくうちに遊びに来てただろ?」

「そうじゃなくて、こっち来てからの友達!!本当に塚…塚……なんだっけ?」

 姉は弟の友人Aの名前を忘れていた。

「とにかく!!一人しか友達いないの!?」

「いるって。大学に何人か…」

 女子はカウントするなよ?

「………」

 図星か?

「女友達しかいないって…このモテモテ!!」

 罵倒の言葉がおかしい気がする。

「図星じゃない。モテモテでもない。そんなにモテるなら毎日、夕飯の仕度は出来ないから」

「じゃあ、友達いないの?」

「いるって。男の友達もちゃんと。ただ塚田のインパクトがありすぎるだけだ」

 それは…納得である。

「えー…本当に?」

「本当」

「嘘じゃない?」

「…姉貴、なんでそんなに疑うんだ」

「友達いるならもっと遊びに行ったりするもんじゃないの?」

 姉の痛恨の一撃が決まったー!!弟、スポンジを持ったまま絶句!!と思ったら口を開いたぞー!!

「天の声、うるさい。てか、なんで実況なんかやってんだ」

ノリで。

「ノリで実況するなよ、ナレーションが」

 一応人間に属しているので許してほしい。

「天の声がナレーションを放棄するのはよくあることだからほっといてあげて。それより本当に友達いるっていうなら証拠を見せてよ」

 姉が立ち上がって弟と向かいあった。何故かクッションを抱えたまま。

「証拠?」

 弟は姉がクッションを抱えたままということにツッコミをいれない。

「そう、証拠。裁判官!!証人を召喚する許可をください!」

「証人!?」

 許可しよう。

「天の声が裁判官かよ!」

 この物語の中では私が法律だ。

「………」

「ほら、しゅーちゃん、早く塚林くん呼んで」

「………」

 弟はケータイを出して、塚田の電話番号を出す。そして本当に呼ぶのかと言いたげな目で姉を見た。姉ははっきりと頷く。

 発信してケータイを耳に当てると、数回のコール音の後に塚田が出た。

「……もしもし、塚林?…塚林じゃないって?そんなの知らねぇよ。姉貴が呼んでるんだけど……レポートはちゃんとやれよ。じゃあな」

 弟が電話を切ったところを見計らって姉が聞いた。

「来るって?」

「『お姉様のお呼びとあらば明日提出のレポートが終わらなくても行きます』ってよ」

 さすが塚田だ…。



 ということでどうしたらそんなに早く来れるんだという早さで塚田がやってきた。

「遅い」

「えー!?どんだけチャリ飛ばしてきたと思ってんの!?」

「知らん」

 弟は塚田に対してどこまでも冷たかった。姉といる時とはノリが違う。

「突然呼び出しごめんね、塚林くん」

「塚林じゃなくて塚田です、お姉さん」

「あっ、そうだっけ?塚原くん、早速質問があるんだけどいいかな?」

「塚原でもなくて塚…」

「塚原、名前のことなんか気にしてたら朝になるから。姉貴、質問するならさっさとしてくれ」

 弟はどう見てもわざと間違えているのであった。

「しゅーちゃんに友達がいるのかってことが議題になって」

 塚田が自分を指して弟の方を見た。弟は右手を振って否定する。塚田は落ち込んだ。

「それで、大学が一緒な塚原くんなら知ってるかと思って」

「俺に友達がいるってことを証言してくれよ」

「え?いないだろ?」

 塚田の逆襲かのような返事に弟は言葉を失った。

「俺をカウントしないならいないよな」

「仕返しか…?」

「違う違う!!」

 塚田が慌てて首を振った。

 姉はソファにもたれて、事の成り行きを見学している。

「だってお前、まともに喋らないから」

「友達はいるだろ」

「『うん』とか『別に』しか言わないで友達が出来るか!?友達だと思ってるのはお前だけだから!!」

「………」

 姉がクッションを抱えて、暇そうに話しかけてきた。

「結局結論は?」

 弟には塚田以外にまともに喋る友人はいない、ということだろうな。

「そっか。しょうがないね、しゅーちゃんだし」

 弟だからな。


 弟って友達いなかったんですね…。寂しい人だ…。


 次回はなんと第30話!!ということで「第1回談笑会」をお届けします。

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