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うちのハムスターが引きこもってばっかりだと思ったら、急に擬人化してきたんですけど!?  作者: 櫻木サヱ
ちくわ、芸能界の闇をちょっとだけ覗く

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16/22

大御所俳優の洗礼。「ハムスターに芝居ができるの?」

ちくわの初ドラマ撮影は、開始30分で現場をザワつかせていた。

「漢字読めない発言事件」はスタッフラインで即共有され、

“ゆるキャラ枠の新人俳優”として既にイジられ始めている。


そんな空気をまったく気にせず、ちくわはスタジオの隅で台本を逆さに持ち、

「……あれ? こっち向きだっけ?」

と真顔で悩んでいた。


凛「逆さだから。逆さなんだよ」

ちくわ「あっ、そっか!」


成長の兆しは、まだ遠い。



休憩に入り、ちくわは黒川大御所俳優の隣にちょこんと座った。


黒川は台本を読み込みながら、ちらりとちくわを見る。

「……君、演技経験は?」

「えっと……ハムスター小屋の中で、回し車の上で“倒れたフリ”とかしてました!」

「……それを”演技”とは言わん」


黒川は深いため息をついた。

その圧だけで、空気が震える。


しかしちくわはまったく動じない。

むしろニコッとして言った。


「黒川さんは演技のプロですよね!?」

「まあ、長いことやっているからな」

「じゃあ僕にお芝居教えてください!!」


スタジオの空気が止まった。

ADもメイクさんも、全員「嘘だろ…」という目で見る。


黒川「……ハムスターに芝居ができるのか?」

ちくわ「できます!! できるようになります!!」

黒川「根拠は?」

「……気合いです!!」


黒川は台本を閉じ、正面からちくわを見た。

その鋭い視線に、周囲がビクッと震える。


だがちくわだけは――


「黒川さん、今の表情めっちゃかっこいい!」


まさかの素直リアクション。

黒川のほうが一瞬固まる。


黒川「……君は、よく分からん奴だな」

ちくわ「よく言われます! ハムスターのときも言われてました!」

「ハムスターのときも、か……?」

黒川の思考が止まる。



そんな空気のまま、次のシーンのリハが始まった。


シーン内容はこうだ。


黒川が怒鳴る

ちくわが驚いて後ずさる

椅子につまずいて転倒

黒川が呆れ顔でため息


シンプルな流れ。

……のはずなのに。


リハ開始。


黒川「この家から出て行けッ!!」

ちくわ「ひゃっ!?」

(ここで後ずさる)


後ずさる……はずだったが。


ちくわ、なぜか“ハムスター走り”で全力後退。


スタジオの端までススススーーッ!


「ちくわくん!? どこまで行くのッ!?」

「本能で!!」


スタッフの悲鳴が響いた。


黒川は眉間を押さえる。

「……ハムスターの本能が、芝居に出るのか」

「出ちゃいました!」

「出すな」



監督は苦笑しつつも、どこか楽しそうだ。

「まあいい……ちくわくんの動きは想定外だけど、面白い画にはなってるし」


凛がぼそっとつぶやく。

「……ちくわ、もしかして天才なんじゃ……?」

「えっ!? ぼく天才!?」

「天才(方向性が迷子)ね」


スタジオに笑いがこぼれた。


これが、ちくわが初めて“大御所俳優の洗礼”を受けた日だった。


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