はじめての会話は、何故か貴族口調
ぷくまる(人型)はタオルを肩からずり落ちそうにしながら、
俺の部屋をきょろきょろ見回していた。
「ふむ……ここが、余の新たな縄張りというわけか。」
「縄張りって言うなよ。部屋だよ、ただの。」
「いや、もう余の縄張りだ。
まずは上座を……そうだな、あのふかふかしたところが良い。」
ぷくまるは迷いなく俺の枕を指さした。
「ベッドの上はやめて!?」
「では飼い主。そなたはどこで眠るのだ?」
「ベッドだよ。俺が使うの。」
「……むぅ。」
尻尾がしゅんと下がる。
(いや、そんな顔されても……)
少し沈黙が流れ、ぷくまるは改めて部屋の中央でふんぞり返った。
「して、飼い主よ。」
「はい。」
「余は人型となった。よって、これからは格調ある会話を基本とする。」
「なんで!?」
「あたりまえだろう。人間は皆、格調高い口調だった。」
「そんなわけないでしょ!? どこで覚えたの!?」
ぷくまるは胸を張り、どや顔で答えた。
「テレビの歴史ドラマだ。」
「あ~~~~~~~~……」
なるほど、それで妙に偉そうなのか。
「余は人型ゆえ、飼い主よ。そなたも格調ある呼び名を使うがよい。」
「いや普通に喋ろう!?」
「では……そなたの名を、今から『飼主殿』と呼ぶことにする。」
「急に武士みたいになった!?」
「んん? 違ったか?」
困惑しながら耳をぴこぴこ動かす。
(あ、理解できてないやつだこれ……)
「ぷくまる、普通でいいよ。今まで通りで。」
「むぅ……普通とは?」
「えっと、もっとこう……会話がフランクというか……」
「ふらんく。」
「そう、フランク。」
ぷくまるは少し考えるそぶりを見せたあと、
いきなり仁王立ちになって手を挙げた。
「飼主よ! 余はフランクを習得した!」
「絶対してない!」
「よぉ、飼主。元気か?」
「語尾に“よぉ”つけたらフランクじゃないよ!?」
「違うのか。」
(違うよ。)
ぷくまるは黙り込み、自分の尻尾をじーっと見つめた。
「……飼主。」
「うん?」
「では、こうしよう。
余は偉そうに喋る。そなたはそれを訂正する。
これで会話が成立する。」
「そんな面倒な会話システムないよ!?」
納得したのかしてないのか、ぷくまるはタオルを巻き直しながら鼻を鳴らした。
「よいか、飼主。これから余が言うことは全て正しい。」
「そんな独裁宣言みたいなことやめて?」
「ふふん。では、余の朝食追加を所望する。」
「なんで偉そうにおかわり要求するの!?」
「人型は腹が減るのだ。」
ぷくまるは、ヒマワリの種をぽりぽりつまみながら
勝手に布団へ潜りこんでいく。
「……おい、そこ俺の寝床なんだけど。」
「静かにせよ、飼主。今から昼寝の儀だ。」
「儀式にすんな!」
頭だけひょこっと出して、
耳ぴこぴこ動かしながらこっちを見る。
「……飼主。撫でてから寝たい。」
「結局そこに落ち着くんだな!?」
撫でるとすぐに目が細くなり、タオルの中で丸まった。
偉そうな貴族口調も、結局ただの甘え。
(……まぁ、可愛いから許すか。)




