第17話 面白すぎる学祭 その二
「大学来たの二年ぶりー。懐かしー」
「お姉ちゃん、この大学だったっけ?」
「違うけど」
「だったら懐かしいはずないじゃん」
「いや、ほら、雰囲気とかさ!!学生のノリとかさ!!」
妹の冷たいツッコミ、というより切り捨てに今日も姉はしどろもどろである。
「あれ?天の声来たんだ。今日はずっとしゅーちゃんの方にいるのかと思ってたのに」
コンテストが始まるちょっと前まではこっちにいるのである。ところで何故実家にいるはずの妹がいるんだ?
「一人で回るの寂しいし、鈴にもぜひしゅーちゃんの晴れ姿を見てもらおうと」
「お姉ちゃんが無理矢理呼び出した」
妹は姉に厳しい気がする。
「気のせいである♪」
「なんでそんな口調なの!?」
「天ちゃんの真似」
天ちゃんと呼ばないでほしい。
「え〜!!この前はいいって言ったのにー!!」
過去は振り返ってはいけないんだ、妹。
「…天ちゃんて何歳なの!?」
ナレーションに年齢はいらないのだよ。
「なんか…偉そう…」
この物語はナレーションなしでは成り立たないのである。
「どんな物語でもそうだと思うけど」
妹から容赦という言葉が完全に消えていく。
「それは少なくとも私に対してはいつものことよ…」
まあまあ。姉、そんなに落ち込むな。
ところでどこへ行くつもり?さっきから移動していないのだけれど。
「わかんない」
いや、決めろよ、姉。
姉と妹は大学の門を通り抜けてすぐのところに立っていた。
「天ちゃん、なんか面白そうなところなかった?」
特にオススメはない。
「天の声はしょーちゃんと回ってたんだからどこか知ってるわよね」
姉がにっこりと笑う。しかしかなり歪んだ笑い方だ。
…何故ナレーションなのに私は脅されてるんだろうか…?
校庭の方に出店が沢山出ていたと言った(言わされた)ため、二人は校庭の出店を冷やかしに来ていた。一応言っておくが、二人とは姉と妹のことである。
「ねぇ、焼きそばがいい匂いだよ」
「駄目。値段のわりに量が少ない。焼きそばならしゅーちゃんに作ってもらった方が安いし、美味しいわ」
今日の姉は妙に現実的であった。
「そこの綺麗なお姉さん、わたあめなんてど」
「わたあめなんかただ甘いだけじゃない。どこが美味しいのよ。それとあんたなんかの姉になった覚えはない」
姉はこうして話しかけてくる売り子たちを一刀両断していった。妹のさらに凶悪化したものを見ている気分である。
「お姉ちゃん…どうしたの?いつものお姉ちゃんなら『あら美味しそう。一個買ってあげるからもう一個おまけしてね』ぐらいにするのに」
それもどうだろう…。
「ちょっと学生時代を思い出してね…」
姉が哀愁を漂わせた。というか、学生の時はそんな性格だったんですか!?
「教授に対してだけよ」
それはまずいでしょうが。
「よくここまで性格変わったよね…」
「ありがと」
「誉めてないから。自惚れないでよ、お姉ちゃん」
妹の毒舌に姉がダメージを受けた!!立ち上がれ姉!!
「自惚れじゃないわよ!!事実よ!!」
おっと!!自ら墓穴を掘ったぞ姉!!頑張れ姉!!立ち上がればその先にはきっと、多分、希望では弟が!!
妹が哀れみをこめた目で姉を見ている。いや、呆れか?
「…なんか疲れた…」
そうでしょうね、お姉様。一人で勝手に墓穴掘ってましたからね。
「ところで…何しに来たんだっけ?」
いや、あの…妹さん?弟のコンテスト見にきたんでしょう…?
「あぁ、そうそう。女装美人コンテストだよね。そこにさ…」
妹が掲示板を指差した。掲示板にはカフェテリアなど、学祭の宣伝がところせましと貼られている。妹はその中央に貼ってある物を指差している。
「大学祭恒例!!第24回男のための男による女装美人は誰だコンテスト!!野外ステージにて二日目午後一時半から!!」
そんな正式名称だったのか。
「鈴、これがどうかした?」
「今、25分だよ」
「…何時…?」
「1時」
「後5分しかないじゃない!!急ぐのよ、鈴!!」
姉と妹は野外ステージを目指して、人をかき分けながら走って行った。
野外ステージはここから10分近くかかるが、果たして間に合うのだろうか。
学祭のネタなのに今12月です…。すいません。次で終わりますから許して下さい。