1.侵攻
強大な軍事力を有する帝国は、その軍事力をもって次々と周辺の国々に侵攻侵略、自国の領土へと変えていった。
それにより、帝国は中央大陸の3分の1を領地として治める事になる。
1362年、皇帝ウラジミールは、周辺諸国を制圧すると、それだけではあきたらず、次に南にあるエルネスト国に目を付けた。
エルネスト国は資源の豊富な国で、土地柄資源の少ない帝国にとっては、確実に手にしておきたい国だった。
しかし、エルネスト国との間には大河が存在し、元々内陸部に領土を持っていた帝国は戦う為の大規模な船は有していなかった。
侵略し、自国へと変えた大河に隣する国には船も水軍も存在していたが、侵略で恨みを買っている事は理解していたウラジミールは慎重深く、元からの自国の者しか信用しなかった。
武器を与え逆にエルネスト国と手を組んで反旗を翻されては適わないと、力を与える方法は取らなかった。
その為、帝国は大回りし、南東から攻める方法を取る。
しかしそれまでには、ナーベル国、マリ国、ティアニス国の3カ国が存在し、帝国はエルネスト国侵攻の足掛かりにする為、まずその3カ国を落としに掛かった。
帝国の侵攻に、ナーベルとマリはすぐさま白旗を上げ帝国の一部となる。
しかし、ティアニス国は帝国に組する事を良しとせず、果敢にも兵を上げ戦ったが、帝国の前には小国の軍事力など雀の涙ほどの意味しか成さず、呆気なく敗戦した。
王都は帝国兵により踏み荒らされ、王城を制圧すると、王と王妃はその場で斬首。
王太子は難を逃れたが、その後消息不明に。
そして、帝国の魔の手は、王都から少し離れた場所に領地を持ち暮らしていた王弟にまで及んだ。
王弟は領地の兵を集め迎え撃つが、領地内の民を逃す時間稼ぎがやっとで、城に残っていた妻と共に帝国兵に捕虜として捕まった。
一人娘の姫だけは、間一髪信頼の置ける臣下とその家族と共に隠し通路から逃げ延びる事に成功。
幾度も帝国兵の追っ手をくぐり抜け、領地から離れた、各地から戦火を逃げ延びた人達で作ったラコウム村に辿り着いた。
そして一行はラコウム村で束の間の安息を手に入れた。