個性強すぎファンたちの洗礼「元ハムスターに質問ある?」
朝の控室。
会場の音がまだ漏れ聞こえる段階で、ちくわは深呼吸を繰り返していた。
「大丈夫、大丈夫……ぼく、ぼくらしくやればいいんだ……!」
でも胸の鼓動は早く、背中に汗がつたう。
3日前まで、ハムスターだったちくわが、まさかこんな“人間のイベント”の中心に立つなんて、夢にも思わなかった。
凛は横でチェックリストを手に、スタッフたちに声をかけていた。
「質問コーナー、ちくわの答えはアドリブでOK。でも漢字読めない部分は説明不要。突っ込むほうが盛り上がるから」
スタッフたちがうなずく。
ちくわ「え、説明しなくていいの?」
「そう。突っ込まれる方が面白い」
「……突っ込まれるんだ……」
控室の空気は緊張と熱気でムンムンしていた。
そこに、ファンが会場入り。
入場ゲートをくぐった瞬間、会場中から歓声が上がる。
「きゃー! ちくわー!」
「人工生命体なの!?!」
「元ハムスターって本当ですか!?」
ちくわは目を丸くして、耳をピンと立てる(擬人化状態なのに動物的反応)。
凛は小声で、「大丈夫、落ち着いて」と肩を叩く。
でも、すでに熱気に押されてちくわの体が小刻みに震えていた。
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質問コーナーが始まる。
ファンたちは個性が強すぎて、質問の内容もぶっ飛んでいた。
ファンA「ちくわ、ハムスター時代に一番好きだったひまわりの種は?」
ちくわ「もちろん大好きでした! でも今はお菓子も好きです!」
拍手と笑いが巻き起こる。
ちくわは照れながらも嬉しそうに胸を張った。
ファンB「黒川さんのこと、どう思ってますか?」
ちくわ「かっこいい! でもたまに怖い!」
場内に笑いとどよめきが起きる。
凛「……そこ、怖いって言わなくても……」
ちくわ「本当ですもん!」
凛「……まあ、正直だから仕方ない」
ファンC「人工生命体説、信じてますか?」
ちくわ「え!? 信じてません! でも人間になっても元ハムスターです!」
質問の矢が止まらない。
そしてちくわは興奮のあまり、ついに“ハムスター走り”でステージ端を駆け抜ける。
スタッフも凛も絶句。
「……予定外すぎる……」
会場のファンは大喜びだ。
「これが“元ハムスター”の魅力か!」
「動きが予測不能すぎる!!」
⸻
ちくわの目の前で、ファンDが手作りの帽子を差し出す。
「被ってください!」
ちくわ「え!? ぼくにですか?」
帽子をかぶると、さらにハムスター感が増し、会場から悲鳴と笑いが同時に巻き起こった。
凛「……想定の200%だ」
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質問コーナー後半。
ファンE「握手したいです!」
ちくわ「はい! でも……手ってどうやるんだっけ?」
凛「手を出すだけでいい!」
ちくわはおずおずと手を出すと、ファンと握手。
喜ぶファン、固まるスタッフ、笑う凛――
この混沌の光景は、誰も忘れられない瞬間となった。
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イベント終了間際、凛が耳元でささやく。
「次はお見送りと握手会。壊さないように」
「壊す……!? 気をつけます……!」
ちくわは深呼吸して、もう一度胸を張る。
「よし……ぼく、がんばるぞ……!」
会場の熱気、ファンの個性、混乱のカオス――
全てがちくわの成長の肥やしになる瞬間だった。
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こうして、初のファンイベントは、ちくわにとって“個性強すぎファンたちの洗礼”の場となり、芸能界のカオスにさらに巻き込まれていくのだった。




