第28話 腹黒いのは治りません
前回の話を反映したシンデレラパロディになっています…(多分)
「シンデレラー!シンデレラー!」
義姉役弟が布を片手にシンデレラを呼んでいる。本来弟は男だが義姉役なので今は女ということにしておいてほしい。
「はぁい。何かご用ですか、お義姉様?」
シンデレラ役の姉が走ってきた。明らかに姉弟でいつもと立場が逆だがそれは目を瞑っていただきたい。
「シンデレラ、この服を繕っておきなさいって言ったじゃない…の。今日舞踏会に来て行く服がないだ…じゃない」
弟の必死の女言葉は若干無理があった。
「申し訳ございません、お義姉様。でも…いっそ買い直した方が確実なんじゃない?」
義姉に従う気のない姉…ではなくシンデレラはすでに化けの皮が剥がれかけていた。ボロボロな服を着ていても、頭にそれらしく頭巾をかぶっていても姉は姉だった。
「…シンデレラ、お…私はこの服で舞踏会に行きたいの。今すぐ繕って…ちょうだい」
義姉役の弟が心底嫌そうな顔をしながら女言葉を使う。
「今からやっても舞踏会には間に合いません。他の服を着て行ってください」
どこまでも反抗的なシンデレラだった。
「…しょうがないわね…。私が帰って来るまでに掃除洗濯炊事全て…やっておいてね…」
ごり押しの出来ない義姉だった。
そして義姉が舞踏会に行った後。
「家事が全部出来たら奇跡よ。そんな素直にやるわけないじゃない」
シンデレラの化けの皮は完全に剥がれいた。
「しかもなんで連れ子の言うことを聞かなきゃいかないわけ?この家はもともと私の家なの。ひょっこり家に来て威張り散らしてんじゃねぇよバーカ」
シンデレラの腹黒面があらわになっていた。
「もしもし、そこのお嬢さん」
窓を誰かが叩いている。姉シンデレラは完全に無視している。
「そこの綺麗なお嬢さん」
やっとシンデレラが立ち上がり、窓を開けた。窓の外には塚…魔法塚いが立っていた。漢字は間違っていない。
「誰?」
「ホホホ、私は心優しい魔法塚い。シンデレラ、あなたの願いを叶えて差し上げましょう」
胡散臭さで言えばハマり役だが、ワザワザ女言葉にする必要はないのではないだろうか。というか自分で心優しいとか言っては台無しだと思う。
「願い?なんでもいいの?」
姉シンデレラは願いという言葉に反応した。
「もちろんよ、ホホホ」
笑うところがおかしい魔法塚いは長い杖を引っ張り出した。
「さぁあなたの願いは何?お城の舞踏会に行きたいのよね?」
「馬鹿親子を追い出して」
「はい?」
「聴こえなかった?うちに住み着いた害虫をどうにかして。魔法塚いなら出来るでしょ?」
「いや…人間には住居に住むという権利がですね…」
「出来ないの?」
「人間の権利は侵害してはいけないわけで…。簡単に言うと追い出すのは無理です」
「じゃあ追い出す以外は?私と立場を逆転するとか」
「…出来ないわけじゃないですが…本当にあなたシンデレラ?」
「私以外のどこにそんな可哀想な名前を付けられた女の子がいるのよ?」
「…わかりました。立場を逆転して差し上げましょう」
魔法塚いでも姉…ではなくシンデレラには勝てなかった。
「それと…」
「まだ何か?」
健気な少女だと聞いていたに違いない魔法塚いは早くも帰りたそうな顔をしている。
「あなたの魔法は便利ね」
「…え?」
「雑用としてこの家に居座りなさい」
「マジで!?」
こうして魔法塚いもシンデレラの魔の手から逃げられなくなるのであった。
「っていう夢を見たの」
のんびりと姉が言った。
「夢の中でも俺は姉貴に勝てないわけ!?」
というか姉がシンデレラだと腹黒すぎないか?
前回のやつを書いていてですね、これはお姉様と弟クンのシンデレラパロディを読んでみたいと思いまして、このような書き方に。
しかもあえてハマり役な弟と姉を逆にして。天の声はそのままですけどね。名前を完全に出さなかった魔法塚いはもう誰だかお分かりでしょう。
あり得ないことはしないというのがモットーな小説ですから、夢オチということで。