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第1話 毎朝の出来事なんです

「起きろー」

 姉がいつものように弟の部屋に突入してきた。弟がガバッと起きて、姉を見る。

(あね)()!!勝手に入ってくるなっていつも言ってるだろ!!」

 そうこれはいつもの朝の出来事。

「いつもって言うな!!」

 ナレーションに弟がツッコミを入れているが無視しよう。

 都会で働いている姉の元に、地元を離れ都会の大学に進学した弟が転がりこんできた奇妙な二人暮らしである。いや稀にある二人暮らしである。

「自分で訂正するなよ!!」

「誰としゃべってるの?」

「天の声と!!」

 そろそろ話を進めてもらわないと困るので姉、進めてください。

「まぁまぁ。天の声は無視するもんよ。それに別に姉弟(きょうだい)なんだから部屋入ったっていいじゃない」

「兄弟の間違いだろ…。こんなに男らしい姉は普通いない。とにかくプライバシーは守れ!!」

「この家の家賃出してるのは誰でしょう?」

 姉が凶悪と呼べるほどニッコリと笑った。

「…姉貴、です…。でも性別違うんだからもうちょい気にしてくれ」

「姉弟の間に性別なんて(へだ)たりはない!!」

 いや、あるだろうよ。

 弟が深いため息をついた。

「で、朝からなんの用?今日は授業ないって昨日のうちに言ったよな?」

「あれ?そうだっけ?まぁいいや。朝ご飯作って」

 姉というのは自分勝手な生き物である。

 太陽が高く上っていくのとは反対に弟のテンションは段々下がっていく。

「なんで俺が…」

「お願いしゅーちゃん♪」

「しゅーちゃんて誰だよ!!俺は俊介(しゅんすけ)だ!!」

「対して変わらないじゃん」

「大分変わるだろ!!」

 こうして弟は日々ツッコミに磨きをかけていく。

「かけてねぇよ!!」

 ツッコミを入れてもどうせ朝食は弟が作ることになるのです。

「はぁ!?」

 なるのです。

「俊介…食費をくれない親の代わりに毎日稼いでいるのは誰でしょう?」

「…姉貴です…」

 弟が諦めてベッドから出てきた。洗濯物の山から適当に服を引っ張り出して…。

「いつまでいる気だ…」

「いつまでいたっていいじゃない」

 あ、弟の額に血管が浮かんできた。

「出てけ!!」

 姉は部屋を追い出された。ありがちなパターンである。

「天の声、うるさい!!」

 …弟に怒られた。



 場面は変わって弟、朝食製作中。

 今日のメニューはご飯に味噌汁、玉子焼き、漬物。…伝統的な日本の朝食だ。

「今面白味ねぇ…とか思っただろ!!」

 そんなことはありませんよ弟くん。なんたってあの姉に食事を作らされ続けて今では完璧な家庭の味。味の保証はできる。

「まぁな…」

 これならいつでも嫁にいける。

「うるせぇ!!いつも一言多いんだ!!」

「ご飯できた?」

 身支度を整えて姉参上。

 弟が用意した朝食を囲んで手を合わせる。囲むほど人いないって?まぁ気にしない。

「天の声は一体誰と話してるんだ!!」

「うーん…。宇宙人?」

「…真面目に答えなくていいから…」

 大して気にした風もなく姉が味噌汁に手をつけた。そして玉子焼きにも手をつける。

「しゅーちゃんやっぱり美味しいわ。いつでもお嫁にいける!!」

 姉が親指を立てて笑った。

「天の声と同じこと言うな!!」

「そんなこと知らないよ〜。ねぇ?」

 その通りです。

「…この天の声やけに姉貴には従順だな」

「天の声すら従える人。そう、それは私!!」

 女王様と呼びなさいとでも言うのか?

「お姉様とお呼び!!」

 お姉様かよ!!

「…お姉様…」

 従うのか弟!!

「もう8時だけど会社行かなくていいのか?お姉様」

「嘘!?マジ!?遅刻だよ!!もっと早く言え!!」

 カバンをつかんで姉が走る。玄関のドアを開けながら一言。

「しゅーちゃんのあほ!!」

「だからしゅーちゃんて誰!?」

 誰だろうね。

 こうして今日も一日がすぎていく。

「すぎるのかよ!!」

 すぎるったらすぎる。

えぇ。コメディですね。ある意味天の声すら登場人物。天の声は多分作者自身です。

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