第22話 祭りの後はやっぱりこれ!?
「乾杯!!」
「「かんぱーい!!」」
大学近くの飲み屋で塚田やコンテストを手伝った面々が飲んでいる。
で、何を乾杯しているんだ。
「塚田、どうして俺たちは飲んでるわけ?」
ナレーションは塚田には聞こえないから弟が代わりに聞いてくれた。
「ん?なんでって、もちろん、学祭の打ち上げ。集計は出なかったけど、コンテスト俺たち頑張ったから」
弟はまだ優勝したということを塚田に言ってないのか。
「………」
来年には分かることなのだから、今言ってしまった方が楽だぞ。
「…あのさ…」
「あー、気にするな、斎藤!!集計の機械が壊れたりしなかったら、絶対お前が優勝だったって」
塚田が弟の背中をバンバン叩いた。いい感じに酔いがまわっているようだ。
「いや、だからな…」
「気にするなって!ほら今日は飲むぞ!」
弟の手にビールを持たせて、塚田はひたすら飲めと急かした。
人の話を聞いちゃいない。
仕方なく弟がビールをあおった。イッキ飲みをしようが酔わないのが斎藤家の特徴である。ちなみに弟と父親は強い程度だが、姉と母親はザルである。
「そんなに一気に飲んだら…」
心配そうに弟を見ているのが山村未姫。弟の隣でガンガン飲ませている塚田は弟が酒に強いことは知っているので心配しない。
弟に酒が入るとテンションが上がってきた…塚田の。
「王様ゲームやらねぇ?」
上機嫌で塚田が声をかけるが、女子からブーイングが出る。
「塚田…お前…」
「なんだよ♪」
音符までつけたくなるほど上機嫌。
「合コンしたかっただけなんじゃねぇの?」
弟の鋭いツッコミに塚田が慌てて否定する。
「そ、そんなわけないだろ!!俺はコンテストが終わった打ち上げをだな…」
「合コンしたかっただけだろう?」
「だからそんな…」
「白状しろ」
「…すいませんでした」
姉も転がす弟の鮮やかな手並みに女子三人が拍手している。弟は両手を肩まで挙げて拍手を止めた。キザだ…。
「何か言ったか…?」
「え!?私たち何も言ってないよね?」
「そうだよ!!」
「そうそう!!」
三人が必死で機嫌を損ねたと思われる弟の誤解を解こうとする。弟もはっきり口に出してしまったことに気づき慌て出した。
「あ、いや…そ、空耳!!空耳だから!!」
そうそう、空耳。ナレーションが聞こえるなんて所詮は空耳。
弟が床を睨んでいる。そんな所に私はいないと何度言えば学習するのだろう。
気をとり直そうと弟が一度咳をした。
「とにかく、ここは塚田の奢りだから遠慮なく飲んでいいよ」
「は!?」
沈んでいた塚田が一気に浮上する。
「すいませーん!!ビール追加で!!」
「あたしもー」
「もし支払い足りなかったら、こいつに付けておいてくださーい!!もしくはここでこき使ってやってくださーい」
「承りましたー♪」
ノリのいい店員もいたものだ。
「お、お前、どんだけ飲む気だよ!?」
「気が済むまで」
塚田が再び撃沈した。
もう一度言うが弟はかなり酒に強い。なかなか酔わない。
「ねぇ、斎藤くんさぁ、ケー番教えてよ」
女子組のリーダー的存在、柿崎が弟に言った。もちろん皆、塚田は無視。ちなみにケー番とは携帯電話の番号のことである。
「俺…」
「あたしも教えてー」
「お…」
「赤外線で送っちゃえばいいよねぇ?」
「それが一番早いだろ」
ことごとく言葉を遮られる塚田であった。
「送信♪行った?」
「来た来た」
サクサクと女子組(だんだんとこの名前が定着してきた)二人と弟が番号を交換する。
「ね、ねぇ、私もいい…?」
遠慮がちに山村が弟に聞いた。弟はいつも通り軽く答える。
「いいよ。ほらケータイ」
赤外線で弟と山村も番号を交換した。
「俺は…俺には教えてくれない…」
「あー、もう分かったよ。教えればいいんでしょ?もし変なメール送ってくるようならソッコーで番号変えるからね」
「う…分かった…」
こうしてやっと塚田も番号を教えてもらったのだった。
「そういえば、支払いよろしくね塚田くん」
「よろしくー」
塚田はしばらくこの飲み屋でタダ働きすることになるのだった。
主役は弟のはずです。どんなに塚田が目立っていても。
次は通常の物語に戻って姉と弟だけでお送りする予定です。お楽しみに。