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第25話 大雨洪水警報が発令されました

「しゅーちゃん、迎えに来て♪」

「姉貴…今外大雨なの知ってるか…?」

 外は生憎の大雨。台風が来たのではというほどの大雨。

「だから、傘ないから迎えに来てって言ってるの」

「うちには車とかないんですけど。ていうか俺、免許持ってないし」

「だ・か・ら、傘持って駅まで歩いて来て♪」

 弟が深くため息をついた。

「バスとか乗ってくれば?」

「バス停から家まで遠いからその間にびしょ濡れよ」

「こんな天気で駅まで歩いて行ったら、俺の方がびしょ濡れなんですけど」

「育ち盛りの弟の食費は誰が」

「分かったよ!!分かりました!!迎えに行けばいいんだろ!?」

 ガチャンと音を立てて弟が受話器を置いた。上着と携帯電話、自宅の鍵を持って玄関へと向かう。

 姉を迎えに行くのだろうか。

「後でうるさいからな」

 なるほど。弟というのは立場が弱いものだな。

「なんか言ったか…?」

 もう一度言えというのか?それならば遠慮なくもう一度言うが。

「言わんでいい!!」

 弟はふて腐れながら玄関の扉をバタンと閉めた。

「ふて腐れたっていうな!!」

 弟に怒られた…。



 大雨の中、弟は姉を迎えに駅へと向かった。ちなみに駅まで徒歩20分。いつもなら自転車で行く距離だが、こんな大雨ではそういうわけにもいかない。

「寒っ…」

 傘一本でこの雨の中を歩いている弟の身体は徐々に熱を奪われていた。コンビニで一度休憩してはどうだろうか?

「天の声にしては名案」

 私はいつも名案を提示しているつもりだが?

「そうですねー」

 弟は軽く流してコンビニに入っていく。コンビニの店員はこんな雨で来る人はいないだろうと思っていたのか椅子に座って雑誌を読んでいた。

「あ…らっしゃい」

「八百屋か!?八百屋なのか!?」

 そう言いたくなる気持は分かるが八百屋ではない。

 八百屋的な挨拶をするコンビニの店員をほっといて、弟が雑誌をめくる。

「どんなご用でしょうか?」

 店員の言葉に、弟が雑誌を元の場所に戻して振り返る。

「ちょっと待て店員。コンビニは普通そんなこと聞かねぇだろ」

「すいません。暇だったもので。何せこの台風の中、コンビニに足を運ぶ奇特な客はほとんどいないもので」

「…暗に俺が奇特な客だって言ってるよな。見ず知らずの店員さんは」

「いや、そんなことは…ないとは思います」

「その微妙すぎる否定はなんだ!!俺につっこむポイントを作ってるようにしか思えない!!」

 作者の意図を感じるな。

「作者は誰だよ…」

 言っておくが弟よ、私は天の声であって作者とは似ているが別人である。

「そうですか…」

「何一人で喋ってるんですか、お客さん。宇宙と交信でも?それとも禁止薬物中毒者じゃないですよね?」

「深入りするな、ただの店員。俺はお前には聞こえない声が聞こえてるだけだ」

 間違ってはいない。

「え…?もしかして…幽…」

「深入りするな」

「了解しました。深入りせずに見守ってます」

 店員は深入りせずに弟を見守っていた。雑誌をめくる弟をひたすら見ていた。弟の額に血管が浮かび上がる。

「何見てんだ…?」

「深入りせずに見守ってるんです」

「ウザイ」

 雑誌をバサッと置いて弟はコンビニを出ていく。

「またのおこしをお待ちいたしましております!!」

「待つな!!」

 自動ドアなのでバタンとはいかないが、弟としてはそうしたかったことだろう。

 居心地の悪いコンビニを飛び出して、弟は再び大雨に熱を奪われながら駅へと歩き出した。手にはしっかりと傘が二本。一本は今さしている自分の傘で、もう一本は姉の傘である。強風に自分自身が飛ばされそうになっても傘は手放さなかった。

 健気な弟だ。

「天の声、俺はいつでも健気だ」

 その『いつでも』は一体いつのこと?

「……お前に付き合ってると駅まで着かなくなる」

 弟はサクサクと歩き出した。

 そしてサクサクと駅に着いた。

 辺りを見回すと姉らしき姿はない。姉がいそうな喫茶店も覗くが、姉はいない。

「どこにいんだよ…」

 弟が何軒目かの喫茶店を覗いて舌打ちした時に、携帯電話のバイブレーションが鳴り響いた。弟が携帯電話を取り出す。

 メールが一件届いていた。


from:姉貴

Sub:しゅーちゃんへ♪


 弟がメールを開いた。


しゅーちゃんがなかなか来ないから、タクシーに乗って帰りますv(^-^)v


 ………なんとお姉様らしい文章だろうか。

「あのクソ姉貴め…」

 弟が悪態をついて携帯電話をしまった。

「なんのために俺がここまで来たんだと……ゴホッ…ゴホゴホッ…う………」

 弟!?どうして弟!?

 うめき声を上げて、弟が雨で濡れた冷たいアスファルトの上に倒れこんだ。二本の傘が弟の手を離れて地面に転がっていく。

 倒れた弟にも雨は容赦なく降りそそいだ。


 次回へ続く。

 若干のシリアス的展開に俺もドッキドキ☆

 すいません。コメディに書き飽きてシリアス的展開にした真犯人の朝比奈です。コメディよりもシリアス的な物が好きだったりするので許してください。

 でもご安心ください。「お姉様と弟クン」はあくまでコメディですから、この後弟が入院して天国にさようならなんて展開には一切なりません。保証します。一切なりません。

 さてさて次回はこの続きなようなあんまり関係ないような話をお届けします。次回はいつもと同じコメディ仕様ですよ。

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