ファンイベント開催決定!ちくわ、段取りを3分で忘れる
事務所の会議室。
テーブルにはスケジュール表、進行台本、そして大量の付箋。
凛とプロデューサーの高峰が、真剣な顔で資料を広げていた。
高峰「――というわけで、ネット人気が爆発している今、ちくわくんの初ファンイベントを開催します」
凛「ついに……! ちくわ、これ大チャンスだよ!」
ちくわはきらきらした目で、
「ファンって、ぼくのこと好きな人たち!?」
「そうだよ」
「うわあぁぁ……会いに来てくれるの!? すごい!!」
しっぽがあったら振り切れてる勢いで喜んでいる。
(※しっぽはもうない)
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凛はホワイトボードに段取りを書き始めた。
●イベント流れ
1.開会あいさつ
2.ミニトーク
3.ファン質問コーナー
4.撮影タイム
5.お見送り握手
「ちくわ、これを順番どおりにやるだけ。わかった?」
「わかった!!」
「本当に?」
「もちろん! ぼく賢いからね!!」
高峰と凛は顔を見合わせ、不安の共有が一瞬で完了した。
⸻
そして3分後。
ちくわ「ねぇりんちゃん、イベントってなにするんだっけ?」
凛「早いッッッ!!!!」
高峰「3分だった……今回は記録的だよ……」
ちくわは慌ててホワイトボードを見返す。
「うーん……
1.開会あいさつ
2.ミニトーク
3.ファン質問コーナー
4.…………
……………」
「……5番、なんだっけ?」
凛「まだ4番も言ってない!!」
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イベント準備は地獄のように進んだ。
・スタッフ「ちくわくん、この衣装でいきます?」
ちくわ「これチャックどこ?」
→ そもそも上下逆に着ていた。
・司会者「自己紹介は“元ハムスターです!”でいいですね?」
ちくわ「はい! でも最近“人工生命体説”流れてるんですよね?」
司会者「やめて!? 振り返らないでその噂!!」
・リハーサル中
監督「立ち位置ここね」
ちくわ「ここ!」
監督「そう、そこ」
2秒後
監督「あれいない!?!?」
→ 気付いたら台本読めない場所に移動している。
凛は心の底からつぶやいた。
「……初イベントでスタッフ倒れるかもしれない」
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最後の打ち合わせ。
高峰「ちくわくん、緊張してる?」
ちくわ「ちょっと! でも楽しみ!」
「そうか……。じゃあ本番は、自分らしく行こう」
「うん! ぼく、ぼくらしくがんばる!!」
凛は笑って頷いた。
「ちくわ、自分らしくでいいよ。
……ただし、走るな。回るな。登るな。齧るな。」
「人間なのに制限多くない!?」
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イベント前日。
SNSには、すでにちくわの名前でハッシュタグができていた。
#ちくわに会いに行く
#人工生命体か確認したい
#元ハムスターの握手会とは
凛(……なんか心配しかない)
ちくわ(ドキドキ……!)
こうして、ちくわ初のファンイベントは、まだ始まってもいないのにカオスの匂いが濃厚だった。




