面接官「あなたの長所は?」 ちくわ「回し車での持久力です!」
ちくわの最初の面接先は、近所の商店街にある小さなクリーニング店だった。
「初心者OK」「未経験歓迎」と貼ってあったから、まあ…元ハムスターでもワンチャンあるかもしれない。
店に入ると、面接官の店長さんがちくわを見て、一瞬だけ本当に一瞬だけ固まった。
その後、目をそらしてから戻してきたあたり、心の中で「うん。見なかったことにしよう」と処理したんだと思う。
「では、まず自己紹介をお願いします」
店長さんが書類を構える。
ちくわは背筋を伸ばし、胸に手を当てて言った。
「わたし、ちくわ。元ハムスター。人間歴、三日」
唐突な転生宣言に、店長さんのペンが止まる。
そりゃそうだ。
だが、ちくわは本気だ。
面接用にメモ帳に書いたらしい履歴書を取り出し、どや顔で渡す。
開くと、中身はこうだった。
特技:回し車
長所:回し車
短所:回し車のやりすぎ
趣味:回し車
どんだけ回し車好きなんだ。
「……長所は、回し車での持久力…とありますが?」
店長さんが恐る恐る読み上げる。
「はい!何時間でも回せます!人間になってからは、まだ回してないですが、心はいつでも準備万端です!」
やたら元気。
店長さん、沈黙。
私も沈黙。
空気だけが妙に澄んでいく。
「で、では……接客経験は?」
「巣箱に入っている時、お客(飼い主)が来ると、たまに顔を出しました」
もはや何の職種に対してのアピールか分からない。
「……なるほど。あの、ちくわさん。重い荷物を持つ作業も多いのですが――」
「だいじょうぶ。ヒマワリの種なら、片頬にいっぱい入ります」
そういう問題じゃない。
店長さんは苦笑いを浮かべ、優しい声で言った。
「今日は来てくれてありがとうね。また、機会があれば連絡するから」
完全に不採用のやつだ。
店を出た瞬間、ちくわは肩を落とした。
「わたし……ダメだった?」
「うん、まあ……その……ダメだったね」
でも、不思議と笑いがこみ上げてきた。
こんなに真剣なのに、全部ズレてるところが、なんだか愛しい。
「次の面接、行く」
ちくわは涙目のまま、決意だけはきっちり固めていた。
その姿が、ちょっとだけ頼もしく見えた。




