謎の業界ルールに困惑。「差し入れはチーズケーキでOK?」
ドラマ撮影も二日目。
ちくわは慣れたのか、廊下を歩くたびに
「おはようございます!」
と元気よく挨拶しては、なぜか3割のスタッフをビクッとさせていた。
凛(なんで驚かれるんだろ……?)
ちくわ(ハムスター時代よりは怖がられないからラッキー!)
ちくわのポジティブ思考は今日も絶好調だった。
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撮影の合間、ちくわは差し入れコーナーの前で立ち止まった。
机の上には様々なお菓子、ドリンク、そしてスタッフからの謎の手書きメモ。
「“差し入れに外れなし”……?」
「“若手はチーズケーキ持ってくると好かれがち”……?」
「“大御所の前を猛スピードで横切ってはならぬ”……?」
「“飲み物のストローは刺したら負け”……?」
ちくわ「なにこれ!? 怖い怖い怖い!!」
凛が横から覗き込む。
「ああ、それ“業界あるあるメモ帳”だよ。スタッフがネタで貼ってるの」
「ネタ……? 本気じゃないの?」
「本気のようで本気じゃないし、本気じゃないようで本気なとこもある」
ちくわ「難しすぎるぅ!!」
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そこへ黒川大御所が通りかかる。
黒川「何を見ているんだ」
ちくわ「あ、黒川さん! 差し入れルールって、チーズケーキがいいって本当ですか?」
黒川「……まあ、嫌われはせんだろう」
「じゃあ持っていきます!!」
「別に強制ではないが……」
「ありがとうございます!」
黒川は少し呆れながらも、どこか楽しそうに去っていった。
凛はちくわの腕を引っ張る。
「ちくわ、差し入れって”義務”じゃないからね?」
「でも喜んでくれるなら持っていきたい!」
「……そういうとこは偉いんだよなぁ……」
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午後、再び撮影。
監督「じゃあ次、ちくわくんは”入り口で転びながら入ってくる”演技お願いね」
「はい!!」
入り口の前で構えるちくわ。
……が、転び方がわからない。
「凛ちゃーん、転び方ってどうやるの?」
「そんな質問初めて聞いたわ」
黒川がやってきて、静かに言う。
「ちくわ、芝居とは“計算された事故”だ」
「かっこいい!!」
「いや、そんな褒められるほどのものでは……」
黒川が照れているのを、現場の誰もが見逃さなかった。
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いざ撮影。
監督「よーい……アクション!」
ちくわ「どりゃああああッ!!」
勢いよく飛び込んだ瞬間――
ガシャァァァン!
隅に置いてあったセットの壺を盛大に倒す。
スタジオ「…………」
監督「カットォォォ!!」
凛「なんでそんな全力で行ったの!?」
ちくわ「転ぶなら本気で、って思って!」
黒川「本気の種類が違うんだ……」
壺の破損は大道具さんによって「まぁちくわなら仕方ない」と処理された。
なぜか許される世界。それが芸能界。
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その日の帰り道。
ちくわ「凛ちゃん、ぼく今日いろいろ勉強した!」
「うん、何を?」
「差し入れはチーズケーキで喜ばれる……たぶん」
「たぶん、ね」
「転ぶときは壺に気をつける!」
「それ最重要」
そしてちくわは胸を張って宣言した。
「明日もがんばる!! ハムスターなりに!!」
凛は笑った。
「……いや、人間として頑張って」
今日も芸能界はちくわに振り回されていた。




